1月24日 重症のカラスがやってきました

「自分の家の駐車場にカラスがいて よく見ると胸の辺りに裂傷があるので連れてきた」という方が 朝一番でやってきました。カラスはかなり衰弱しているらしくて 殆ど暴れることなく診察させてくれました。おそらくネコカイタチにでも襲われたのだと思いますが 胸から腹部にわたって10センチ以上の大きな裂傷がありました。少し出血していたので 取り敢えず止血する処置を行いました。当院では 野生動物の治療は基本的に無料で引き受けますが その後の面倒は連れてこられた方に責任を持ってみて頂くことにしています。

取り敢えず傷を縫合する手術は当院でさせてもらいますが その後餌を与えたり、傷の消毒をしていただいたりは 連れてこられる方にできるかどうかを尋ねました。以前に野鳥のひなを保護した経験があるので その後の面倒は見られると 言われました。

かなり衰弱していますし、他に来院されている患者さんもいらっしゃらなかったので 直ぐにマスクをかぶせて麻酔をかけて縫合手術を始めました。幸い傷は表面的なもので 内臓にはダメージがほとんどなさそうでしたので切り裂かれた皮膚を きれいに成形してから ナイロン糸で縫合しました。丁寧に十五針ほどかけて 縫合を終了しました。

麻酔を切ると 割と短時間で覚醒して 預かった時よりは楽そうに動き回りだしました。夜まで様子を見て 連れてこられた方に迎えに来ていただきました。ドッグフードの缶詰を与えたら 結構がっついて食べていましたから 食欲もあるようなので元気になってくれそうです。

飲み薬と消毒薬の扱い方を説明してから お返ししました。大きなおうちの方と見えて からすように一部屋新聞紙をたっぷりとしいて 元気になるまで面倒をみるそうです。カラスは非常に賢い動物なので 自分を守ってくれる人にはすぐになついて 結構甘えたりもします。

十日後に抜糸をするのでまた連れて来てもらうことを説明してからお帰りいただきました。カラスは真っ黒で不気味な鳥だと思っていらっしゃる方も少なくないのかもしれません。生ゴミをあさったり 車にはねられた猫の死骸を啄んでいたりするのを見かけられて良いイメージを持ってない方の方が多いのかもしれません。

しかしカラスの実物とまじかに接すると ますはその混じり気のない真っ黒な羽が見事に美しい鳥です。つぶらな瞳をしていて 顔のつくりもかなり可愛らしいと思います。その上自分に危害を加えない人間であると分ると 非常に慣れ親しんでくれて 甘えてくるので面倒をみたことのある人は 大抵カラスの事を大好きになると思います。

抜糸して普通に飛べるようになったら放してやるつもりだそうですが ある程度の日数面倒をみてしまうと 情が移ってしまって結構悲しいお別れになってしまうのかもしれません。私としては手術を担当しましたから十日後には無事にくっ付いてくれて なるべく早くとびたてるようになってほしいと願うばかりです。

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