8月23日 治療効果のほとんど上がらない 患者さんへの往診が本日で終了しました

近所の病院にかかっておられたのですが そこがお盆休みになってしまって お盆の期間中に診察をしている病院を探して うちに連絡をしてこられた患者さんでした。八月になってからすぐに 九に食欲元気がなくなってしまった15歳のシーズーでした。近所の病院で 診察を受けて 必要と思われる検査をしてもらったのですが 原因が判明しないままに 点滴と食欲 元気が出る薬を投与されていたのだそうですが 殆ど状態が変わらないままに お盆の期間になってしまい 対応してくれる病院を探しておられたのだそうです。
初めての時には タクシーで来院されましたので 取り敢えずは診察をしましたが かなり削痩していること以外は 異常を発見できませんでした。長いこと食べていないので 当然体重の減少や それに応じた削痩があるのは致し方のないことですが この暑い時期に体温が平熱よりも低下してしまっていましたので かなり心配な状況だと判断されました。血液検査の結果を持参してこられましたので 拝見しましたが 特に異常を示す項目はありませんでした。十日ほど前の検査でしたので 現在の状態を把握するために もう一度血液の検査を実施してみましたが 食べていないことから当然の飢餓を示す項目が低くなっていることぐらいで これまた特に異常を示す項目が見当たりませんでした。
心臓の状態は聴診により 問題がなさそうですし それ以外に急に極端に 食欲元気を全く消失する原因が見つかりませんでした。診察した所から得られる情報や 検査の結果から 急な食欲元気の消失する原因を推測することが 難しいことを 正直に飼い主さんに 出来るだけわかりしやすい言葉で 丁寧に説明しました所 これまでかかっていた先生からは 殆どまともな説明がなかったので 正直に現状を教えていただけただけで とてもありがたいし 出来たら今後の治療もお願いしたい とおっしゃっていただけました。
年齢を考えると たまたま急激に老衰の症状が現れたとしか 考えにくいし だとしたら予後の見通しが明るくない所まで 包み隠さずにお話ししましたが 飼い主さんとしても 年齢を考慮したら 致し方のないことだと覚悟はしている との事でした。勿論 私としては ほんの少し前まで 普通に元気に暮らせていたのですから 何とかその状態に戻すことを目指して 治療を始めさせていただきました。結果的には 以前かかっていた病院と似たり寄ったりの治療になってしまいますが 取り敢えずは皮下点滴で 一日分として十分な栄養と水分を体に投与し そこに食欲と元気が出る可能性の強い薬剤を加えて投与することになりました。
その方のお住まいは そこそこ遠方にありますし 毎日タクシーで来院してもらうのは 大変なので 昼休みに私が治療の準備をして お宅まで伺って 点滴などの治療を施すことにしました。毎日 同じ時間に出かけて治療を継続しましたが 残念ながら 治療の効果がほとんど上がりませんでした。こういう場合 治療の切り上げ時が 難しいので 再度現状について 飼い主さんと相談しました。人間の場合も似たようなケースがありますが 取り敢えずは 点滴と薬剤を投与していれば 何とか心臓が頑張って生き続けてはいられるような状態です。とはいえ 数日間 出来うる限りの治療をさせていただきましたが 殆ど回復の兆しは認められません。
もし本人が かなり苦痛を訴えているのであれば やみくもに治療を継続して 苦痛を長引かせることは 賢明なやり方ではないように思います。
飼い主さんが 数日前に本日までは何とか 治療を続けたいと仰いました。この子を一番可愛がっていたお孫さんが 駆けつけてくるので 何とか本日までは生かしておいてあげたいので 治療を継続したいというお話でした。それなりに納得のいく事情でしたので 本日最後の点滴と薬剤を投与して参りました。本当に悔しいのですが やっぱり今日診察した時も これまでと状態が変わっていませんでした。二三日前から 明らかに心拍数が低下してきていましたので その状態に対応する薬剤も追加して点滴しておりましたので 点滴と共に薬剤の効果が切れたら 恐らくそれ程苦しまずに 心臓が停止して 永眠することになると思われます。
このワンちゃんの 元気な状態を 私は知りませんが 見た目には それ程老け込んでもいないし 性格も辛抱強くて とても賢い子
のようでしたから 若くて元気な時には 凄くチャーミングなワンちゃんだったのだと思います。お盆休みが ご縁で巡り会えた患者さんでしたが 飼い主さんも治療に協力的でありましたし 自分としても何とか元気になってもらおうと これまでの知識と経験をフル稼働して 最善と思われる治療をさせていただきましたが 殆どなんの改善も見られないまま 本日治療を終えました。臨床獣医師としては 一番悔しくて 情けない気持ちになりますが 年齢からくる老衰であるのだとしたら 致し方のない経過なのかもしれないと考えます。この子がいつまで頑張ってくれるのかは 分かりませんが 苦しまない最期を迎えてくれることだけを 祈っております。

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