4月6日 犬の後肢の先端を切断する手術を行いました

夜遅くに電話がかかってきて 迷い犬を保護したのだが 後肢の先が潰れたような状態で 出血が止まらないので直ぐに診て欲しいとのことでしたので 来院して頂きました。犬種は恐らくミニチュアピンシャーだと思われますが 車の中でフリーの状態でしたので パニック状態と言う事もあり 捕まえて車から降ろすところから かなり苦労しました。保護して連れてこられた方は 勿論飼い主さんではありませんから 興奮状態の犬を下ろすことはできないので私が捕まえて診察台にのせる所から始めなければなりませんでした。
小さな犬なので 皮手袋をはめてしまうと 余計に捕まえにくそうなので バスタオルの二枚重ねにしたもので くるむことにしました。運転席の下に潜り込んでしまい 後部座席の足元に顔を出していましたので 運転席の方から お尻をつついて 上半身が足元に出てきたところを タオルでくるんで包み込んでしまい 何とか引っ掴まえました。病院に着くまでにも かなり動き回っていたらしいのですがその為に車の中は血だらけになっていましたから 掃除して血の臭いが消えるまで 相当に嫌な思いをしそうでした。自分の飼っている大切なペットのために そんな状態になってしまったのなら 納得できるし 諦めもつくのでしょうが たまたま見かけて 保護しただけの犬のおかげで 車の室内が血まみれになってしまったのですから 落ち着いてから相当後悔されるのかもしれません。
取り敢えず診察台にのせて 体重を量りました。五キロぐらいあり顔をタオルから出して犬種を確認すると 恐らくミニピンらしい風貌でした。顔に白髪がかなりありましたし 黒目の部分の白内障も相当に進行しています。歯石の付着状態から判断しても 相当な年齢のようでした。聴診器をあてると 心雑音が多少聴き取れましたが、外見から判断して十歳以上の年齢と予想されましたから 多少の心雑音は致し方のない事の様に思いました。
出血している右の後肢の様子を見ると 足の先端部分が 強い力で引きちぎられたようになっていて 肉球のある部分は完全に消失していました。どのようなことが原因でこのような状態になったのか サッパリ分りませんが 動脈が損傷しているみたいなので ぼたぼたと出血が続いています。年齢も高そうだし かなり衰弱していて体力的にも心配でしたが とにかく早急に動脈を結紮して 出血を止めて 突出している骨を除去して 引きちぎられたような無残な皮膚を成形して縫合してしまう手術を直ぐに実施する必要があるみたいでした。
その場合当然少なからぬ治療費が発生しますので 飼い主さんが見つかればその方に請求しますが 万が一見つからなければ 連れてこられた方に治療費の支払いとともに 今後の面倒をみることを了解してもらわなければなりません。勿論連れてこられた方も あくまで善意で 死にそうな犬を見つけてほっとけないという 優しい気持ちからの行動だとは思いますが 病院で それもかなり厄介な手術をしなければ 命に関わる状況であることなどを 説明して 了解してもらいました。
既に深夜ではありましたが 奥様を呼び出してすぐに手術の準備を整えて 足の先端を余分な骨と筋肉を切除して 出血している動脈を結紮して 皮膚を縫合できるように成形してから 何とか縫い合わせる手術を行いました。足の骨は凄く固くて 骨切ばさみが破損しそうになりましたが 何とか皮膚を縫合できる長さにまで 切断しました。動脈の損傷している部分が 筋肉の中に埋まっていましたので その周囲の筋肉ごと二回結紮したら ようやく出血が完全に止まりました。最後に皮膚の縫合を行いましたが どうしてもかなり強く皮膚同士を寄せてから縫合しましたので 抜糸を慎重に行わないと 縫合した部分が弾けてしまいそうで心配な状態です。後肢の先端が患部ですから どうしても大きめのエリカラーが必要になりますので 生活に支障が出にくい様に工夫して装着しました。
取り敢えずは 必要な処置が終わりましたので 点滴を皮下に投与して 抗生剤や大量に出血していましたから 造血機能のある臓器を刺激してせっせと血液を作ってくれることを期待する薬などを一緒に投与して 当面必要と思われる処置を終えました。手術の麻酔をかける前までは 勿論極度の興奮状態にあったからかもしれませんが かなり扱い辛そうな犬の様に思われました。毎日の傷口の消毒と薬剤の塗布は 必要なのですけれども 大人しく処置させてくれればよいのですが かなり手こずるのかもしれないことが心配です。まあ それは明日になって 精神的に落ち着いた時の状態で判断するしかないでしょう。
深夜に大変な手術をお手伝いいただいた奥様には かなり負担をかけてしまいましたが それなりの治療費を頂きますので 何かおいしいものでも沢山ご馳走して ご機嫌を直して頂きましょう。取り敢えずは 死にかけていた犬を救えたようなので 頑張った甲斐があったように思います。上手く飼い主さんが見つかることを祈るばかりです。

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