5月26日 カラスのひなが来院しました。

夕方に電話がかかってきて カラスが道端にうずくまっているのを保護したのだけれども 診察してくれるか と言う問い合わせでした。当院では野生動物の場合は 基本的に無料で診察していますので 来院されるように答えました。夕方来院されましたが カルテの住所をみたら 大阪市内の方なので驚きましたが 近所の動物病院に電話をかけたら カラスは害獣の一種なので と言う理由で診察を拒否されたのだそうです。大阪府獣医師会としては 野生動物が来院した場合は 基本的に無料で対応して 後に獣医師会に請求して 料金を受け取るように決められていますが 大阪市内は 独立した獣医師会なので 大阪府獣医師会とは対応が異なるみたいです。
大阪市獣医師会はカラスや土鳩は 人間生活に迷惑をかける害獣なので 一切対応しないことが規則としてあるみたいです。人間の場合 たとえその人が犯罪者であっても治療を要する状態であれば 放っては置けないはずです。カラスは生活域がたまたま人間と重なっているので 人間に不都合な行動を取ることがあるのかもしれませんが カラスには何の罪もない事だと思います。ましてや 連れてこられたカラスは まだやっと巣立ったばかりらしい 殆どヒナと呼んでもいいぐらいの若い年齢の鳥だと思われます。
道路の分離帯の辺りに動けなくて うずくまっていたのを保護したのだそうです。それも最初カラスに気づいた時には通り過ぎてしまったので わざわざ道路を引き返してまで 保護してあげたのだそうです。会社の同僚の方が 一緒に来院されましたが その方はこれまでにも怪我した野生動物を何度も保護しては 自然に返している 凄く優しい面倒見の良い方なのだそうです。
診察してみると 体格的に通常の大人のカラスよりも あきらかに小さくて 巣立って間もない幼鳥でした。外傷や出血している所はなさそうです。目や口橋など頭の部分には損傷がないようです。次に羽根の部分を触診しますと 残念ながら右の羽根の 人間でいうと肩の少し下の部分が粉々に骨折していました。骨をつなげるのは困難なので将来的には壊死してくるかもしれませんから 最悪の場合は羽根を落とさなければならないのかもしれません。
足は両方ともしっかりと私の手をつかんでいましたから 大丈夫の様です。次に尾羽の部分を診察しました。不自然に垂れ下がっているようなので 心配して触診すると 案の定尾骨と言う名称が正しいのか自信はありませんが やはり骨折していました。厳密にはレントゲンを撮ってみるべきだと思いましたが 骨折は間違いのない状態でしたので 本日の所は省略しました。午前中に保護してから 食べ物や水を与えてみたのだが 全て拒否されたのだそうです。
鳥は飛ぶので 身を軽くするために 必要最低限度の栄養しか蓄えていませんから 半日以上も全然食べていないのは ある意味骨折している事以上に心配な状態です。ペースト状のドッグフードを水でサラサラの状態にして スプーンで口に流し込んでみましたが やはり直ぐに吐き出してしまい 断固拒否の姿勢です。仕方がないので 水薬を作る時のための 濃度の高い砂糖水を注射ポンプで流し込んでみました。今度は何とか飲み込んでくれました。取り敢えずの栄養補給は 液体状のものを口に流し込んで様子を見るしかないみたいです。
カラスは非常に賢い動物で 人間が自分に危害を加えない 面倒をみてくれる存在であることを理解すると 非常になついてきて面倒が見やすい鳥です。大人になって ある程度色んな人生経験を積んでいると 人間に対して必要以上に警戒心を持たずに 上手く接してくれますが この子はまだ幼鳥なので 人生経験も乏しくて 上手く人間に面倒をみられる生活に 順応できないのかもしれません。体の大切な部分に骨折と言う大けがを少なくとも二か所はしていますが 取り敢えずは上手く馴染んでくれれば 運よく凄く面倒見の良い方に保護されたみたいですから 生き延びれる可能性は十分にあると思います。
いずれは手術が必要になるのかもしれませんが 何とか人間に馴染んで 食べる事飲む事が 出来るようにならなければ生きてはいけないでしょう。保護した方は何とかできるだけの面倒は見たいと仰っていましたので その方にこの子が馴染んでくれればと願って 当面の飲み薬として 化膿しないように抗生剤と 痛みを和らげるために消炎剤 食欲元気の出る薬を 甘いシロップで渡しましたので 頑張って投薬とともに面倒をみて頂きましょう。
恐らく道路を横切ろうとして 背の高いトラック辺りと接触してしまって 負傷したのだろうと思います。右の羽根と尾骨を損傷してしまいましたから もう今後空を飛べることはないはずですが 人間との生活に上手く順応してくれれば 結構長い事生きていけると思います。保護された方の負担は決して軽くはないと思いますが 縁があって巡り合ってしまったのですから この子が天寿を全うできるまで 上手に面倒見てあげて欲しいと思いました。

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