3月26日 せっかくの休診日が雨だったので 仕事をしました

偉そうに仕事と言っても普段からサボっていてかなりたまっていた新規カルテのコンピューターへの入力です。本来なら来院されたその日に済ませておくべき仕事ですが 私は勤勉でないのでなかなか思い通りに仕事が進みません。今年になってから すぐに確定申告の準備に取りかっかたし、それが終わると楽しみな旅行の準備に夢中になり 帰ってからしばらくは旅行で遊び呆けたので 仕事をする気になれず 現在に至っています。

奥様は毎日トリミングの仕事が入りますから朝から晩までずっと立ちっぱなしでお仕事に励まれます。私はというと患者さんがいらっしゃるときには勿論一生懸命に仕事を頑張りますが、残念ながらうちの病院はそれほどたくさんの患者さんがお越しいただけません。それで暇な時間が結構あります。まじめで勤勉な方なら その時間を有効に活用してカルテや伝票の整理をなさるのだと思います。所が私は怠け者ですから時間があればインターネットの無料ゲームにうつつを抜かし、大好きな乃木坂46の映像を繰り返しみてダラダラと過ごしてしまいます。奥様も最初のうちはサボらずに仕事をするなり 獣医師としての勉強に頑張って励むことを勧めておられましたが 今では私が注意しても効かないので 呆れて無視しておられます。

正直なところ 若いころには新しい薬や治療法に興味津々でその類を紹介した文献には飛びついて読んで勉強しました。新しい薬や治療法には勿論それなりのメリットがあるから紹介されていますが 薬は必ず意外な副作用を抱えていますし 新しい治療法にも思わぬ落とし穴が待ち構えていたりしますから、新しいものに飛びつけば必ずしも患者さんにとってプラスになることばかりでもないことを何度が経験すると 新しい知識に対する吸収意欲が低下してしまいました。

勿論こんなことは私の不勉強の正当な言い訳にならないことは 重々承知していますが 年を取るにつれて 徐々に新しいことを吸収することが億劫になってくることは お年を召した方なら誰でも解かっていただけると思います。私は何度か申し上げたように二回大学生活を送りました。二十歳前後と三十歳前後です。大学には勿論卒業するために必要な単位を取得するのに試験があります。大学生の勉強は基本的に一夜漬けでした。勿論優秀な成績を収めておられる方々は 日頃から精進されているのでしょうが 大半の学生は総じて一夜漬けの勉強でその場その場を綱渡りのように乗り切っていたのだと思います。

一つ目の大学に通っていた二十歳前後のころには 勿論過去数年の問題を集めて分析し 今年の試験問題を予測して それなりに準備をして試験に臨めば大抵その準備の範囲内で 対処できて成績の良し悪しは別とすれば最低限合格ラインの得点は獲得できていました。所が二回目の大学生活でも同じ姿勢で試験に臨んだつもりですが 三十前後になるとやはり二十歳前後のころに比べて 瞬間的な記憶力や 一瞬消え失せた知識をもう一度手繰り寄せる腕力が明らかに衰えているのです。試験の始まる時には覚えていたことが90分の試験時間の最後の頃になると 幻のように消え去ってしまうのです。若いころならその幻をもう一度蘇らせることができたのに 年を重ねた分脳の瞬発力が失われていてうまく対処できなくて かなりの頻度で一度の試験では合格ラインに到達できず再試験を受けていました。

お恥ずかしい話ですが今はもう五十代半ばを過ぎて 今更新しい知識を身に着けても それを実際の診療にうまくいかせる自信がありません。実際の臨床の場は生き物であり、なかなか教科書と全く同じシチュエーションには巡り会えません。その場その場で状況に応じてその知識を応用して活用せねばならないのです。年を取ってくるとその柔軟な応用力が衰えてくることは 誰しも経験されていると思いますがもし思い当たられない方は 50メートルでいいから全力疾走をされてみたら実感できます。

三十代の方はまだまだ十代と同じように全力疾走をできると思っておられるかもしれませんが 殆どの方は自分の衰えに驚かれると思います。まずその場でタイムを見てがっかりされるかもしれませんが、呼吸や脈拍が正常にもどるまでにかかる時間にも驚かされるでしょう。そして、翌日から数日にわたって続く筋肉痛や関節痛でじっくりと自分の衰えを痛感されることと思います。運動能力の話をしましたが 脳の働きも同様に残念ながら年とともに 確実に衰えていくのです。

私が塩野義製薬に勤めていたころに 心臓に作用する薬でかなり画期的な新薬が発売されました。その薬の知識を十分にドクターに理解してもらえるように最大限の努力をしました。ドクターもその薬の有用性はそれなりに理解してくれたはずでした。心停止した場合等に有効な薬で大学病院などではそれなりに活躍の場があるので 発売されてすぐに売れることを期待していました。所が、その薬の有用性は十分に理解してくれているはずのドクターが いざその薬の出番になると何故かその薬を処方してくれませんでした。心停止した緊急事態になると どうしても今まで使用していた薬を選択されてしまうのです。

心停止状態という緊急事態に新しい薬を使うのはその有用性を頭で理解していてもなかなか難しいのはしょうがないことかもしれません。それと同様に私が今から新しい知識を吸収して新しい治療法を試してみることも結構勇気がいり難しいことであることをご理解ください。勿論だからと言って新しい知識に対して拒絶しているわけではありませんが どうしても柔軟な応用力にかけてくるのは致し方のないことかもしれません。勿論年を重ねている分若い方にはない十分な経験と落ち着いた姿勢で対処できる長所もあるのです。

なんだかこれ以上書いても言い訳にしかならないような気がするので本日はここら当たりで終わりにしようと思います。

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