1月12日 負傷した猛禽類が来院しました

 夕方 「こんな鳥でも診てもらえますか?」と男性がタオルにくるんだ猛禽類 詳しい種類は分かりかねますが嘴と眼光の鋭さは恐らく鷹の幼鳥であろうと思われます。自分の家の駐車場で何かが激突したような音がしたので様子を見に行くと その鳥がうずくまっていたそうです。出血しているみたいなので取りあえず診察台で羽を広げてみました。なんと右の羽の第一関節と言っていいのかどうかわかりませんが最初の関節から先がそぎ落とされたように無くなっていました。

 この鳥は勿論一生飛ぶことはできません。一時的な負傷で傷が治れば自然に返してあげられるのなら 先の見込みが立ちます。この鳥は恐らく成鳥にはなっていない巣立って間もない位の若い鳥だと思います。まだ上手く飛べなくて駐車場に激突したのでしょう。そして鳥にとって最も大切な羽の半分を一瞬にして失ってしまったのだと思います。

 当院では野生動物を連れてこられた場合 一般的な治療は無料でさせて頂きます。但し、基本的に面倒をみるのは連れてこられた方に責任を持ってお願いします。きちんとした面倒が見られないのなら 可哀そうでも元いた場所に放置することをおすすめしています。この子の場合羽を失った部分は骨がむき出しになっていましたから この先面倒をみるのなら突出している骨を除去して皮膚を縫合する手術が緊急に必要になります。

 私はこの鳥を連れてこられた方に尋ねました。「この子は治療して自然に返すのは不可能です。負傷した傷の手当はできますが、一生飛べないので今後ずっと餌を与えて面倒をみていかなければなりません。責任を持って面倒をみていけるのなら治療させて頂きますが 無理なら元の場所に戻すことをおすすめします。どうされますか」連れてこられた方は慎重に考えられて 面倒をずっと見ていくのは無理であると決断されました。

 賢明な選択だったと思います。何しろ猛禽類ですから 負傷しているとはいえその爪の鋭さとつかむ力の強さ、手袋をしていないと手が傷だらけになります。嘴もすごく鋭くてその攻撃力も半端ではありません。性格的にも人間との生活に馴染めるのかどうか疑問です。餌は生の鶏肉で多分代用できると思いますが、人間から与えられた肉を食べてくれるかどうかは疑問です。

 元の場所に放置すれば遅かれ早かれ飛べない鳥は猫の餌になるしかないのかもしれませんが この子の寿命は駐車場に激突して羽を失ったときに尽きてしまったと考えるしかないように思います。当院で引き取って面倒をみることは物理的には可能ですが このようなケースの度に動物を引き取っていてはただでさえ手狭な入院スペースが足りなくなり動物病院としての役割を十分に果たせなくなってしまいます。連れてこられた鳥にとっては残酷な結論ですが 甘んじて受け入れざるを得ないのが現実だと思います。 

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