7月30日 1913年の本日 新美南吉さんが生まれました

新見さんと言えば「ごんぎつね」を思い出すくらいの代表作です。そのあらすじは いたずら好きなきつねのごんは、ある日兵十が病気の母親のために用意したウナギをわざと逃がしてしまいます。ところが、その後母を失って落ち込む兵十を見てごんは反省、償いのために魚や栗を兵十の家に届けはじめます。しかし、そうとは知らない兵十はごんがまたいたずらをしにきたのだと勘違いし、ごんを火縄銃で撃ってしまう。そこではじめてごんが食べ物を運んでくれていたことに気付くというお話です。

新見さんの作品は 子供に向けたものが多いのでしょうが 大人が読んでも心打たれる作品が多いと思います。この「ごんぎつね」読んでの小学生が書いた感想文が 騒ぎになっているというニュースをみました。小学生の女の子の感想なのだそうですが「やったことの報いは必ず受けるもの」「こそこそした罪滅ぼしは身勝手で自己満足でしかない、(兵十はごんの反省を知らないのだから)撃たれて当たり前 」と言うものです。

人間の社会でも 誤解を受けた人が 弁明の機会さえ与えられずに 悪者のままその話が結末してしまう事はよくある話だと思います。物語を読んでの感想は各人の自由な発想によることが許されますから 私はこの女の子の感想についてどうのこうの言う気持ちはありません。ただ私はこんな考え方をする女の子は大嫌いです。

きつねと言うのは 動物の中でもかなり狡猾な種類だと思いますから 現実的にはそんなに簡単にいたずらをやめて いいことをするような心変わりをするとは思いませんが 償おうとした行為が誤解を受けてしまったのは やはり素直に可哀そうだと感じる人間が 私は好きです。私の大好きなナーチャンは 凄く優しくて 泣虫な女の子ですから 初めてこの作品を読んだら きっと泣いてくれると信じています。だからナーチャンが大好きです。

新見さんの作品で もう一つ心に残っている作品があります。短編ですが「花をうめる」と言う小説です。この作品との出会いは 私が岐阜大学に通っていたころにアルバイトで結構大規模な中学生相手の塾の講師をやっていました。担当した科目は国語です。中学生相手ですから 英語でも数学でも勿論担当できる自信はありましたが 恐らく国語の担当を希望する人が一番少ないであろうと予測して 国語を希望しました。

大規模な塾でしたから 各科目とも先生の経験者などの専門家を何人か抱えていました。けれど私は先生崩れの講師よりも質の高い授業をできていた自信があります。私はこのブログをお読みの方にはよくお分かりだと思いますが、短気です。気に食わない生徒がいたら 大声で怒鳴りつけます。ただ怖いだけでは 生徒が話をきいてくれないので 大阪から来た 怒らせるとすごく怖いけれど 普段はとてもおもろいオッサンを演じました。

大きな塾なので 生徒は一クラスに二十人以上もいましたが その中で一番お気に入りの生徒 勿論かわいい女の子を 特に可愛がりました。その女の子に特別に教えるふりをして全員に問題のヒントを出しました。それからやんちゃな男子を二三人選んで 怒られ役にしました。その怒られ役の子を怒鳴りつけるようにして 引っ掛かり易い間違いをしないように 誘導しました。

その塾の経営者から このまま塾の講師として働くことを勧められました。一瞬 確かにこの職業は自分に向いているのかもしれないと考えたことがありましたが 獣医さんになりたいというもっと大きな夢を実現する事を選びました。岐阜県では新聞社主催の模擬試験の成績が 志望校を決めるための判定材料にしていましたから 年に数回行われるその模擬試験の前に 予想問題を作って売りだしていました。その時期になると本屋さんの店頭にその模擬試験の予想問題集がズラッと並んでいました。その予想問題集の国語の問題は半分以上私が作っていましたから その塾の国語の講師のトップは私だと思っていました。

話が横道にそれてしまいましたが 確か夏期講習の国語の教材に 「花をうめる」が取り上げられていました。短編小説とはいえその一部分が問題文として 取り上げられていました。夏期講習ですからその講習だけを受けに来ている初めて見る生徒も何百人もいました。私は講師をやりながら スケベな男ですから かわいい子にはどうしても注目してしまいます。

その目についていた非常に可愛い女の子が ある日の休憩時間に私たち講師の控室にやってきました。その女の子が私の机にやってきて 国語の教材に取り上げられた「花をうめる」の内容に興味が湧いたので 是非全文を読んでみたいのだけれどもなんとかならないか という要望でした。夏期講習は塾の講師にとって稼ぎ時ですから 私は授業を受け持てるだけ受け持っていましたから 時間にあまり余裕がありませんでしたが 凄く可愛い女の子からの要望でしたので あいている時間に図書館を駆けずり回って 何とか「花をうめる」の全文のコピーを手に入れました。私もその時に「花をうめる」と言う作品を初めて読みましたが ロマンティックな女の子が喜びそうなメルヘンの世界が描かれていて 気持ちがホッコリとする内容でした。

その子の名前と中学名を確認していましたから 提出された自己申告による成績などの資料に目を通しましたが なんとその中学では恐らく首席であろう凄く優秀な生徒でした。恐らくトップ校である岐阜高校に楽々入学して 更に一流の大学に進学していったのだろうと思います。質問に来た時の立ち居振る舞いや言葉遣いで 只者ではない雰囲気は感じていましたが まさかそんな優秀であり かつ非常に可愛らしい女の子とは知りませんでしたから その小説のコピーを渡す時には 若干こちらが緊張してしまいました。その子は顔が可愛らしいだけではなくて 胸のふくらみがかなりりっぱで うっかりするとそこに視線がいってしまいそうだったからです。

新見南吉さんの作品には 他にも魅力的な作品が幾つもありましたから 久しぶりにそのような作品を読み返してみようと思いました。こんな時にインターネットは非常に便利で有難いのですが 本屋さんにとっては困った世の中になってしまったのかもしれません。

 

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