ヨークシャーテリア(雌、避妊済み、10歳)が、歯肉炎が原因で右頬に穴が開き、失明の危険まであると病院で言われました。治療の為に麻酔をかけて歯石除去する事をすすめられましたが、この子は2歳で避妊手術をした時 麻酔が安定しなくて手術が難航したと聞いています。10歳になった今、麻酔をかけての処置は、なおさら心配です。失明も可哀想ですが、命に関わるかもしれない麻酔をかけての歯石除去をするべきでしょうか?


ヨーキーは歯石の付着し易い犬種ですから、5~6歳を過ぎると定期的な歯石取りをおすすめするケースが当院では多いのですが、10歳まで一度も歯石取りをしていなければ、かなり大量の歯石が付着していて、口臭もひどいのかもしれませんね。上顎の犬歯は根っこが深くて、その最深部は目の直ぐ下のあたりに位置しますから、恐らくその当たりまで歯石が侵入して周囲の組織を破壊して頬の皮膚が破れて穴が開いてしまったのでしょう。その影響が目の周囲に及べば、その先生の仰るとおり、失明の可能性も低くはないと思いますし、根本的な解決策は歯石の除去と言うか、その犬歯を抜歯してその周辺を清潔にする処置が必要なのだろうと推測します。心配されている麻酔についてですが、体質的に麻酔が安定してかかりにくい子が数パーセントいるのは事実ですし、そのような子は数年経って同様に麻酔をかけた場合でもやはりてこずったケースは少なくありません。ですから、飼い主さんのご心配が的外れの取り越し苦労ではないと思います。年齢を重ねて、心臓や肝臓の機能がより低下しているかもしれませんからむしろ危険性は高まっているのかもしれません。(麻酔をかけての処置を進められているから 当然心臓の状態や肝機能などの再チェックは当然済まされて、それ程悪い状態ではないことを確認されていると思いますが)
但し、避妊の手術の場合は1~2時間位安定した状態を保つ為にある程度深い麻酔をかけますが、今回の処置の場合は正味10~15分位開口状態を維持する程度の浅い麻酔で十分だと思いますから、身体にかかる負担はずっと小さいかもしれません。ましてや既往歴や年齢を考慮して不測の事態に対する準備も万端整えた上であれば、かなり安全性は高いと言えるかもしれません。そして、このまま放置した場合、失明の心配もありますが、更に状況が悪化すれば咀嚼や嚥下がスムーズに出来なくなったり、細菌が血液に侵入して全身に回る状態(敗血症)になればそれこそ命に関わってくる可能性も そこそこありそうに思います。以上の事を整理すると、確かに麻酔をかけて歯根部の根本的治療を行うのには少なからずのリスクがあるだろうと思います。但し、根治療法をしない場合、命に関わる状況に悪化する可能性も低くはないと推測されます。ですから、飼い主さんの心配な気持ちを先生に伝えて、納得いくまで話し合われれば良いと思います。正直な所、このような状況で、私が相談された場合、100パーセントの安全は勿論保障できかねますが、積極的な方針を選択される事をおすすめする場合が多いかもしれません。理由はもし残念な結果が出たとしても 飼い主さんが御自身を納得させて立ち直られるまでの時間が消極策を選択された場合より短いように思うからです。いずれにしても、一生懸命に考えて出された飼い主さんの結論が、結果に関わらず全て正しいと私は思います。

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