3月22日  精巣腫瘍の手術をしました

三日前に始めて来院された患者さんですが一月位前から タマタマの片方が大きくなってきていて様子を見ていたが食欲も元気もあったのでそのままにしていたら 三日前から急にすごくおおきくなってきて そのころから食欲も元気もなくなってしまったという事でした。病名としては精巣腫瘍で間違いないでしょう。直ぐにでも摘出手術をするべきですが あいにくと翌日は大きな手術が予定されていましたので翌々日に手術をすることにして とりあえず点滴を入れて食欲元気の出る薬を混注してようすをみてもらいました。本日の十二時ちょうどに来院してもらいました。かなり神経質な犬だったので 飼い主さんに保定してもらわないとスムーズに誘導麻酔の薬を静脈注射するのが難しそうだったからです。誘導麻酔薬を投与したらほんの数秒で意識が無くなりますから そのまま飼い主さんにはお帰りいただき 手術台で本番の麻酔をかけて気管チューブを挿入しました。何しろ通常の精巣の大きさが3センチ×4センチ位なのに腫瘍のできている方は10センチ×15センチ位の大きさになってしまっているのです。大きなものを摘出するのには大きく切開して その分大きく縫合しなければなりません。摘出するのにはかなり手こずりましたが 何とか無事に摘出してきれいに縫合できました。

病気には様子を見ていて 場合によっては直ってしまい元通りになる種類の病気と、様子を見ていると悪化してしまい治療が遅れる分苦痛も治療期間も治療費用もかさんでしまうものがあります。例えば風邪を引いた場合様子を見ているといつの間にか直ってしまうときもありますが 悪化してひどい目にあう場合もあります。ところが虫歯になった場合は様子を見ていても時間の経過とともに悪化する一方で自然に治癒する可能性のない病気もあります。まあ、虫歯なんて痛くて我慢できなくなるまでほったらかしておいて歯医者さんに駆け込み もう少し早い段階で治療を始めておけばよかったと毎回後悔する方がほとんどだとは思いますが。

腫瘍もおなじで 様子を見て時間が経過するとともに確実に大きく成長します。腫瘍が大きくなれば全身に苦痛や元気食欲の減退など悪影響を与えるのは当然ですが 他の組織に転移する危険率は上がるし 大きくなった分摘出するときに大きく切開して縫合するので手術時間が長引きその危険性も上がります。術後も傷口が大きい分丁寧な消毒など面倒な手間が増えます。勿論飼い主さんには 腫瘍化して大きくなっているのか 単に例えばどこかにぶつけたりして物理的にダメージを受けて 炎症を起こして腫れ上がっているのかの正確な判断は難しいと思います。物理的なダメージによる炎症ならたんこぶみたいなものですから唾でもつけておけば直ってしまうでしょう。

この患者さんの場合は年齢も十二歳とかなり高齢でしたから 更に手術できるかどうか心配で血液と尿の検査をしたところ、重度の糖尿病や腎機能障害も見つかりましたが、当面腫瘍化した清掃を摘出するしか食欲元気を回復させる方法がなさそうでしたので 危険性の高いことを覚悟で手術しました。まあ、何事もなく順調に手術は終わりましたが 年齢とこの子の抱えている腎疾患、重度の糖尿病を考えると将来は不安ですが 飼い主さんがこれを機会にこの子の健康と元気で長生きを考えて飼うことを大切に考えると約束されましたので すごく嬉しかったです。

私も自分が高齢者になってきてから 健康で元気に長生きできることがどれだけ幸せなことか そして健康はお金では買えないことを実感してきましたので当院に来られる飼い主さんも同じ気持ちでペットの面倒をみてくださればすごく仕事にやりがいを感じられて 頑張れそうです。このブログを読んでいただける飼い主さんもその辺の所を是非よろしくお願いします。

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