長年犬を飼っていますが、日本で狂犬病は既に存在しない病気なので予防注射を受けさせた事がありません。特にこれまで不都合もなく罰則をうけた事もありませんが、必要なのでしょうか?


狂犬病予防法という法律において、犬の飼い主は、犬を所有してから(生後90日以内の場合は90日を経過してから)30日以内に所在地の市町村(区)長に登録を申請して、鑑札の交付を受け、犬に着ける事、そして毎年狂犬病の予防注射を受けさせて、その注射済み票を犬に着ける事が義務付けられています。
この義務を果たされていない(鑑札や注射済み票を身に着けていない)犬は、狂犬病予防員によって拘留され、場合によっては処分されます。又罰則として、義務を果たさない飼い主は、20万円以下の罰金が定められています。
予防注射を実施しないだけで、場合によっては殺処分されるなんて、ひどい法律だと思われるかもしれませんが、致し方ありません。何故なら、狂犬病予防法も狂犬病の予防注射も犬の為のものではなくて、国民のの安全を守るためのものだからです。ですから、日本でもう50年以上発生していなくても、世界中で毎年数万人が死亡している現状では、この法律が改正される事は当分ないでしょう。
但し、予防員によって犬が拘留されたケースや、飼い主さんが罰金を支払った事実は聞いた事がありません。ですから、実質的な罰則は無いに等しいのが現実です。
しかし、「現実的な罰則が無いから、法律に定められた義務を果たさなくてもよい」という考え方は、恥ずかしいと思いませんか。「自動車運転時のシートベルトの着用」の様に罰則が重くなって、やっと遵守率が高くなるなんて情けない事だと思います。
それに、公的な罰則が無くても、もし飼い犬が人間若しくは犬とトラブルを起こした場合、登録して予防注射済みの場合に比べて、登録も注射もしてない場合では立場が明らかに不利になります。
罰則の有無や、損得に関わらず、飼い主さんの義務として認識して頂いて一人でも多くの飼い主さんが登録と定期的な予防注射を実施される事を私は獣医師として期待しております。

よくあるご質問一覧