1月19日 預かっている猫がご飯を食べてくれません

当院では 野良猫の避妊の手術を半額で引き受けています。野良猫をつれてこられる方の気持ちは色々あるみたいです。自分の家の庭や物置辺りに住み着いてしまって 子供が出来ると猶更厄介なので 連れてこられるケースが昨年の暮れに続きました。単純に近所の野良猫が増えないように と言う善意で連れてこられるケースが 勿論一般的です。所が今回は 猫を飼いたい気持ちから 野良猫を保護して 取り敢えずは自分にもあまり猫が慣れ親しんでいないので 避妊の手術をする間預かってもらっているうちに 何とか人に面倒をみられる生活に馴染んでくれることを期待して 連れてこられた方から預かりました。 先日無事に避妊の手術を終えて 抜糸までの期間 即ち十日間預かっている最中なのです。
野良猫でも すぐに人に慣れてくれて 馴染んでくれる場合も時々はありますが まあ現実には極稀なケースのようです。この猫ちゃんの場合 手術をするために 全身麻酔をかけるのですが 導入麻酔の為の筋肉注射を最初にするのですが ある程度触らせてくれる場合は バスタオルで全身をくるんで保定して お尻に注射します。この子の時にも何とか頭をなぜさせてはくれましたが かごから引っ張り出そうとしたら 暴れ出して興奮状態になってしまいましたので 諦めてバスタオルを何枚も重ねて かごの一番奥に体を押しつけてかごの外から筋肉注射して 導入麻酔をかけざるを得ませんでした。
仲良くなるのは かなり前途多難が予想されましたが 年齢は二歳ぐらいで 若くて健康体だったみたいで 手術は順調に終了しました。普通の飼い猫の場合は可能ならば 毎日傷の消毒と抗生剤の塗布をお願いしていますが この子の場合は間違いなく傷の消毒は出来なさそうでしたから 手術後に出来るだけ傷口を所得してタップリと抗生剤の軟膏を塗布しました。それから普通の飼い猫の場合は術後三日間は抗生剤を内服してもらい 傷口の可能を予防しますが 野良猫の場合は 術直後は警戒心が強く残っている場合が多いし エリカラーの違和感もあるのでしょうから なかなか食事をとってくれないケースも多いのです。この子もかなり神経質な性格みたいでしたから すぐにはご飯を食べてくれないことが予想されましたので 術後まだ麻酔が覚めていないうちに 皮下点滴で 出来る限り多量に栄養分と水分 更には抗生剤や消炎剤を投与しておきました。
避妊の手術の場合 お腹に十センチ弱の傷が出来ますから 抜糸までの間傷口を舐めないように エリカラーを装着します。このエリカラーは首周りとの兼ね合いが難しくて ゆるすぎると簡単にすっぽ抜けてしまうし 勿論きつすぎると 首が閉まってしまいますから 大変なことになります。その締め加減がなかなか難しいのですが まだ麻酔からさめきっていない脱力した状態で装着しますから 尚更カラーの締め加減が難しいのです。取り敢えずこれぐらいで苦しくもないし 簡単にすっぽ抜けそうもないぐらいでテーブで固定して 装着しました。所がやはり少し緩かったみたいで 一時間後ぐらいにはエリカラーがすっぽ抜けてしまっていました。まだ完全には麻酔から覚めていないことを期待して バスタオルで保定しようとしましたが 殆ど普通の状態に戻っていたみたいで かなり暴れまわるのを何とか捕まえてバスタオルでくるんで 顔だけタオルから出した状態で 先程よりは二センチ位締めた状態にしてエリカラーを装着し直しました。
それからは簡単に抜けない状態になったみたいで 一安心でしたが 装着された猫にすれば 手術で麻酔をかけるときにも暴れるのを押さえつけられたし 術後麻酔が覚めた時点でもやっぱり大暴れしたのを力づくで保定されてしまいましたから 病院の人間に対して かなり強い警戒心を持ってしまったようです。連れてこられた方が 確保するために半年位は餌付けをして 徐々に慣れて来てやっとかごに誘い込んで 確保されたのだそうですが その時にもかなり抵抗したのだそうです。
人間の感覚でいうと 特にこの寒い時期に 人間の世話になれば 暖かい部屋が提供され 餌も十分に与えられる環境ですから 勿論自由で勝手気ままな生活からは縁遠いのかもしれませんが 人に面倒をみてもらう方がずっと楽で安全であり 他の猫たちとの争いもありませんから 安心な生活が保障されますので 人間の世話になることを選択してくれそうに思いますが なかなか人間の思惑通りには 事が進まないのかもしれません。
この猫ちゃんの場合も 保護して連れてこられた方の希望的観測としては 何とか十日間人間に面倒をみてもらう生活を体験してくれたら 野良猫生活よりも良い事を認識してくれないか と言う事だったのですが 残念ながら 病院では致し方の無い事なのですが 反って人間不信になってしまったのかもしれません。連れてこられた方の話によると キャットフードはドライタイプよりもウェットタイプが好みに合うのだそうなので 市販されている はっきりと言って健康面ではあまりお勧めできないようなフードを買ってきて 更に鰹節をたっぷりとかけて与えてみましたが なかなか見向きもしてくれません。
本来野良猫と言うのは 慢性的に飢えている状態のはずなので 食べられるときにはたとえ不信感を抱いている人間に与えられたものでも 積極的に食べてくれるはずなのですが この猫は相当な肥満体でした。皮下脂肪も腹腔内脂肪も凄く多くて 手術が凄くやりにくかった位でした。ですから 立場としては野良猫ですが 普段から必要以上に栄養価の高すぎる食事をたっぷりと与えられていたみたいなのです。
つまり普段からゲップの絶えないような生活をしていたので 自由を奪われたうえにエリカラーまでしっかりと装着されている状態では よほど空腹を感じるまでは ご飯を食べてくれないのかもしれません。大人しいネコならば 食べなければ点滴を入れることも可能かもしれませんが とても皮下点滴をする数分間じっとしてくれるはずはありません。何とか好みにあるフードを探して与えてみるしかなさそうです。預かって三日が過ぎようとしていますが 何とか美味しそうなご飯を置いて 空腹に負けて食べてくれることを期待しながら面倒見るしかなさそうなので 可哀そうですが猫ちゃんの警戒心が薄れてくれるのを期待して待つしかありません。勿論こちらとしては 出来たらなんとか仲良くなって面倒をみたい気持ちですが こちらの気持ちは通じる可能性が低いのは分っておりますけれども 頑張って抜糸まで面倒をみようと思います。

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