9月23日 尿道にカテーテルが挿管できませんでした

昨夜の遅い時間に 電話がかかってきて 飼い猫のおしっこが昨日今日と出ていないので診て欲しいとのことでした。このブログにも何度も書いていますが おしっこは三日でない状態だと死に至る場合が多いのです。かなりの緊急事態みたいなので 結構遠くの方でしたが 来院して頂くことにしました。おしっこが出ない猫の場合 大抵は尿道にカテーテルを挿管して おしっこの通り道を確保して 取り敢えずは膀胱に貯まっているおしっこを出してあげます。その後膀胱に温めた生理食塩水をカテーテルから流し込んでは 体外に導出することを繰り返して 膀胱内を洗浄します。
そしてカテーテルを引き抜いて 自力でおしっこが出そうな状況であれば その場の処置は終了しますが カテーテルなしの状態では すぐにまたおしっこが出にくくなりそうな状況であれば カテーテルを尿道内に何日間か留置することもあります。カテーテルについている羽の部分とおちんちんの包皮を縫い付けるのです。カテーテルを留置している場合は 本人の意思に関わらずおしっこが漏れてしまいますから すのこのあるケージの中に入れておかなければならないのかもしれませんので 本人としても 飼い主さんとしても かなり面倒な状況になってしまいます。
とは言っても おしっこがまたでなくなるとすぐに命に関わる状況になってしまいますから 致し方ないのかもしれません。私はこの地で開業してから 二十年以上にもなりますから 雄猫がおしっこが詰まってしまって 尿道カテーテルを挿管する処置は 百回以上経験しています。正直申し上げて これまでにも挿管を諦めかけた事は何度もありましたが 結果的には何とか辛うじて挿管を試みたケースでは 全て挿管できていました。
所が 昨夜は 尿道にカテーテルを挿管できませんでした。この作業は おちんちんをつまんで 尿道口からカテーテルを膀胱まで通すのですが 基本的に太っている猫の場合は おちんちんがお腹に埋まってしまって しっかりとつまみにくくて やりにくいのです。人間のおちんちんにも個人差がありますが 猫のおちんちんにもそれなりに個体差があります。勿論立派なおちんちんの方が作業がしやすいのですが 今夜の猫のおちんちんは 異常に小さかったのです。
普通の猫の場合 麻酔を弱めにかけてあおむけに寝かせて おちんちんが突出しやすい状況に保定します。その体勢で 普通はおちんちんが一センチ位でてきますから そこをつまんでカテーテルを挿管するのですが 昨夜の猫は ほんの三ミリぐらいしか出てこないのです。私の太い指では そんな小さなおちんちんはしっかりとつまめません。奥様にもチャレンジしてもらいましたが やはり無理でした。仕方がないのでおちんちんの先端部分をピンセットで挟んで保持してみました。その状態でカテーテルを挿入しようと試みましたが おちんちんが普通のサイズの半分以下ですから 恐らく尿道口も凄く小さかったのだと思いますが カテーテルが全く尿道に入っていかないのです。
これまでも挿管が難しくて 何度も諦めかけましたが いずれも最後の一頑張りでなんとか入ってくれました。所が 恐らく今夜の猫の場合は異常におちんちんが小さすぎましたから物理的にカテーテルの挿管が難しかったのかもしれません。犬の場合は体格差が大きいので カテーテルの太さにも大小幾つかのサイズがありますが 猫の場合は決まった太さのカテーテルしかありません。これまで百匹以上の猫では何とか挿入できましたが 残念ながら無理でした。仕方がないので 飼い主さんに正直に状況を説明して 何もしてあげられないままにお返しすることになってしまいました。尿道をお腹に縫い付ける手術になる可能性が高いので 近所の病院にかかることをおすすめしました。
私は決して手先が器用な人間ではありません。もっとカテーテルの挿管の経験が豊富であり 上手な獣医師さんなら 違う結果になったのかもしれません。自分の能力の低さを痛感させられたようで 悲しくなりましたが 残念な結果を逃げずに受け止めて これからの診療活動を頑張ることが 今夜の結果的には何にもしてあげられなかった猫ちゃんへのお詫びになるのではないかと考えます。あと数年はこの仕事を続けていくつもりですので 病気やケガで苦しむ動物に 少しでもお役にたてるように 務めていこうと真剣に思いました。

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