7月24日 大船渡高校の佐々木投手が決勝戦に投げなかったことについて

たかが高校生投手が監督の意図によって 甲子園への予選で登板を回避しただけのことが かなり大きな話題になっています。佐々木投手と言うのが 最高球速160キロ と言われる超逸材だと評判だからであるようです。高校野球の夏の選手権の岩手県大会の決勝戦で その超逸材の佐々木投手が 準決勝に先発して完封したので そこそこの球数を投げたことを理由に決勝戦での登板を回避したのだそうです。

日本では 投手の投球数の制限に対する認識が低いのかもしれませんが WBCを筆頭に野球の国際大会では その予選の段階から かなり投手の球数に関して厳しい制限があります。投手の肩は消耗品であるから その本人の将来を考えて 球数と登板間隔には 相当厳しい配慮がなされるのが 世界基準なのかもしれません。日本人の感覚では 理解しがたい位に投球数について 細かくて厳しい制限があります。投手の投球による肩に蓄積した疲労と消耗 そしてそこからの回復を十分に配慮しての制限だと思いますが あまりに厳しいのは如何なものかと思ってしまいます。日本人の ましてや投手と言うポジションにつく人間は ある程度気持ちで投げている部分も少なからずあると思いますので 極端に少ない数での制限は 投手の心意気を消沈させてしまう弊害があるように思えてしまいます。

話を元に戻すと 大船渡高校は 決勝戦では エースが登板を回避したために 二番手以降の投手をつないだのですが 初回からどんどん点を取られて 結局12対2と言う大差で敗れてしまいました。もしこの試合で 大船渡高校が勝って甲子園出場を決めていれば 大した事件にはならずに済んだのだと思いますが 世間から凄く注目されていた佐々木君の高校野球人生が この試合で終わってしまいましたので 周囲の人間が黙っていられなかったのかもしれません。ちなみに佐々木君本人は 監督から登板回避を告げられた時も 自分の疲労を配慮しての事であることを理解して 笑顔で承諾したのだそうです。

佐々木君の能力に勝手に注目して 甲子園での活躍を勝手に期待しておいて 佐々木君が結果的に甲子園に出られなくなってしまったら 監督の采配をこれまた勝手に批判して偉そうに踏ん反り返っている周囲の人間に 余計なおせっかいだから黙っていてほしいと私は思ってしまいます。甲子園で行われる高校野球は あくまで高校の野球部の公式試合の延長線上にあるのですから 単に部活動の成果を競い合う試合に過ぎないのです。それをテレビ朝日と朝日新聞が 主催者と言う立場なので さも当然のような顔をして 勝手に佐々木投手をスターに祭り上げておいて 甲子園に出場できなかったことを残念に思う気持ちはわからないでもありませんが 監督に対して批判的な空気を盛り上げているような雰囲気が非常に不愉快です。

もうかなりの昔の話になりますが 国民栄誉賞までもらった松井秀喜選手が 甲子園で五打席連続敬遠をされて結果的には敗れた試合がありました。この時の相手チームが明徳義塾高校でしたが その監督の采配についても 何しろその舞台となったのが甲子園であったこともあり 賛否両論盛り上がってしまいました。明徳の監督は 星陵と試合することが決まった時から 松井の全打席歩かせることを決めていたのだそうです。
試合結果は2対1で明徳が辛うじて勝利を収めましたから 監督の策が見事に功を奏したのです。野球のルール上 押さえられないと判断した打者に対して 敬遠で歩かせることは ルール上認められていますから 明徳の監督は何らルール違反を犯したわけではないのに A級戦犯かのように 吊し上げられました。「高校生らしく堂々と勝負すべきだった」と言うのが監督を責めたてる連中の殆どの言い分だったみたいです。正々堂々と勝負したから 敬遠したのです。日大アメフト部の監督の様に 相手に怪我をさせることを目的とした指示を出していれば 第一打席の第一球で 松井君の頭を狙えば話は早かったのです。相手が超高校級のバッターだったので 力んでコントロールを失いましたとでもいえば幾らでも理由はつけられたはずです。しかし明徳の監督は 勝負を避けるという消極的であり 決して褒められるような形では ありませんでしたが あくまで野球のルールに乗っ取った形で対応したのですから なんら責められるような作戦ではなかったと思います。
試合は一点差の接戦でした。松井君がたとえどんなにすごいバッターであったとしても 五打席とも出塁できる可能性は 殆どありません。しかし無条件に五回とも出塁させてもらえたのです。松井君は強打者ではありましたが 高校生の頃はそこそこ足も速かったのです。五回も無条件に出塁させてもらえたのに 一度も得点につなげられなかったのですから むしろ責められるべきは 星陵の監督の無能さではないでしょうか。
私は 監督の指示に忠実に従った 明徳の選手たちをむしろ褒め称えるべきではないかとさえ思ってしまいます。同じ高校生が相手なのですから 例え松井であっても正面から勝負したかった気持ちは凄く強かったと思います。ましてや彼らは 高校野球の強豪校が揃う高知県の代表なのです。そんな悔しい気持ちを表には出さないで 淡々と監督の指示通りに試合をしたのですから 私は明徳の選手たちは凄くよく頑張ったと褒めてあげたいです。
どこかの馬鹿なニュース解説者が 試合を見ている人たちの気持ちを考えて采配してほしかった 等ととんだ勘違い発言をしていたのが 凄く腹立たしかったです。彼らは 高校生であり たまたま選んだ課外活動の成果を発表するために試合をしているのです。その試合を勝手に見物して楽しんでいる観客なんかを楽しませるために試合をしているのではないのです。プロ野球は 見世物ですから 試合を見に来てくれたお客様が神様かもしれませんし 観客を満足させるために試合をしているのでしょうが 高校生の課外活動を見物させてもらっている観客に対する配慮など全く無用だと思います。
話の方向が とっ散らかってしまいましたが 今回の大船渡高校の監督の選手起用は 大正解だとは思いません。準決勝を勝たなければ 決勝戦は戦えないのですが 佐々木投手を先発させたとしても ある程度リードが出来たら 例えば途中からライトにでも入れて ピンチになればまたマウンドに立てるようにしておいて 控え投手でつないで乗り切れば 決勝戦でも佐々木投手の先発は可能だったのかもしれません。
例え打順一回りだけでも 佐々木君のスピードボールを見せておけば 控え投手の遅い球でも もう少し失点は抑えられたのかもしれませんから 決勝戦に勝つ可能性は広がる采配が出来たのではないでしょうか。とは言え 佐々木君の将来を考えて 敢えて決勝戦では一切投げさせないと決意して それを実行したのですから その采配は当然試合後に受けるであろう批判を覚悟しての事ですから すごく立派だったと思います。赤の他人がどうのこうのと文句を言う筋合いの話では全く無いように思います。
本音の部分では 監督だって 佐々木君と言う凄い逸材と巡り合えて 甲子園で注目されて華々しく戦い 活躍したかったに違いありませんが 敢えてかわいい教え子の将来を大切に考えて 英断したのですから ひょっとしたらこの夏一番のいい話かもしれないと考えますが 如何思われますか。

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