1月16日 超肥満猫のカテーテル挿入に失敗しました

夕方の外来で来院された雄猫が おしっこが出ない状態で 苦しんでいました。お腹を触ると暴行がパンパンに張った状態で 昨日から殆どおしっこが出ていないとのことでした。圧迫排尿を試みましたが 尿道が完全に詰まってしまっているようなので カテーテルを挿入するしか方法はなさそうでした。

年齢は三歳と若いし、心雑音が少なからずあって年齢の割にはかなり問題をはらんでいる心臓ではありますが カテーテルを挿入するための浅い麻酔を短時間かけるぐらいなら心配なく挿入の処置が行えそうでした。但し、体重が9.5キロもある超肥満体の猫ちゃんでしたので うまく挿入できるか不安はありましたが 麻酔をかけるために同意書にサインをもらって預かりました。

八時になったので病院のシャッターを下ろしてから その肥満猫の処置を始めました。まずは導入麻酔薬を筋肉注射して ある程度沈静したところで マスクをかけて吸入麻酔を始めました。普通はマスクのまま処置を始めますが 相当な肥満体なので手こずりそうだったので 念の為気管チューブを挿管してから仰向けに体を固定しました。

いざカテーテルを尿道に挿入しようとおもって おちんちんをつまみました。猫のおちんちんは先細りの形をしていますが しっかりと根元の方を捕まえるとその部分は若干細くなっていますので がっちりとおちんちんを捕まえられます。

所がこの猫ちゃんは 何度も書きますが超肥満体でした。おちんちんが体についた脂肪で埋まってしまっていて 殆ど体外に出っ張っていませんでした。通常サイズの猫のおちんちんは先端から根元まで1.5センチ位はありますからしっかりと左手の。指で捕まえられます。左手の指でしっかりとおちんちんを捕まえて カテーテルを右手に持って尿道の入り口から挿入を試みます。

所がこの肥満体の猫ちゃんの場合は皮下脂肪におちんちんが埋まってしまっていて三ミリぐらいしか突出していないのです。周囲の脂肪を押しのけておちんちんを引っ張り出そうとしましたが それでも5ミリぐらいしか出てきてくれません。先端の細くなっている部分ですから とてもおちんちんをしっかりと保定できる状態ではありませんでした。

私はその時点で もう無理だと判断して諦めようと考えましたが 奥様が何とかピンセットで捕まえて挿入できないかやってみようと提案されました。奥様が左手でおちんちんの周囲の脂肪を押さえつけて右手で先の細いピンセットを持っておちんちんの片端を保持しました。私も左手にピンセットを持って奥様とは逆の端を捕まえました。右手でカテーテルを持ち挿入を試みました。何とか先端が尿道に入りましたが一センチ位の所で引っ掛かって それ以上は進めませんでした。

超音波発振器で水圧をかけて何とか詰まっている結石を割ろうと試みました。何しろピンセットで辛うじて保持しているおちんちんですからうまくいく自信はありませんでしたが とりあえずやってみました。

直ぐに水が跳ね返されましたが 頑張って続けていると少しだけ超音波発振器が深くはいりましたので カテーテルの挿入を再度試みました。今度は三センチ位は挿入できましたが またそこから先は詰まってしまっていて うんともすんとも入りません。

もう一度超音波発振器を挿入して水を流し込みましたが 今度はそこから先に勧めそうな気配が感じられず 数分間にわたって頑張りましたが そこから先へは進めませんでした。この状態には さすがに奥様もなす術がないと諦められました。

しょうがないので飼い主さんに電話をかけて 正直に現状を説明しました。残念ながら当院としては精一杯の事を試みましたが うまくカテーテルを尿道に挿入できなかったことを報告しました。

次の方法としては尿道を体の外に縫い付けて そこからの排尿出来るように手術するしかないことを話しました。心臓の状態から手術にはそれなりのリスクが伴う事と手術がうまくいっても 排尿がうまくコントロールできなくなるので 日常の生活でかなり困った状態になることまで説明しました。

すると飼い主さんは別の病院で診てもらうことを選択されました。私としては出来る限りの事をさせてもらったつもりなので 飼い主さんが納得されるようにされればいいので迎えに来ていただいてお返ししました。

恐らくどこの病院に連れて行っても似たような結末になると思いますが 飼い主さんが納得されたらその後の治療法も受け入れられることだと思いますので 私としては実質的にお役にたてないまま終わってしまったことが残念であり申し訳ありませんが まあ致し方のないことなのだと思うしかないのだろうと考えます。

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