8月28日 入院していた心臓病の犬が亡くなりました。

 一週間ほど前の深夜に心臓の発作を起こしたという電話があり救急で診察しました。13歳の雑種で心臓弁膜症の末期であり血圧も相当に高めの かなり危険な状態でした。かろうじて立ってうろつくことが出来るくらいです。すでに体温も低下しており 今夜一晩持つかどうか五分五分くらいの見立てでした。入院させて酸素室でゆっくりと治療するのが最善でしたが 飼い主さんが入院を望まれなかったので応急処置的な治療を施しました。皮下点滴に 強心剤や利尿剤 ショック状態から回復を促す薬などをたっぷりと投与しました。体温が低下しているので夏の暑い盛りですが 冷房の効いていない部屋に置いてもらい平熱に戻ることを期待しました。
 翌日になって心臓の発作は収まったようだが今度はふらついて立てない、真っ直ぐに歩けないという事で来院されました。診察すると昨夜はなかった眼振がかなり強くみられました。その日の午前中にヨタヨタと歩き回っていて 再び軽い発作が起こり大きな物音がしたので様子を見に行くと倒れていてそれからふらつて一切立てなくなってしまい頻繁に嘔吐を繰り返しているそうです。眼振とは頭を強打した時などに起こる眼球が一定のリズムで横に横に触れている状態です。本人としては目がくるくる回っているような状態で じっと立ってもいられないはずです。
 診察すると心臓の状態はかなり落ち着いているみたいで体温も平熱に戻っていました。勿論心臓の治療の継続も必要ですが眼振に対する治療まで始めなければなりません。嘔吐を繰り返しているので 内服薬は使えずやはり皮下点滴に心臓の状態を改善する薬と眼振の状態を改善する薬 繰り返す嘔吐を鎮める薬等を投与しました。
 翌日には眼振がある程度治まり なんとか立ち上がれるようになり嘔吐も治まったが食欲が全くないという事で再び来院されました。ある程度食欲が戻ってくれたら 内服薬での治療も出来ますが 全く食欲のない状態では点滴とともに薬剤を投与するしかありません。前日と同様のお薬を用いて治療しました。
 翌日には ほんの少しですがフードを食べて 嘔吐する気配もなさそうでしたが やはり心配されて来院されました。眼振のダメージは殆ど無くなっているみたいなので 心臓の治療に絞って薬剤を投与しました。もう少し食欲が戻れば一安心だと思いホッとしました。
 その翌日に飼い主さんから電話があり 飼い主さんのお父さんがお亡くなりになられて 急に四国へ帰省しなければならなくなり入院させてほしいとの要望がありました。お盆の混雑はなくなり入院室にも余裕があったので 直ぐに預かる準備をしました。
 ただ心配なのは 犬自体がかなり神経質な性格で 知らない場所で知らない人に面倒をみられることが 心臓に悪影響を与えないかという事でした。自宅では立ち上がるとふらつくので殆ど横になった状態なのだそうですが 入院室に入れると おちおち横になっていられないみたいで 立ち上がり部屋の中を歩き回っていました。できるだけリラックスしてもらおうと 宥めてすかして落ち着かせようとしましたがあまり効果がありませんでした。翌日になると少しは慣れてくれたみたいですが 少し戻りかけていた食欲は全然見られません。手を変え品を変えていろいろと試してみましたが 駄目でした。
 預かって二日目に収まっていたはずの心臓の軽い発作が認められました。部屋を酸素室にして呼吸を落ち着かせるとなんとか治まりましたが やはり知らない場所で飼い主さん以外の人間としか接触できないことが 相当なストレスになっているみたいでした。
 御不幸があってお預かりしているので 早めに帰宅していただくことは 不可能でした。預かって三日目にさらに強い心臓発作が起きて かなり危険な状態になってしまいました。できる限りの治療を施しているつもりですが やはり飼い主さんに会えないのが 決定的なストレスみたいで病院のスタッフにはまるで馴染んでもらえませんでした。好きな女性に一生懸命にアプローチしているのに全く相手にされていないみたいで 寂しくて結構へこみました。 預かって四日目が本日なのですがお昼前に残念ながら力尽きて心臓が停止してしまいました。明日には帰阪されるという事なので なんとかあと一日もってくれれば 飼い主さんの顔を見れば持ち直してくれる可能性も少なくないと思って懸命に治療しましたが 力及びませんでした。
 当院を信頼して預けて頂いたので 申し訳ない気持ちと力及ばず悔しい気持ちが一杯です。動物病院で仕事をしていると勿論元気になって退院してくれる動物も少なくありませんが 今回のように力尽きて悲しい隊員をする動物も残念ながらそこそこいるのが現実です。残念で悔しい気持ちをよくかみしめて 更にしっかりと勉強してやんだり傷ついた動物のお役担てるように頑張ろうと思いました。

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