9月5日 ここの所 腫瘍の摘出手術が続いています

正直な所 手術の予約が続けて入ってくれるのは 病院としては 確実な売り上げになりますから 有難いことです。手術と言ってもいくつかのジャンルに分かれます。うちの病院で一番多いのは 犬猫の避妊、去勢の手術です。これは望まれない形の妊娠、出産を未然に防ぐためであり 副産物的には性ホルモンの関与する病気 女の子にできる乳腺腫瘍や男の子に発生する肛門の周囲にできる腫瘍等を未然に防ぎますし、雄雌の本能的な行動が治まりますから 性格が穏やかで躾しやすくなったりしてくれます。この手術は原則として 割と若い年齢で実施することが多いですし 健康体の動物で手術することが殆どなので 割と気楽にできる手術です。
勿論全身麻酔をかけて行う手術ですから 死と隣り合わせの状況下で行う と言う意味ではほかの手術と変わりありませんし、細心の注意を払って 全身全霊で取り組む姿勢はありますが 件数が多い分経験値も高いし 出血も相当に少なくて済むので それほどしんどい手術ではありません。
避妊、去勢に次いで件数的に多いのが 腫瘍の摘出手術です。皮下にできている腫瘍の場合は ある程度視覚的に腫瘍の大きさや形を想定して そろえる手術器具等の準備や 心の準備 と言いうか手術に対する覚悟ができやすいので まだ取り組みやすいのかもしれません。レントゲンなどで 腹控内に見つかった腫瘍の摘出手術の場合は お腹を開けてみないと 腫瘍の大きさや それを取り巻く状況 血管の分布などが正確に把握できませんから その分不安な気持ちで手術を始めざるを得ない場合は 正直気の重い手術になります。
このブログには何度も書いていますが 腫瘍の摘出手術は 血管の分布密度の高い部分を切開しますから どうしても出血量が多くなってしまいます。わざわざ摘出する腫瘍は その生体にとって 迷惑な存在だから摘出します。迷惑なお邪魔虫であるはずの腫瘍ですが 殆どの場合 腫瘍のできてしまった体からは VIP待遇を受けてしまうのです。体にとっては困った存在であるにも関わらず 太い血管が張り巡らされて 腫瘍が成長するための栄養分をたっぷりと送り込まれてしまうのです。その為に腫瘍はすくすくと成長してしまうのです。ですから 手術は病院の仕事でも とても大切な事の一つですが 正直な気持ち 億劫であまり積極的にはやりたくない気持ちになってしまいます。
勿論仕事ですから 手術するべき状態の患者さんには 手術することをお勧めしますし 飼い主さんが手術する気持ちになって 依頼を受ければ 喜んで手術に立ち向かいます。ここの所 連日腫瘍の摘出手術の予約が入りましたので 有難いことはこの上ないのですが 本当に神経を使いますから 疲れてしまいます。還暦まじかの老人としては 結構きつい仕事なのです。でも手術しなければ 腫瘍がそのまま成長してしまうと その動物自身が非常に苦痛を感じて苦しみながら死に至る場合も多いですし ペットの苦しむ姿を見て 飼い主さんもまた凄くつらい思いをされますから 腫瘍が悪性であることが分れば少しでも早く摘出することが 必要なのです。
病院の仕事はアトランダムに発生するはずですが 何故か 似たような仕事が立て続けに重なってしまうように感じることがままあります。下痢や嘔吐を繰り返す患者さんが 一日で三件位立て続けに見えたことがあります。猫の避妊の手術を一日に二件 一日おきに都合六件こなしたこともあります。交通事故に遭った犬を朝一番と病院を閉めかけた時間に治療したこともあります。続けて仕事をすると 印象に残るので たまたま覚えているだけの事だとは思いますが 年齢を重ねていくと 回復するのに時間がかかることを実感してきました。やはり仕事を引退すべき時期が近付いているのかもしれません。仕事をしていて 年齢による衰えから 取り返しのつかないような失敗をしてしまう事だけは 絶対に避けたいので ある程度余裕をもって 退職に向けての活動を始めていこうと考えています。
繰り返しますが 手術の予約が続けて入ったことに 泣き言を申し上げているわけではありません。有難いことだと感謝しております。ただしんどい手術をした後の回復に時間がかかることで 年齢を実感させられたことに 悲しい気持ちになってしまったと言う事の報告でした。

ブログ一覧