9月30日 一晩で三人も 異物を飲みこんでしまい 嘔吐させる処置をしました

一人目は 昨夜病院を閉めて間もなくの時間に 飼い犬が アーモンドチョコレートを十粒ほど食べてしまった と言う事で電話がかかってきました。食べてしまったのは 二三時間前だろうとのことでしたので 直ぐに来院してもらって 食べてしまったチョコレートを少しでも吐き出させるための処置をしました。十分位で 飼い主さんがあわてて 駆け込んでこられましたので 催吐剤を注射ポンプで 適量口の中へ流し込みました。
食べてしまってから そこそこ時間が経っていますし チョコを食べた事に気づかずに晩御飯を与えてしまったのだそうですから 食べたものを全部吐き出させることは難しくても その何割かだけでも回収できれば 被害が小さくなることを期待しての処置でした。催吐剤はすぐに効いて 一分後には 嘔吐を始めました。最初は晩御飯に食べたドライフードばかりが出てきましたが 後半は 明らかにチョコレート色をした液体状のものを吐き出してくれました。アーモンドの粒も五つほどそのまま出てきました。
嘔吐した茶色い液状の物体の量や アーモンドが五つ確認できましたから 恐らく半分ぐらいのチョコレートは 回収できたのかもしれません。半分ぐらいしか回収できませんでしたので 残りの半分は 既に腸の方へ流れてしまって 吸収されるのでしょうから チョコレートのテオブロミンと言う物質によって引き起こされる嘔吐や下痢をある程度は覚悟しなければなりません。
そこで 被害を出来るだけ少なくするための薬 制吐剤や下痢止めを含めた薬を 点滴とともに投与しました。少なくともある程度の被害を受けるのは 想定内の事ですから 念のため飲み薬を三日分ほど処方しておきました。安静にして きちんと薬を飲ませてもらえれば それ程大事にはならずに済みそうなのでホッとしました。飼い主さんにしてみれば アーモンドチョコレート十粒食べたことを それほど大変な事だとは気付いておられませんでしたので その子の体重が五キロ弱でしたから 人間に換算すると その十倍としても 百粒のチョコレートを食べることが いかに大量に食べてしまったことになるのか と説明しましたら やっとご理解いただけました。
二人目は 十二時を過ぎた頃に 飼い犬が自分の靴下を飲み込んでしまった と電話がありました。自分が風呂に入るために脱いだ靴下の片方をその場で飲み込んでしまったのだそうです。女性の足先だけの靴下ですから 布の量的には大したことが有りませんが 飲みこんだのが体重二キロにも満たないチワワ と言う事だったので 出来たら嘔吐させてしまった方が安心だという事で 来院して頂きました。
またもや十分位で 飼い主さんがあわてて駆けつけられましたので 診察もそこそこに催吐剤を飲ませました。かなり嫌がりましたけれど 飲んでもらわなければどうしょうもないので 何とか引っ掴まえて 飲ませました。もともと華奢な体格のチワワ それも体重が凄く小さいので 上手く保定しないと暴れて脱臼や骨折さえしかねない状況でしたが 飼い主さんが上手に手伝ってくださいましたので 何とかうまくいきました。協力的な飼い主さんもいらっしゃいますが 一切こちらを手伝う気持ちのない飼い主の場合は 上手く処置できない事もありますが その気のない飼い主に協力を求めても上手くいきませんから そんな場合は簡単に諦めて 次善の策の治療を考えます。
今回も 催吐剤を飲ませたら 一分もしないうちに 晩御飯のフードとともに 小さくてかわいらしい靴下が出てきました。犬にしてみれば 大好きな飼い主さんの履いていた靴下ですから 興味が大きすぎて思わず飲み込んでしまったのでしょう。今後は脱衣所には犬が入れないように気をつけてもらうようお願いしました。私は普段 靴下をはきませんが もし私が脱いだ靴下なら たとえどんなになついている愛犬でも その強烈な臭さに 飲みこんだりはしないでしょう。男の靴下は鼻が曲がりそうなほどに臭いのに 女性の靴下は殆ど臭いがしないのは 何故なのでしょうか。男は面倒なので足の裏まで丁寧に洗っていないだけの事でしょうか。
三人目は 早朝の五時半ごろに電話がかかってきて 朝ごはんを与えるのに アイスクリームの木でできたスプーンを使っているのだけれども そのスプーンを飲み込んでしまった と言う話でした。アイス用の丸くて小さなスプーンですから これまたそんなに心配ないかとも思いましたが 十六歳のヨボヨボの柴犬のお爺ちゃんなので心配だという事でしたので 早速来院して頂きました。但しこの方は かなり遠方の方でしたので 道路はかなり空いている時間帯のはずでしたが 来院されるまでに一時間以上もかかってしまいました。
来院されて どうしてアイス用のスプーンを飲み込んだのか質問すると そのスプーンで食餌を与えていたのだそうです。十六歳の高齢犬だそうで 器から自分で食べられないので 手伝ってあげていたのだそうですが 今日はたまたま普段食餌を与えていない人が与えたために 最初の一口目で スプーンを餌とともに飲み込まれてしまったのだそうです。要するに胃の中が空っぽの状態で 木製の小さなスプーンを飲み込んで かなり時間が経過しているわけですから 催吐剤を使っても既に調へ流れていってしまっていれば 吐き出させることは出来ない事を説明したうえで 催吐剤を投与してみました。
一分後ぐらいに かなり強く嘔吐しそうなアクションはありましたが 結局涎一滴出てきませんでした。そして二三分後には 全く元通りの状態に戻ってしまいました。しょうがないので 次善の策として 腸まで流れてしまったスプーンが出来るだけ便とともにスムーズに流れて 便と一緒に排泄されることを期待する治療を考えました。催吐剤自体が胃の中に留まっていますのでその作用を鎮める薬と 超の蠕動運動を促進する薬を 皮下点滴とともに流し込みました。
同様の薬を内服薬として三日分処方しましたので 本日の夜から様子を見ながら投与してもらって すんなりとスプーンが排泄されるのを期待して待つしかないようです。最悪の場合 スプーンが腸内で詰まってしまった時には 開腹して摘出する手術を覚悟しなければなりませんので その説明をしましたが 何しろ高齢で心臓の状態もかなり心配でしたから 全身麻酔に耐えられるのかどうか 不安な状態ですが 腸閉塞の状態になってしまったら 解決策は手術しかないので 最悪の場合はその覚悟もしておくように 話しました。まあ犬の体格を考えれば 案外すんなりと排泄される可能性もかなり高いようには思いましたが 飼い主さんをあまり楽観させてしまうと 状況が悪化した時に途惑われるので 少なからず心配な状況であると 説明しました。
今夜は たまたまなのでしょうが三人も 異物を飲み込んで 嘔吐させる処置を繰り返しました。みんな無事に回復してくれればいいと願っております。おかげで寝不足になってしまいましたが そこそこ稼がせて頂きましたので 有難い事です。出来たら 昼間の時間内に来院して頂ければ もっとありがたいのですが 贅沢は言ってられませんよね。

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