2月24日 怪我をしたカラスが入院しました

夜の八時ごろ 病院を閉めかけたころに 電話がかかってきて 怪我をしたカラスを保護したので 面倒をみて欲しい との電話が入りました。すぐに連れてくるように応対して 待っていると 十分ほどで女の子が三人で駆けつけてこられました。段ボール箱に 負傷したカラスを入れて 連れてこられました。松井山手の駅で降りたところ 線路際で妙な気配がするので 様子を見ると カラスが飛べなくなって うごめいていたのだそうです。近所のコンビニで段ボール箱を分けてもらって その中に何とか捕まえて入れてから 受け入れ先を探して うちと連絡が取れたので その場からタクシーに乗って駆けつけてこられたのだそうです。
カラスの様子を診ると 右の翼の付け根に 大きく裂けたような傷があり そこから結構出血しているし 傷が結構深くて骨まで一部分見えているような状態で かなりの重症であることが分かりました。幸い他には 傷口も異常も無さそうでした。大きな血管が裂けているみたいで かなり出血があったらしいので 一刻も早く血管を縫合して 出血を止める必要がありますし 骨が空気にさらされると 大きなダメージが残りますので 筋肉層を縫い合わせて 更には皮膚の縫合までする手術を必要だと判断しました。
野生動物を連れてこられた場合 当院では ノラ猫の扱いと同様に発生した治療費のうち 半額は連れてこられた方に負担していただき 残りの半額はうちが負担させていただくことにしておりますので そのルールを説明したうえで 結構厄介な手術になりますし 退院までも日数がかかりそうなので たとえ半額とはいえ それなりの治療費を覚悟していただかねばならないことを伝えました。連れてこられた三人は たまたま駅に居合わせただけで 知り合いではないのだそうですが 三人で均等に負担する という事に相談の上決まったみたいで 手術を実施することになりました。
少しずつですが出血が続いていましたので 一旦病院を閉めてから 早速手術を始める事にしました。以前 交通事故に巻き込まれたカラスの手術を二度ほど続けて行いましたので この子も車に衝突したのかと思っておりましたが 傷口が体の内側にありますし 傷口がギザギザに引き裂かれたようになっておりましたので どうやら猫に襲われたのではないか と言う風に思いながら 血管の出血部分を見つけて 破れた部分を縫合しました。血管が細いので 縫合により血流を妨げないように かなり苦労しましたが 何とか出血が止まってくれました。
次に骨が露出している部分に筋肉層が上手い事覆いかぶさるように縫合しました。丁寧に縫い合わせたつもりですが この子がまたもとのように羽ばたいて飛び立てるのかどうかは 回復を見てみないと分かりません。最後に引き裂かれた皮膚を奇麗に整形してから 縫合しました。皮膚をそこそこ除去しましたので 幾らか突っ張ってはいますが 十日後にはうまくくっ付いてくれていることと思います。何とか やるべき作業は 上手くこなせたと思いますので麻酔を切り 回復を待ちました。十五分ほどすると 殆ど意識を取り戻して 立ち上がってくれました。傷口をつつかないように エリカラーを装着して 入院室に入れて様子を見ておりますが 割と落ち着いているようなので 安心しました。
何しろ野生の動物ですから 人間をかたくなに拒否する子もたまにいますが カラスは非常に賢いので 自分に危害を加えてこないと判断すると 面倒が見やすい場合が多いです。取り敢えず抜糸できるまでの十日間
預かって様子を見ることになります。カラスは真っ黒なので 結構不気味に思われている方も多いのかもしれませんが とにかく賢いので 自分に危害を加えない 逆に餌を貰えて 面倒をみてくれると理解すると 非常に懐いてくれる場合があります。今まで六羽のカラスの面倒をみましたが 一羽は治療の甲斐なく亡くなりました。残りの五羽は 元気になって退院してくれましたが 皆とっても私に懐いてくれて お別れするのが寂しくなるほどでした。この子も 元気になって自然界に上手く復帰できてくれれば とても嬉しいけれど あまり懐かれてしまうと お別れが寂しくなるのが心配です。たまたま縁があって うちの病院にやってきてくれた子なので 順調に回復してくれることを 心から期待しております。

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