10月30日 困った飼い主がやってきました

本日初めて シャンプーカットをさせてもらった犬がいました。五歳のマルチーズでしたが しつけが全くできていなくて 最初から吠えまくり暴れまくって トリマーさんが手を焼いていました。トリマーさんが手を咬まれたりしたら 仕事に差しさわりが出てきますので 私が犬と対決することになりました。まずは完全に咬みつこうとする体勢の犬をひっつかまえて 頭をよく狙って引っ叩きました。その犬は生まれて初めて 叱られることを体験したのかもしれませんが かなり頭の良い飲み込みの速い犬だったみたいで 直ぐにこの病院内での上下関係を理解できたみたいです。

つまり少なくともこの病院内では この太ったオッサンの方が強くて偉いみたいであり 取り敢えずはこのオッサンの言う事を聞いておく このオッサンの顔を立てておく方が 自分にとっても得策であるらしい と言う事をたった一度引っ叩かれただけで理解したみたいでした。これまでは全くしつけを受けていなかったので 自分が世界最強であり 世界で一番偉いと勘違いしていましたが どうも世の中広いみたいで 自分よりも強い奴、恐らく自分よりも偉い奴がいることを初めて学習したみたいでした。

犬という動物は必ず自分の周囲の存在に格付けをします。即ち 自分より下にランク付けした相手に対しては当然偉そうな態度を取りますが逆に自分よりも上にランク付けした存在に対しては 一定の敬意を払いそれなりに従順な態度を取ります。ですから 少なくともこの病院内では この太ったオッサンには従わざるを得ないと判断してくれたのだと思います。

私に対してある程度従順な態度に豹変しましたから トリマーさんに引き渡してしばらくは私が見守っていました。トリマーさんに対しては どのような態度に出ればいいのか躊躇していたみたいでしたが 反抗的な態度を取ろうとしたら 私がそばによって威圧しましたから 仕方なくなのかもしれませんがトリマーさんの言う事も聞くようになってくれました。

そんなことがあった結果 何とか可愛らしくカットが出来上がりましたので 飼い主さんが迎えに来られた時に 一応事の顛末を報告しました。恐らくこの犬は飼い主さんに対しても傍若無人の振る舞いをしていることが想像されましたから この犬に対して毅然とした態度で接すれば 賢い従順な犬になることを理解してもらおうと思って話したのですが あいにく飼い主さんには全く理解して頂けませんでした。飼い主である自分が手をあげたことさえない大切な犬を引っ叩かれたことで 頭に来てしまったみたいでした。

「この病院は動物を虐待するひどい病院だ。二度と来るもんか」と言って帰って行きました。私にすれば少し大変かもしれないけれど キチンと躾けさえしてあげれば従順で賢い犬と暮らせることを理解してもらいたかっただけなのですが 残念ながら私の気持ちは全く理解してもらえませんでした。最初に犬を預かる時に飼い主が「この子は抱かれることが嫌いなので 抱こうとすると咬みつきますから気を付けてください」と言っていました。

でも半日しか一緒にいなかった私にその犬は喜んで抱かれていたのです。犬は依存心の強い動物ですから 自分の信頼する相手には進んで身を任せます。抱こうとすると咬みつく相手には 信頼する気持ちが全くないわけですから そんな不安な環境でこれからもずっとすごさなければならない その犬がすごく可愛そうに思いました。

恐らくその飼い主さんは うちの病院の悪口を近所で言いまくるでしょうから また患者さんが少なくなってしまうかもしれませんが 私としては飼い主さんと犬の為に良かれと思ってした行動ですから 別に後悔はしていません。あと数年こんな嫌な思いをしながらでも仕事を続けねばなりませんので 大好きな乃木坂の映像でも見て気を取り直そうと思います。大好きなナーちゃんの顔を見ればきっと心も晴れ晴れとするでしょう。

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