4月9日 蝙蝠が外傷で来院してきました

現在はいろんな動物がペットショップで販売されていますから 正直な所 初めてご対面するような種類の動物も 極たまにはいます。連れてこられた蝙蝠は 勿論野生のものでした。事情を尋ねると 早朝に釣りをしていたところ 虫がその場にたくさん飛んでいたらしくて どうやらその蝙蝠は 虫を捕食するのに夢中になって 人間との距離を縮めすぎたので 運悪くキャスティングする釣竿と接触してしまったようなのです。何かが釣竿と接触したのが感知されたので まだ薄暗い時間帯だったのだそうですが 辺りの様子を窺ってみると 地面の上で 傷ついた蝙蝠が転げまわっていたのを発見したのだそうです。
その方が 心優しい人だったみたいで タオルでくるんで保護したのだそうです。明るい所で観察してみると 片羽根の付け根の辺りに五ミリほどの切り傷があり そこから出血しているようで そちらの羽根の動き方がおかしく見えたので 治療してもらおうと病院を探したのだが 何件がの病院では 蝙蝠は診察できないと断られて かなり遠方にある当院に電話してやって来られたみたいでした。何しろ釣りをしていたのが琵琶湖なのだそうですから 驚いてしまいました。
蝙蝠を診察する機会なんて 極ごく稀なケースだと思います。断った病院の先生は 治療の経験がなかったから断ったのかもしれません。正直な所 私も蝙蝠の治療の経験は 数年前に一二度ある位です。その時も やはり外傷を負った蝙蝠が保護されて 連れてこられました。その時の子は かなり気の荒い性格だったのか 負傷して人間に保護されたために 一時的に気が立っていただけなのかよくわかりませんが 診察して治療するのに かなり手こずったことを覚えていましたから 今回の子もかなり暴れてくれることを覚悟していました。
所が 本日来院した蝙蝠は まだ巣立って間もないのかもしれませんが 隊長が十センチもなくて 体重はほんの五グラムほどです。外傷を負った時のダメージが大きかったためか タオルにくるんで保護した時も 殆ど暴れなかったのだそうですが 診察した時もかなり大人しかったのです。体力が消失しているのならそれはそれで深刻な問題です。何しろ小さな体ですから 蓄えている体力も微々たるものでしょう。とにかく何かを食べさせなければ 衰弱して死を待つばかりです。
基本的には 虫を主食にしているはずですが 販売されていてコンスタントに入手できる虫の類 例えばコオロギやミルワームなどは 大きすぎて と言うか蝙蝠が小さすぎて餌には出来ないでしょう。肉食系統の動物ですから ひき肉あたりなら 食べてくれるのかもしれませんが 自信を持っておすすめも出来ませんでした。兎に角面倒をみるにしてもあまりに体格が小さいので 凄く難しそうに思います。病院での治療としては 抗生剤と消炎剤を注射で投与して 傷口を消毒して抗生剤を塗擦しました。内服薬の投与は難しそうでしたので 取り敢えずは外用薬だけ渡して 一日二回位傷口の処置をしてもらう事にして 帰って頂きました。
現実的には 元気に回復してくれる可能性は かなり低いようにも思われます。しかしせっかく病院に連れてこられた方の優しい気持ちが何とか報われて 与えた餌を食べ始めてくれて 傷口の回復も順調に進んで 無事に自然に帰してあげられる日が来ることを祈るばかりです。

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