10月22日 アカデタマリンが来院しました

最近 小型のサルをペットとして飼う方が増えているみたいです。以前はマーモセットの類を 何度か診察したことがあります。アカデタマリンという種類のお猿さんは その名前自体が初めて耳にする種類でしたが ネットで情報を慌てて仕入れると 最近人気が出てきているみたいです。オナガザル科に属しているので 体長よりも長い尻尾を持っているみたいでしたが その身体的特長以外は これまでみてきた小型のお猿さんと似たような身体条件の動物みたいです。
体重が三百グラムしかありませんでした。標準体重は五百~六百グラム位なのだそうですから 四歳という年齢にしては かなり小さめの体格だし 栄養状態も骨と皮ばかりでしたから 普段から健康状態が良い事はなさそうです。話を聞くと ここ数か月にわたって 泥状の下痢が続いていて 食欲はかなり旺盛だったのに 次第に削痩してきていたのだそうです。昨日から 食欲が無くなり 今夜から手足を震わせて 時々呼吸困難になるので 胸をさすってやると何とか普通の呼吸にもどる というじょうたいをくりかえしているのだそうです。
診察するときにはすでにぐったりとしていて 体温が低下していましたから かなり衰弱がひどくて 危険な状態でした。診察している間にも 呼吸が停止しかけましたから ドライヤーで温めながら 全身をさすって呼吸を呼び戻しました。こういう状態になるのは 初めての事で 原因として思い当たることもないのだそうです。このような瀕死の状態になってしまっていますので 取り敢えずは対症療法 体温低下には体に熱を送り込み、心拍数が正常の半分ぐらいに低下していましたから 取り敢えずは強心剤と 呼吸が何度も停止しかけていますから 呼吸促進剤を注射で投与しました。
かなり神経質な子みたいで 私が体に触れようとするたびに かなり強めの拒絶反応を示しましたので 本来なら酸素室に入れて 体を温めながら点滴で栄養や薬剤を投与しながら様子を見たいところですが諦めました。霊長類は 当然ですが相当に賢いくて記憶力も優れているので 一旦拒絶されてしまうと なかなか治療がスムーズにいかない場合がありますが この子はまさにそのような状態でした。飼い主さんに取り敢えずは 瀕死の状態であるので入院させる事が望ましいが これだけ拒絶反応を示しているので 帰宅させた方が本人にとっては望ましい事の様であることを説明しました。
飼い主さんも現状を的確に理解して 受け止められたみたいで 連れて帰ることに同意されました。
病院でできる事 点滴とともに対症療法に必要な薬をたっぷりと投与して 明日以降の内服薬を手渡しました。あとは飼い主さんが頑張って励まして元気づけて 本人がこの難局を乗り越えていってくれることを祈るばかりです。お猿さんは 賢くて 人懐こくて 面倒をみがいのあるペットかもしれませんが 体型が人間に近いのでどうしてもその思い入れが強くなりすぎて もし何かあった時の飼い主さんの落ち込み様も 他の動物の飼い主さんよりも深い様に思いますので 私が自分では面倒をみようとは思いません。
この子も明日の朝まで持ってくれるかどうか五分五分だと判断しましたので 正直な診断を飼い主さんに伝えました。何とか元気に持ち直してくれて 飼い主さんも元気を取り戻してくれることを強く願います。

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