4月22日 当院が患者さんから 訴えられて大ピンチに陥りました

昨年の大みそか 来院された患者さんが 翌日死亡したので 誤診をして不適切な治療を実施されたから 自分の飼い猫は殺されたので 慰謝料そのほか諸々の支払いを求める という動きを その飼い主さんが起こされました。かなり以前の話なので 何時頃かよく覚えていませんが 民間総合調停センターなる施設から 書き留め郵便で その旨を知らせる文書が送られてきました。大晦日から 正月三が日は一日十件近くの急患を診察して治療しましたので よくは覚えていないのですが その中に一人なのだと思います。
年が明けて 十日ごろに その飼い主さんから 電話がかかってきました。私は丁度往診に出かけるため 車の運転をしている最中でしたが 病院にかかってきた電話が携帯に転送されてきたので 一旦車を道路わきに停めてから 電話に出ました。大晦日に診療してもらった某だが 翌日に見てもらった猫が死亡したので その原因を説明してもらいたい との要件でした。私としては 診察した猫が 特に緊急で来院した場合 結果的に無くなってしまう事は 残念ながら ちょくちょくありますので 取り敢えずはお悔やみの言葉を述べました。現在往診に出かけていて その子のカルテが手元にないので 死亡原因を説明できない と答えました。
往診から帰ってから その子のカルテを探し出して じっくりと見直しましたが 年齢が十七歳で 診察時体温の低下と 心拍数の減少が簡単に読み取れましたので 年齢も考え合わせると かなり差し迫った状況であることを説明したはずです。その後血液検査をしましたが 肝機能 腎機能共にかなり良くない値が出ていましたが 年齢が十七歳 人間でいうと90歳近いご老人になりますから 当然と言えば当然かもしれず この子は 心拍数の低下 そしてその時に測った活圧も正常値の半分近くに低下していましたから 心臓の状態が相当に悪いし 肝臓 腎臓も年齢相応と言えるのかもしれないけれど その機能低下が顕著であることを説明しました。いわゆる老衰で 体の最も重要な臓器である心臓 肝臓 腎臓が相当に悪い状態なので 正直今後元気に回復してくれる可能性は 凄く低いと判断しました。
このままでは 本日一日もつか否か状態だと分かりましたが そのことをそのまま飼い主さんに伝えてしまうと 飼い主さんが完全に諦めてしまうかもしれません。ペットと言うのは 本能的に飼い主の感情をかなり鋭く読み取ることができるように 私は思っています。ですから ペットのためを思って 正直絶望的な状態であるけれど 当院としてできる限りの治療を実施しますから 飼い主さんが懸命に励ましてあげたら 元気に回復する可能性が 僅かながらはありますので 頑張って面倒を見てあげてください と希望を持たせてしまうような表現をしてしまったのが そもそもの私の失敗だったのかもしれません。
私としては その表現でも 絶望的な状況であることは それまでの説明で伝わっているものと 思っていましたが 飼い主の頭には 元気に回復する と言う言葉しか残っていなかったのかもしれず 臨床獣医師を三十年ほど頑張っているつもりですが 病状の説明は改めて難しいなと 思いました。取り敢えず 届いた文書に こちら側の言い分 主張を書いて いついつまでに提出するように と指示がありました。馬鹿らしいので 無視してしまうと 飼い主の無茶な要求が百パーセント認められてしまいますので 本来一枚半ぐらいの書き込みスペースがありましたが こちらの立場や診療時の状況 実際に行った治療について 全部で五枚以上にも及ぶ文書で 懇切丁寧に そして誰にでもとても分かり易く こちらの対応の正当性を 説明しました。
そして後日 指定された日時に 大阪市内の調停センターなる建物に出かけて 調停委員なるおっちゃん おばちゃん三人に 更にその文書の補足説明をしました。こちらとしては 百点満点の対応をしたとは言えないけれども 少なくとも九十点以上がもらえる対応をしたはずだと 自信をもって断言しました。所が 相手の飼い主側が 納得が出来ない と食い下がるような対応をしてきたので 一月後位にもう一度 ここに来て欲しい と言われてしまいました。私は 怒り狂って 訴えられたことでこちらが受けた精神的苦痛と 病院の名誉を甚だ傷つけられたので 逆にこちらから 相手側を訴えたい気持ちであることを伝えましたが その時は 一旦この件が決着してから その後の事として対応を考えて欲しいと 言われましたので 私も諦めて引き下がりました。
その後 その調停センターから 電話があって 相手側が 訴えを取り下げたので 指定された日時に お越しになられなくても結構です と言われました。まあ 当然と言えば当然の結果が出たわけですが そこで私が逆に飼い主を訴えてやるのには 具体的にどのように行動すればいいのか尋ねたら 知り合いの弁護士がいれば 相談してみればいいし 無料法律相談に話を持ち込んでもいいでしょう。面倒なら 相手側への主張 要求がまとまった時点 当センターに相談していただいても結構です との事でした。
奥さまは 何も問題を大きくしなくても このまま見過ごせばいいのではないかと 仰いますが 三十年間 自分なりにまじめに一生懸命頑張ってきた仕事を 否定されたのですから 我慢ならない と申し上げました。そうすると 奥様が 私の立命館時代からいまだに付き合いの続いている友人に 法学部出身で非常に優秀な人物がいて それこそ開業当初は 法律的に困ったことがあると しょっちゅう電話をかけて 相談に乗ってもらっていたことを 大分昔奥さまに話しましたので 今回の事もその友人に相談してみれば と仰います。
現在では 京都府の日本海側 天橋立の近所の実家に戻って 京都府庁を定年まで勤めあげてから お父さんと共に農業に勤しんでいるらしいのですが 凄く久しぶりに メールで ことの顛末と 現在の自分の気持ちなどを伝えました。数日後 返事がありました。穏やかな そして凄く常識を弁えた人物ですから 恐らく自重するようにとの アドバイスを頂戴すると予想しておりましたが 私がアクティブに動いても 手間暇 そしてそこそこの費用がかかるだろうし 現実的には一銭も取れないだろうとは分かっている という事情説明をしておきましたので やりたいのなら 思い切って行動してみても 悪くはないでしょう とのアドバイスでした。病院もちょうど忙しくなる時期ですが 私としては アメリカほどの訴訟社会ではないけれど 日本もその影響を受けて 不満があればすぐに訴える と言う風潮が 非常に不愉快なので 相手側に 訴えられたら どれだけ大きな精神的ストレスが生じるのか を理解させたいだけですが 思い切って動いてみようと思います。
そんなことで タイトルでは大事件が起こったような表現になりましたので ご心配をかけたのかもしれませんが どうぞご安心ください。私が仕事を続ける日々はどんどん期限に近づいておりますので 悔いのないように毎日頑張って働いていこうと 改めて考えております。

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