5月19日 ペットの飼い主さんについて思う事

私が獣医学科を卒業して 研修に出かけて お世話になった病院で 院長先生から最初に言われた言葉は 「ペットの健康は 飼い主の義務ではない」と言う事を念頭に置いて仕事をしてください と言う事でした。私たち獣医師は どうしてもペットの立場に立って物事を考えがちです。犬や猫の場合は特に 出来る予防行為は してあげるのが当たり前だと 考えてしまいそうになります。けれども ペットはあくまでも飼い主さんの私有財産でありますから どのような飼い方をしようと それがあからさまな動物の虐待行為などでなければ 文句など言える立場ではない と言う事です。

私ももうすぐ 62歳になりますから 大分人間的に 勿論体型的にも丸くなっているように思いますが それでもあまりにペットに対する愛情に欠ける飼い主さんを見かけると ブチ切れて 凄く冷たい対応をしてしまう事が あります。極たまにとはいえ そんな対応をしてしまうと ネットで対応の悪さや悪口が 簡単に広まってしまう社会ですから 病院の評判が ますます悪くなってしまう事は 分かり切っているつもりですが 最低限度の愛情が感じられない対応をする飼い主に対しては こちらの不愉快に感じている気持を あからさまにしてしまいます。

ここ数年で一番不愉快に感じた飼い主は ペットを生き物として扱わない輩です。ハムスターを幼稚園に通っている子供に おもちゃ代わりに与えていますが 子供が親の影響で ハムスターを生き物としていつくしむ気持ちを全く持ち合わせていないのです。恐らく上半身を下手糞なつかまえ方をして咬まれてしまった経験があるのでしょうが シッポを摘まんでしか 捕まえられないのです。ハムスターにしてみれば ただでさえ急所であるシッポばかりを強く掴まれるので その子供を嫌って余計に敵意を持って対応しているようでした。

ハムスターで噛み癖のある子の場合は 私は 素早く首筋を捕まえて 手のひら全体で体を保定します。その子供にも そのように保定する様に何度も教えましたがきく耳を持たず シッポばかりを掴もうとするので 私が強めにその子を注意すると その親が 一切手を出そうともせずに 余計な口だけ出してきました。「うちの子に対して偉そうなことを言うな。ハムスターは子供におもちゃ代わりに与えたものだから どんな扱い方をしようと 子供の勝手だ」と。

私は その瞬間に諦めて ハムスターはひどい扱いを受けて 小さからぬ外傷がありましたから 直ぐに治療をする必要がありましたが この親子ではまともに自宅で治療するはずがありませんから 「この子の治療は私の手に余りますからお引き取り下さい。」と 丁寧な口調で話せました。若い頃なら「馬鹿野郎」と怒鳴りつけていたのは間違いありませんから 私も多少は成長したのかもしれません。

以前に似たような飼い主のペットを 我慢して治療したことがありますが 治療費がそのペットの購入費を上回ったのだそうです。私は ペットの価格相場がどの様なものなのか よく知りませんし ペットの価格を考慮して 治療費を考えたことなど一度もございません。その飼い主にすれば 購入費用よりも高くつくのなら 新しくその種類のペットを購入すればそれですむと 考えていたらしくて 購入費以上の治療費の支払いを拒否されてしまいました。私がまだ40歳になったばかりの頃でしたので その飼い主を 怒鳴りつけて病院から追い払いました。今考えたら そのペットの購入費用分だけでも ニッコリ笑顔で受け取っておいた方が よかったのにと思わないでもありません。

こんな飼い主は 論外かもしれませんが 動物を飼い始めるという事は その動物の命を預かり キチンとした環境で面倒をみてあげる覚悟位は持ってほしいです。その動物によって 望ましい環境や食習慣など 異なりますから 飼い始める前に最低限度の勉強をして頂きたいとおもいます。今はネットで何でも簡単に 初歩的な知識は学べます。但しネットに乗っている情報には かなりの確率で大間違いが 実しやかに謳われていますから 注意が必要であり 鵜呑みにするのは おすすめしませんが。

ですから 飼い主さんが間違っている情報を 鵜呑みにしている場合 訂正しようとするのですが こんなちっぽけな動物病院の獣医師の言葉では 残念ながら 信用してもらえなくて ネットに流れている ど素人の無責任で明らかに謝った情報を信用されてしまって せっかく私が懸命にアドバイスしても 聴いてもらえないこともしばしばあります。私は子供の頃からの夢をかなえて 二つの大学を卒業して 十年間も大学に通って この職業についたのですが 一般の偏りも早めに仕事を終りにしたいと考えている原因は 恐らくここ等辺りにあるように思います。

仕事をするのは 社会人としては 当たり前の事です。何とか生活をさせてもらえている日本と言う国への恩返しの意味もありますし 根本的に生活していくためにかかるお金を稼ぎ出す手段でもあります。でも私は 今後二十年ぐらい生きるとして その期間ぐらいの生活をしていく蓄えは出来ております。只人よりもいくらか優雅な老後を過ごしたいので あと数年その蓄えを増やそうと考えて もう少しだけ仕事を続けようと考えている所です。

仕事をしていれば 辛いことや不愉快な事を経験するのは 当たり前の事でしょうから 一刻も早く仕事をやめてしまいたい と言う気持ちを何とかなだめてすかして もう少し頑張ろうとおもいます。勿論仕事をしていて それなりの充実感や満足感を得られることも少なからずありますから。

 

 

 

 

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