よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

痛みについて


  • 愛犬が散歩中に他の犬に咬まれ、右の後足に負傷し 痛がって眠れないようです。治療を受けている病院に鎮痛剤の処方を希望しましたが 先生は「痛みは身体を守る為のものだから、鎮痛剤は使わない。」と言われました。私も心配で眠れない位ですがこのままで良いのでしょうか?


    質問にお答えする前に、「痛み」について簡単に説明しておきましょう。
    人間も動物も数種の感覚を持っています。「視覚」や「聴覚」「嗅覚」「味覚」等は、説明も不要でしょうが、他に温度を感じる「温・冷覚」や身体への接触を感じる「触覚」そして 痛みを感じる「痛覚」があります。痛覚は体の表面だけでなく隅々にセンサーを張り巡らしていて刺激を受けると電気的な信号に変換し神経を介して脳に伝えて、体の異常を教えます。視覚や聴覚が年齢とともに衰えるのに対して、痛覚は生まれたときから死ぬまで同様に働きますが、これは痛覚がより身体を守る為に重要である為と思われます。さて、「痛み」を発生原因等て分類して詳しく説明しても、あまり興味を持って頂けないと思いますので、その果たしている役割について簡単に説明します。痛みは身体が損傷を受けたときに損傷部位を修復しようとして起こる炎症反応の症状のひとつです。炎症の症状には他に「発赤」「腫脹」「発熱」「機能障害」等があります。
    例えば、腕を打撲した場合でも想定してみましょう。外傷や出血を伴わなくても、筋肉に損傷があれば、直後から数時間のうちに皮膚が赤味を帯び腫れ上がり、熱を持ち、痛みを伴うので、動かし辛い状況になるでしょう。この様に肉体が損傷を受けるとその部位を修復する過程で炎症の五つの症状が現われます。損傷部位で起こっている事の流れをごく簡単に説明しますと、修復活動を行う為に まず副交感神経が刺激されて血管が拡張される為に発赤が起こります。拡張した血管から白血球等がたくさん流入し、活発に修復活動を行いますからその部位が腫脹します。同時に副交感神経の刺激によりプロスタグランジンやヒスタミン等の発熱や発痛を起こす物質が分泌されて、熱や痛みが発生して、修復部位を動かし辛い状態にする事で、修復活動をスムーズにすすめるようにします。勿論 修復が終了すれば、徐々に赤味も腫れも引き、熱が下がり、痛みが和らぐので、動かし易くなります。
    以上の説明から理解して頂きたい事は、痛みや発熱は損傷部位の修復をスムーズに進めるために発生している訳ですから、ある意味では身体を守っている意味合いがあります。ですから、かかりつけの動物病院の先生が仰る事は、根本的には間違っていないと思います。但し、痛みの為に眠れない状態なら、当然食欲も落ちているでしょうから、このままでは衰弱してしまう恐れがあり、治療が順調にすすんでいるとは思えません。痛みや発熱の意義を十分に理解した上で、ある程度はそれらを和らげてあげて、十分に睡眠や食事が出来る状態を維持しながら、尚且つ損傷部位の修復がスムーズにすすむような治療方針を見つけるように獣医師は最大限の努力をする必要があると思います。まあ言葉で表現する事は簡単だけど、なかなか上手くいかなくて全ての獣医師が苦労しているのだと思いますけどね。
    結論として申し上げたい事は、飼い主さんが納得できないのなら他の病院の先生に電話でもいいから相談してみられればよいと思います。何軒が相談されればきっと納得のいく説明と治療をしてもらえる病院が見つかると思います。


  • 三歳のプードルを飼っていますが、注射の時等 全然痛がりません(と言うか、殆ど気付きません)。最近、生後二ヶ月のポメラニアンも飼い始めたのですが、この子は初めての予防注射の時にすごく痛そうに鳴きました。年齢が若いからですか、それとも種類によって我慢強さにも違いがあるのですか?


    ある程度は犬種によって 我慢強かったり 強くなかったり、度胸があったり無かったりと 特徴付けられる傾向はありますが、個体差もありますから一概にプードルが我慢強く、ポメラニアンが我慢強くないとは言えないと思います。只、ある程度自信を持ってお答えできる事は、犬にとって注射の針が正常な皮膚(ワクチン接種なら恐らく背中のどこか)に刺さっても 実質的な痛みは殆ど感じないだろうと言う事です。私がよく例え話にするのは、避妊や去勢の手術をした場合、腹部を数cm切開し縫合するわけですが、殆どの犬は麻酔からさめると 普通に歩き回ります。人間なら麻酔からさめると 恐らくかなりの苦痛を感じて、身体を起こすどころか寝返りを打つ事さえ相当に辛い思いをするでしょう。即ち、犬は人間に比べてある意味幸せな事ですが、痛みに対してかなり鈍感に出来ているわけです。
    勿論 大げさに反応する犬は少なからずいますが、それは注射の痛みに対する反応と言うより、「自分の見えないところに何かされる」と言った必要以上の警戒心であったり、以前に背中の皮膚をつかまれた直後に嫌な経験(例えばすごく痛い思いをしたり、恐い思いをしたり、驚いたり)があると どうしても過敏に反応してしまうのでしょう。
    年齢の違いによる痛みに対する感じ方に特に違いがあるとは思いませんが、年齢を重ねた犬の場合、過去の予防注射や怪我、病気の治療等を通じて、動物病院に入る事や診察台にのせられる事自体に恐怖心や嫌悪感を抱いているかもしれませんから、かえって幼くて経験や知恵のない子犬の方が、落ち着いていられるかもしれません。
    結局、犬が予防注射のときに平然としていられるか否かは、種類や年齢にはあまり関わりなくて、犬が飼い主さんを尊敬し信頼しているか否かによると思います。基本的に犬という動物は依存心が強いので、自分が心から信頼している飼い主さんと一緒にいれば「何かあってもリーダーである飼い主さんが自分を守ってくれるだろう」と考えて落ち着き リラックスした状態でいられます。そんな状態で注射されても殆ど何も感じずにすむわけです。ところが、犬が飼い主さんを信頼していない場合、「自分で何とか対処しなければ」と考えるでしょう。だから緊張した状態で何をされるか解からない恐怖心と戦わねばなりませんから、些細な事にも大げさに反応してしまうのだと思います。ですから、飼い主さんが犬から尊敬される存在であるように心がけてください。尊敬されなければ、信頼もされないのは人間関係と同じだと思います。犬と接するときに、勿論遊ぶときには一緒に楽しい時間を過ごせば良いでしょうが、悪い事をしたりルールを守らなかったときには厳しく叱ってあげましょう。そして、その悪い事しないで辛抱できたり、ルールをきちんと守ったときには大げさな位に褒めてあげましょう。そのような経験をつむ事により、犬は飼い主さんを尊敬し信頼して自分のリーダーとして認知します。
    人間関係でも同様ですが、相手に信頼されてリーダーと認められる為にはそれなりの努力が必要です。