5月24日 妊娠中の猫の子宮摘出手術をしました

当院の常連の患者さんで 猫が大好きで既に何匹も家の中で飼っているのだけれども ついノラちゃんの面倒もみてしまっておられる患者さんから 「ノラ猫なんだけれども お腹が膨らんできています。 凄く懐いてしまったので今後は家の中で面倒みようと思っているのだけれども 赤ちゃんが生まれてしまうと困るので何とかしてください」という相談を受けました。犬、猫の妊娠期間は一般的に63日位です。お腹のふくらみが目立つのはすでに50日を過ぎている可能性が高いので 今後日一日と胎児が成長しますから 子宮ごと摘出してしまうのなら 一日でも早い方がいいのです。所が明日も明後日もすでに手術の予定が入っているので難しそうです。仕方がないので本日病院を閉めてから 胎児の入った子宮の摘出手術を行う事にしました。

妊娠している最中は 当然ですが胎児に栄養をたっぷりと送り込むために子宮に血液を沢山送れるように子宮につながる血管が太くなりますから その子宮を摘出する手術はどうしても出血が多くなりがちです。私たちが手術をするときには出来るだけスムーズに必要な手順を終えることと少しでも出血量を少なくすることを目指します。ですから 妊娠中の子宮の摘出や ある程度大きくなってしまった腫瘍の摘出手術は どうしても出血量をある程度覚悟しなければならず 精神的にかなり疲れる手術になります。ましてや一日の診察を終えてからの時間帯の手術ですから 結構しんどいのが正直な気持ちですが 日延べすればするほど胎児が成長してしまい 余計に厄介な手術になってしまうことが明らかなので 本日頑張る事になりました。

手術をする猫は非常に大人しくて人懐こい扱いやすい猫ちゃんだったので すんなり麻酔がかかり順調に手術がスタートしました。所が手術を始めてしばらくすると 呼吸が停止してしまいました。手術中に呼吸が停止した時の対処法としては二つあります。その一つは人工呼吸器を作動させてそのまま手術を続行する方法です。人工呼吸器とは周期的に空気を気管チューブを介して肺に送り込み吸い出して 強制的に呼吸を続行させる機械です。もう一つの方法は 自発的な呼吸が停止した時に 一時的に麻酔を切り刺激を与えて 自発呼吸を呼び覚ましてから手術を再開するやり方です。

うちの病院では人工呼吸器を使わず 基本的に自発性の呼吸をしている状態で手術をしています。これは私が研修をしていた病院のやり方を踏襲しているのですが 自発性の呼吸が止まると人工呼吸器で呼吸させながら手術を続行する病院とどちらの方が多いのでしょう。私は人工呼吸器で呼吸をさせていて 手術終了後に自発性呼吸が戻らないのではないかという不安を感じるので 人工呼吸器を使いたくありません。別にどちらのやり方を選択するかは院長先生の好みであり 優劣があるとは思いません。

さて、本日手術する猫ちゃんは 適度に麻酔が効いていて自発呼吸を維持するゾーンが狭い子だったのでしょう。ちょっと麻酔を強めると自発呼吸がとまり かといって麻酔を弱めすぎると術中に動き出しそうになりました。これは各自の体質の問題なので 猫ちゃんに文句を言ってもしょうがないので 呼吸をしながら動かない麻酔の強さをうまく調節しながら なんとか手術を終えました。

摘出した子宮には四匹の胎児が入っていました。あと数日したら元気な赤ちゃんネコとして生まれていたのだと思うと残酷な事をしてしまったような気もしますが 望まれない赤ちゃんが生まれて来ても余計に不幸な状態になりますから 致し方のない事と割り切らざるを得ないのだと思います。手術が終わったのが夜の十時頃でした。さすがに疲れていましたしおなかも空いていましたので お好み焼きの「きんた」に出かけて晩御飯を食べました。お店を出ると十一時半ごろだったので さっさとベッドにもぐりこんで寝ればいいのですが 土曜日の夜は沢尻エリカ様のドラマ「ファーストクラス」と「AKBショウ」を毎回録画にセッティングしているので それらを見てから寝ることになるので結構夜更かしをしてしまいました。(このブログは翌日の朝にかいています)

夜更かしをすると朝から御風呂で居眠りをしてしまい 患者さんが来てもお風呂に入っていたりするので奥様に思いっきり怒られますが本日もやはり30分ぐらいウトウトしてしまい 怒られました。手術を頑張った次の朝ぐらいはもう少し優しくしてほしいのですが 「あなたは手術の時位しか仕事をしていません。それ以外の時間は殆ど遊んでいるみたいなものだから 多少しんどい手術をしたからと言って威張るんじゃないわよ。」と言われてしまい 確かにおっしゃる通りだと思いますので 反論できずに黙り込んでしまいました。私と奥様で多少の口論は珍しくありませんが 奥様の方が正論を述べられている確率が非常に高いので いつも私が黙り込んで敗北します。とっても悔しいです。でも奥様と口論してもおそらく一生勝てないのは分かっていますから、諦めて無駄な抵抗はせずに生きていこうと思います。

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