9月9日 不愉快な飼い主が来院しました

まあどんな仕事をしていても やりがいが感じられて 楽しい気持ちになることもあれば 上手くいかなくて 虚しかったり腹立たしかったりすることはあるものだと思います。特に病院の仕事の場合は 治療などが上手くいって 飼い主から感謝されて充実感を味わえることもありますが いい結果が出なくて 恨まれたり 文句を言われたりして 不愉快な気持ちこの上ない時も残念ながら時々あります。
今回の飼い主は 我儘極まりなくて こちらの説明に全然耳を貸さないのです。先月ペットショップから購入した翌日に やってきました。生後二か月のトイプードルでしたが 体重が500グラムもないのです。私は第一声として この犬を返却してお金を返してもらうことを勧めました。あまりにも成長が遅くて とても普通の健康体には育たないであろうと 予測されたからです。そんな私のアドバイスを全く無視して ワクチンの接種をその飼い主は希望しました。ワクチンを接種することは 弱めてあるとはいえ病原体を体内に注入するわけですから それなりに体にストレスがかかります。ですから 昨日うちに来たばかりの時期には ワクチンを接種すべきではないのです。少なくとも一週間 出来たら十日間ぐらいして新しい環境に慣れてから 新しい生活が落ち着いてからワクチン接種すべきなのです。ましてやこの犬は 成長が凄く遅れていて 体力的にも かなり神経質そうでしたから精神的にも 新しい環境に馴染むのにも時間がかかりそうな様子でした。
私は当然 ワクチン接種はまだ慌てる必要がない時期なので 一週間ぐらいして家に慣れて落ち着いてからにすることを勧めましたが この私の忠告も全く無視されました。「こんなに小さいのにワクチンをうっておかないと心配だから どうしても今日ワクチンをうってくれ」というのです。私が出直すことを再度勧めると 「もし出直すまでに病気になってしまったら責任をとってくれるのか」とまで言われましたので 私も面倒になりましたから それでもきちんと診察をして その日にワクチンを接種しました。環境が変わったばかりだし 体力的にも相当に乏しいはずなので 特に本日中は気を付けて犬の状態を観察するように言いましたが どの程度聞いてくれているのか 不安ではありました。
案の定というか 予想通りに 犬が下痢をして 血が混じっているから診て欲しいとその飼い主から 電話がかかってきたのは 二日後でした。元々成長が凄く遅れていて 基礎的な体力が劣っていう上に 環境がガラッと変わってしまって 大きなストレスを受けている中で 更にワクチンによるストレスまで加わりましたから ある意味当然予想された結果でした。来院した時にその辺りの事情をもう一度きちんと説明しました。黙って聞いていましたから 一応は理解してくれたのだと思いました。
診察して 便の状態を観察したうえで検査しました。その時に腸の断面図を紙に書いて解説して 下痢したことを切っ掛けに 腸の壁面の粘膜構造が剥がれ落ちて血管層がむき出しになってしまい そこからの出血が便に混じって血便になったのであろうと 事の経緯を推察して 分り易く説明しました。その為に治療の目的は 腸の壁面を修復することと傷のダメージの回復を速やかに進めること、そして細菌による感染を防ぐこと、更に現実に出血しているわけですから 血液の凝結作用を促して出血を押さえる事であると 事細かに説明しました。
その為に具体的には 消炎剤や抗生剤、止血剤などを混入した点滴を皮下に投与しました。更に飲み薬として腸の壁面の修復を目指して収斂剤や止血剤、抗生剤などを混合した飲み薬を渡して その内容や目的まで説明してから 飼い主に手渡しました。その時点での血便は 二三日で治まったことを後に来院した時に確認しました。
そして一月後に二回目のワクチン接種にその飼い主が来院しました。初めて来院した時に その子の月齢としては 成長が非常に遅れているので 一日に四回 満腹になるまで 品質の良い子犬用のフードを与えるように指示しました。指示を守って給餌していれば ひと月で体重が二倍ぐらいに増えているはずなのですが 体重はひと月前よりわずか二割しか増えていませんでした。一日に四回満腹になるまで給餌したのかと尋ねると 勿論その通りにして 非常によく食べ 状態のいいウンチをしている、と飼い主は答えました、その時点で飼い主が嘘をついていることは明らかでしたが その点を追及して 飼い主と喧嘩をしてもしょうがないので 取り敢えずは念入りに診察しました。一回目のワクチンで血便をしたのですから 慎重に対処しなければなりません。相変わらず成長が凄く遅れている問題は ひと月前よりもさらに深刻化していましたが それ以外は問題が見つかりませんでした。給餌に関して 信憑性に欠ける返答をしている飼い主に ここ数日とその日の体調を確認しましたが すこぶる元気だし 食欲も旺盛だし 家にもすっかり馴染んでくれていると答えました。
こちらとしては 飼い主の言葉を信用するしかないので 正直不安な気持ちを抱えながらも 二回目のワクチンを接種しました。しかしざんねんながら その不安が的中して またもや二日後から血便が始まったのだそうです。朝の七時ごろに電話をかけて 大騒ぎをしていました。直ぐに病院に連れてくるように言いましたが 本人が元気なので様子を見る と飼い主が主張しました。来院する気のない飼い主には対応しようがないし 一体何のためにそんな朝早くから電話をかけてきたのか その意図が理解できませんでしたが 午前中でも夜の診察時間にでも 心配なことがあればすぐに来院するようにとだけ伝えました。
その日診察時間中に来院するのかと気にかけていましたが 結局は来院しませんでした。そして夜十時を回ったころに電話がかかってきて 血便が治まらないので今から診て欲しい と言う要件でした。
朝一で電話をかけてきて 診察時間中に来院するようにアドバイスしておいたのに どうしてこんな時間に電話をかけてくるのか 理解できませんが 仕方がないので来院するように指示しました。こちらとしては 時間外に来院してくれれば 時間外対応料金も頂きますから 有難いことではありますから すぐに病院に降りて治療の準備をしてから シャッターを開けました。
診察すると 前回よりも身体状況が思わしくなさそうな気配を感じましたから 血液の検査をしようかと思案していましたが 飼い主が食欲元気ともにあるし便も血が混じっていること以外には普通だしおしっこも普通に出ているので 前回と同じ治療をしてくれ と要求してきました。
何しろ自己中で我儘極まりない飼い主ですから 意にそぐわない検査など勧めてみても 断られるだけで こちらも正直むかついた気持ちがありましたから 喧嘩別れになるのも馬鹿らしいので 飼い主の要求に従う事にしました。基本的に前回と同じ治療 つまり点滴に薬を混入して投与し 飲み薬も前回と同じものを出しました。それで飼い主は納得して帰ってくれました。所がその後深夜の三時過ぎに再び電話が鳴ったのです。
その飼い主からで 前回だした薬と違うから すぐに作り直してくれと主張するのです。今から直ぐにいくので作り直せ と言うのです。そもそも薬は朝から飲ませるように指示を出していましたし、前回処方した薬は カルテに書いてありますから 間違えるはずがありません。百歩譲って私がうっかり間違えていたのかもしれませんが どうして深夜の三時に対応しなければならないのでしょうか。夜が明けて朝になってからでも 十分に対処できることのはずですので 私は明朝来院するように指示を出しました。その飼い主はまだ文句を言っていましたが 話してもしょうがないと判断して 相手の言葉が途切れた所で 電話を切りました。
その後も何度か同じ番号から電話がかかってきましたが 私は無視して電話に出ませんでした。翌朝になってから 来院するのかと思っていましたが やってきませんでした。私たちの仕事は患者さんが来院してくれて そのおかげで生計を立てていますから 患者さんは神様と言う気持ちが必要なのかもしれませんが 私はあまりにも理不尽な要求をする飼い主とは はっきりとした対決姿勢で臨みます。もし来院していても 恐らく喧嘩別れになっていたでしょうから 来院しなくて 正直ほっとしていました。
所が 夕方になって 又その飼い主から電話がかかってきて その犬がよその病院に入院したというのです。昨夜遅くにわざわざ出かけて治療されたのに こんなに具合が悪くなってどうしてくれるのか と文句を言い出したのです。昨夜は確かに前回とは様子が異なる気配を感じましたが 飼い主が一方的に前回と同じ状態だから 同じ治療をするように要求してきたので 飼い主の要求に従って治療しただけで その治療について文句を言われても 対処できないので 黙っていると 飼い主は調子に乗って更に文句を積み重ねてきました。こんなことなら昨夜のうちに治療する前に喧嘩別れをしておけばよかったと思いましたが 正直な気持ちを表現すれば 火に油を注ぐようなものでしたから こちらとしては飼い主の要求に従っただけで それ以上でもそれ以下でもない と突っぱねました。
獣医師でもないのに 勝手に自分で診断して 治療方法を決定して 強い口調でその事を要求してきたのが 自分であることを もう忘れてしまったのでしょうか。この仕事を続けている以上は 飼い主さんは神様と考えて こんな我儘放題の飼い主の言う事を 黙って聞いていなければならないのでしょうか。
結果的にはまあ予想通りの結末ですが その飼い主と喧嘩別れをしてしまいました。流行っている患者さんの沢山来ている病院の先生は もっと上手に対応されているのでしょうか。インターネットが普及してからは 病院の悪口なども 悪口専門の掲示板などに 飼い主が一方的に言いたい放題で掲載されているみたいです。恐らくこの飼い主も 一方的に自分の主張だけでうちの病院の悪口を垂れ流すのかもしれません。SNS辺りで 悪口を垂れ流すのかもしれません。
私は病院の評判が地に落ちても 自分の納得のいかないことに関して 例え神様扱いするべきかもしれない飼い主相手でも きちんと自分の意見を主張します。その態度が火に油を注いて更に悪口を増大させるのかもしれませんが きちんと主張すべきだと判断したら 言いたいことを発言してしまいます。私と対立したければ 何故面と向かって私と対決しないのでしょうか。陰に回って 悪口を垂れ流すなんて卑怯極まりないやり方だと思います。
あまりに飼い主の主張が頭が悪すぎて 筋が通っていない場合 呆れてしまって 開いた口がふさがらない状態になってしまって 言いたい放題を許してしまう事が時々あります。こちらが反撃しなければ 言いたい事を言い尽くせば気が済んでとっととかえってくれるからです。私はこのブログに何度も書きましたが バカは嫌いなのです。筋の通らないことを平気で主張する頭の悪い人間をみると 呆れ返ってしまってほとんど無反応になってしまい 相手に言いたい放題を許してしまう事があります。馬鹿と議論しても 終りのない水掛け論になってしまう事を経験してからは 反応しないでサッサと言いたいことを全部吐き出させた方が 早く退散してくれることを学習したのかもしれません。
最初にも書きましたが 仕事をしていれば 納得のいかない不愉快な事と遭遇するのは 当然なのかもしれません。あと数年辛抱すれば そんな仕事から解放されますから その日までは頑張らざるを得ないのかもしれません。バラ色の引退生活を夢見て 楽しくて充実感を感じられることも多いけれど 不愉快極まりない経験をすることもたびたびあるこの仕事と真摯に向き合いたいと考えます。

ブログ一覧