8月12日 ハリネズミが来院しました

夕方に電話がかかってきて ハリネズミの診察、治療が出来るか尋ねられました。最近は ハリネズミやハリモグラ等のとげとげした小動物がペットとして人気が出てきているようですが これまでに治療したのは 三件だけです。勿論哺乳類ですから 基本的な事は犬猫と共通する部分が多いはずですが 何しろ全身が固い針で覆われていますから かなり扱いにくいですが 結構小さいので タオルでくるんでしまえば これまではなんとか捕まえたり診察したりできました。
主訴は皮膚にダニが寄生しているのを 目視で確認できたので 何とかしてほしい と言う事でした。これまでに診察したハリネズミは 外傷や下痢などが主訴でしたから 基本的に犬猫と同様の治療でなんとか乗り切って来られました。体の表面に寄生するダニの類であるとしたら これも犬猫とほぼ同様の治療でなんとかなりそうな気がしますが これまでに体の表面に寄生するダニの治療は 経験が無い事を正直に飼い主さんに話すと 他の病院を当たってみる と言う事でいったん電話が切れました。
しかし三十分後ぐらいに再び電話がかかってきて 他に数件の動物病院に電話をかけてみたが 何処でもハリネズミを診察したことがない と言う事で断られたので やっぱり当院で診察してほしい と言う事でした。当然ですが 何事でも初めての経験は 不安であり どうしても消極的になりがちですが 思い切ってチャレンジしてみない事には 経験とそれに伴う知識が増えていきません。初めてのハリネズミは 前足に外傷があり 出血している と言う事でしたので 正直あまり自信はありませんでしたが 診察を承諾しました。
その飼い主さんは 割とハリネズミを飼う事に慣れていました。普通ハリネズミは 知らない場所に行くと 体を丸めて 針で覆われたボール状になって がっちりとした防御体勢を取ってしまいます。一旦その姿勢になってしまうと 殆ど触れないし 当然患部の様子を見る事すら難しくなってしまいます。しかしその飼い主さんは軍手の手袋をはめて 上手にハリネズミの丸まっている体を伸ばして 患部である前足を 触れるような状態にしてくれました。
直系三ミリぐらいの 丸くすりむいたように皮膚が欠損して そこから出血していました。取り敢えず傷口をきちんと消毒して 抗生物質の軟膏を塗布しました。飼い主さんによると 家でも何とかこの体勢にはなれるので 二人がかりでやれば 消毒して軟膏を塗布する作業は 一日に一回ぐらいなら 出来るだろう と言う事でしたので お願いすることにしました。念のため内服薬として 抗生剤と消炎剤を渡しました。食欲は普通にあるみたいなので フードに甘くて口当たりのいいシロップをふりかけてもらう形で 投与してもらう事にしました。この子は かなりの暴れん坊みたいで その後も同様の外傷で 再び来院されましたが 初めての治療は 手こずったけれども 順調に傷口が回復したのだそうでした。
本日のハリネズミは ダニが皮膚に結構な数寄生している と言う子でしたので 取り敢えずは 診察しようとしましたが 非常に怖がりな性格みたいで そっと触ろうとしただけで 殆どボール状に丸まってしまい 威嚇するための唸り声をあげ続けていました。特に顔の周りの皮膚がピンクになっているのが 心配だと言う事でしたので ある程度体を広げないと全然診察できませんが 今回の飼い主さんは 怖がってしまって 自分から ハリネズミに全然触ろうともしません。初めてその子に触る私が あまり力ずくで体勢を変えさせるのは 心配でしたし 飼い主さん自身が凄く消極的でしたので 私としても強引に体に接触するのは止めておきました。
ダニを駆除するのは 犬猫のダニ駆除剤が 恐らくは有効であるだろうとは思いますが ハリネズミに投与したことはないので 効果がどれだけあるのか とか予期せぬ副作用の可能性も 殆ど未知数であることを 飼い主さんに正直に説明しました。犬猫の外用薬を フェレットやモルモットに投与して 同様の効果が得られた経験はありますが フェレットたちは皮膚や毛の生え方が 犬猫と類似していますから 同様の効果が得られることは かなりの確率で予想できました。しかしハリネズミの場合は 毛ではなくて針が皮膚からびっしりと生えているので 皮膚の状況が犬猫とは かなり違う事が予想されます。犬猫同様にスムーズに薬が全身に広がり毛穴に侵入するのかどうか 全く予想できません。
勿論ハリネズミなどの特殊な動物を専門に診ている病院なら 正確に予測がたつのかもしれませんが 初めてなので正直手探り状態での治療になりますが 勿論飼い主さんの同意を得てから あえてチャレンジしてみることにしました。本日の治療が上手くいけば 私の体験地と知識量が増しますから 今後ハリネズミを治療するときに役立つので 是非上手く治療効果があがって ダニの駆除が上手くいってくれることを期待します。
あまり臨床経験のない動物の場合 正直不安な気持ちにもなりますが 上手くいけば自分の経験値をあげられますので これからもどんどんチャレンジしていこうと思いました。

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