1月21日 安楽死について

昨夜 不愉快な電話が入りました。いきなり安楽死をしてほしいのだが 幾らかかるのか という要件でした。そんな言い方をする飼い主ですから 最初から断ろうと思いながら応対しておりましたら 苦しみだしたのは ついさっきからなのだそうで 年齢がもう十二歳だから いつ死んでも不思議がないので 安楽死をしてほしい という話でした。安楽死については 受け入れて 実施している病院もあれば 絶対に無条件でお断りの病院もあるみたいです。院長先生の考え方次第なのでしょうが 私は 飼い主さんやそのペットの状態を十分に把握したうえで 安楽死しか選択肢がないような状況の場合は 心ならずもその処置を実施するように心掛けております。
人間もそうですが あまりに大きな苦痛を訴えて のたうち回っているような状態で そんな病状に対して有効な治療法が見つからない場合には やみくもに長生きさせるよりも ペット本人と 飼い主さんの気持ちを思い量って 安楽死という苦渋の決断をする場合があります。具体的なやり方は 呼吸中枢に働きかけて 呼吸を速やかに停止する薬を 静脈注射します。スムーズにその薬を投与できれば 眠るように安らかに 心臓が停止してくれます。苦痛で暴れたりして 静脈注射が スムーズにできない場合は 苦労することもありますが 飼い主さんが上手に協力してくれれば 何とかやり遂げることができております。
但し 十分な問診や検査をして 回復する見込みが見つからない場合で それまでに飼い主さんがその子の治療に十分手を尽くされてそれでもいい方向に向かう可能性が殆どないと 私が納得した場合にしか 安楽死の要望を受け入れません。電話がかかってきた犬は まだ十二歳ですから 高齢犬の部類ではありますが 人間でいうと現在の私と似たり寄ったりの年齢なのです。もし私が急に体調を崩して苦しんでいたとしても 十分な検査や治療をしないうちに 家族から安楽死の提案が出されたら 断固拒否するでしょう。その辺りの事を 出来るだけ穏やかな口調で説明したつもりでしたが すごい剣幕で ののしられながら 電話を切られました。
またまたうちの病院の悪口を その類のサイトにデカデカと書き込まれて 更にうちの病院の評判が落ちてしまうのでしょうが 私も納得のいかない処置 特に命に係わる医療行為は 絶対にできないので致し方がなかったかなあ と考えております。まあ私も 病院の売り上げで 生活しておりますし 将来の貯えもその中から捻出しておりますから 少しでも売り上げを多くしたい気持ちはあります。安楽死に用いる薬は 治療薬ではありませんので 一匹分が原価でほんの数十円しかかかりません。それでいて 安楽死の処置料そして時間外対応料を含めますと 数万円は 稼げましたので ただでさえ病院が暇な時期としては 大きな金額ですが 勿論私はお金のためだけに 働いているわけではありませんから こちらとしては丁重にお断りしてよかったと思います。
電話をかけてきた飼い主に飼われている犬に 今後どのような運命が待っているのか分かりませんが 恐らくちゃんとして病院で きちんとした治療を受けさせてはもらえないのでしょうから 苦しい思いをするだけ 辛い思いが長引くだけなのだとしたら 安楽死してあげたほうが よかったのかもしれませんけれど その飼い主は 自分のペットに対して殆ど愛情を感じていない人みたいでしたから そんな輩とは 関わり合いを持たなくて やっぱりよかったのだお思います。その子の残された人生に 幸多からんことだけをお祈りしております。

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