8月22日 久しぶりに猫の避妊の手術をしました

開業してから三十年ぐらいになりますが 恐らく一番沢山の回数実施した手術だと思います。多分二千回以上の経験があるように思います。やることは 非常にシンプルで 導入麻酔を投与して ある程度猫の意識が低下したら 気管チューブを挿管します。麻酔状態が安定したら 仰向けに体を固定して 腹部の毛をバリカンで刈り取って 術野を消毒して 滅菌した手袋を両手にはめて 滅菌した覆布をかけて から手術が始まります。メスでおへその下あたりから正中線に沿って 私が手を突っ込めるぐらいの大きさに 皮膚 皮下組織 筋肉層 腹膜を切開して 腹腔内に手を差し入れて 子宮と卵巣を引っ張り出します。
卵巣の体とつながっている部分に絹糸をかけて しっかりと止血した後で その部分を切断します。両側の卵巣で 同様の手技を行い 最後に子宮の根元の部分にやはり絹糸をかけてしっかりと止血をします。何しろ動脈を切断しますから 切断面から 一滴も出血していないことを しっかりと確認したら 手術のやるべきことは終了します。あとは筋肉層 皮下組織 皮膚を それぞれ役割の異なる糸で縫合して手術が完了となります。順調であっても メスを入れてから 最後の縫合を終えるまで 一時間半ぐらいかかります。器用な先生なら 一時間前後ぐらいで終えられるのかもしれませんが 私は自分が不器用であることを自覚しておりますので 出来るだけ急がないで 気持ちとしては少しのんびりと 且丁寧に手術を無事に終えることを目指しております。
皮膚の縫合部分の出来栄えに関しては 正直開業当初に行った手術だと 何年かしても縫い跡が凸凹していたりしましたが やはり経験とともに縫合の技術が上達したからでしょうけれど 数年後には 一年も経過するとどこを切開縫合したのか分からない位に 奇麗な手術跡になっていたように思います。本日の猫ちゃんも 一年後には 手術の後が分からないようになってくれていると嬉しいです。猫の避妊の手術の後は エリカラーを装着して 抜糸の日まで 傷口を消毒して化膿止めの抗生剤を塗布してもらうように 飼い主さんに指示を出しております。指示を守っていただければ 十日後には 順調に皮膚がくっ付いてくれて 問題なく抜糸が出来ますが 飼い主さんによっては エリカラーを装着しているとご飯が食べにくそうだ 等と理由をつけて エリカラーを外してしまわれる方が 極稀にいらっしゃいます。
エリカラーは順調に皮膚がくっ付いて 抜糸できるために必要な処置ですから 早い時期に勝手に外されてしまうと 動物が傷口を舐めたり 噛んだり 場合によっては糸を食いちぎったりして厄介なことになってしまいます。せめて外す前に 病院に電話をかけて相談していただければ 十日間辛抱してもらえれば キチンと皮膚がくっ付いて 外すことができますから と説明いたしますが 自分の勝手な判断でエリカラーっを外してしまわれると 傷口が化膿したり 最悪の場合傷口が開いてしまって 縫い直しの手術が必要になる場合もあります。これまでに凄く沢山の手術をいたしましたので 正直な所 縫い直したケースが何度かありました。お返しするときに エリカラーをしていると ご飯が食べにくかったり 排泄が上手くできなかったりする場合がありますが 十日間だけの事ですから 上手く補助してあげて 乗り切ってくださいとお願いするのですが こちらの指示通りにしていただけない場合が稀にあるのは 残念なことです。結局は長引いて 辛い思いをするのは動物自身になってしまいますから こちらも無駄な指示を出しているわけではありませんから 素直に従っていただきたいです。
本日手術した猫は 麻酔を切ってから十分後には 元気に歩き回っていましたから 順調に回復してくれることと思います。あとはこちらの指示通りに 内服薬と外用薬を使用していただければ 十日後には 無事に手術完了となると思われます。明日お返しするときに その辺りを丁寧に説明するように心掛けましょう。 

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