賞味期限を過ぎてしまったドッグフードでも、人間より嗅覚の優れた犬が普通に食べれば安全であるという話を聞きましたが、本当ですか?


賞味期限とは、フードメーカーが独自で決定した未開封で定法で保存した場合のフードの品質を保証する期限です。その期限内ならドッグフードとして安心して犬に与えられる品質をメーカーが保証するという意味であり、それ以上でもそれ以下でもありません。
ですから、期限内であっても保存方法に問題があったり、フードをつくる段階で何らかのトラブルがあったりして、期限内にフードとしての品質を保てなくなる可能性が全くない訳ではないのです。だから期限内であっても、飼い主さんがフードを与える時に自分の視覚や嗅覚、触覚を働かせて何時もと変わりないことを確認されるべきだと思います。
尚、一食分ずつ小分け包装していないドライフードの場合、開封した時点で賞味期限の定義からは逸脱するわけですから、賞味期限はあくまでも目安にしか過ぎなくなることをしっかりと認識しておきましょう。
逆に、期限が過ぎたからと言ってフードが直ちに変質して不適格になるという意味でもありません。ですから、その期限を過ぎてもある程度の期間はフードとして使用できるかもしれませんが、それはケースバイケースですから、一概に論じられません。
要するに、賞味期限と言う言葉の意味する所を過大評価せずに現実的に理解してそんなものにあまり振り回されずに生活して頂きたいのです。人間の食べ物が賞味期限を過ぎた場合を考えてみましょう。賞味期限を鵜呑みにしてしまう人なら何でもかんでも直ぐに処分してしまうかもしれませんし、自分の五感で調べてみて大丈夫と判断したら慎重に食べる人もいるでしょう。賞味期限なんて全く気にしないでムシャムシャ食べる人もいるかもしれません。うっかり品質の劣化したものを食べて嘔吐や下痢といった被害を受けるかもしれませんが一度その様な経験をすればより正確に食べてよいか悪いかの判断が出来るようになるかもしれません。動物相手とはいえ医療に携わるものがこの様な発言をするのは不謹慎かもしれませんが、何を信用してよいか判断の難しい現在、頼れるのは実践的な知識や経験に基づく知恵だと思います。
ドッグフードが賞味期限を過ぎてしまった場合でも同様ではないでしょうか。まずは飼い主さんが調べてみて大丈夫と判断したら慎重にペットに与えて様子をみてもいいのではないかと思います。質問にあるとおり犬は優れた嗅覚を持ちますから確かに人間よりもフードの品質の劣化をより正確に感じ取る事が出来るかもしれません。但し、あくまで犬は犬ですから、品質の劣化を感知しても食欲を優先してしまうかもしれません。ですから、普段と同じ様に食べればまず大丈夫でしょうが少しでも普段と異なる反応を示したら廃棄される事が望ましいのかもしれません。
獣医師の立場としては賞味期限を過ぎたフードは直ぐに廃棄する事をおすすめすべきかもしれません。でも、犬にも食べてよいものか悪いものかの判断する知恵は必要だと思います。
例えば、朝与えたフードが普段は直ぐに食べきるのにたまたま残って夕方には腐敗していたようなケースを想定してみましょう。安全なフードしか食べた事がなければ何時もの器にはいっている何時ものフードですから何の疑問持たずにそのまま食べてしまって中毒を起こすかもしれません。でも、品質がいくらか劣化したフードと対面した事がある犬なら躊躇して食べる事を断念するかもしれません。
こんな事はあくまでも仮定の話ですが、犬も色んな経験を積む事によって色んな知恵を身に付けて成長するのではないでしょうか。
以上は私の個人的な意見ですから、ある程度賛同していただける方もいらっしゃるかもしれませんし、全く理解して頂けない方も多いと思います。別に自分の考え方を偉そうに押し付ける気持ちはありませんが、大事なペットでもあまり過保護に育てないで多少は危険を伴うかもしれないことを経験した方が逞しくて賢い動物に成長するように思います。

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