10月13日 1805年の本日華岡青洲さんが全身麻酔をかけての手術に成功されました

今から200年以上も前に 華岡青洲さんが世界で一番最初の全身麻酔をかけて 乳がんを切除する手術に成功されました。有吉佐和子さんの小説「華岡青洲の妻」によって華岡さんの名は世間に広まりましたが この方の功績は 当時から存在すればノーベル賞をもらって当然な位の大きな功績なのです。小説では華岡さんの奥さんとお母さんの確執という日本の家庭での永遠のテーマを中心に描かれていますが 実際に麻酔の人体実験に参加したのは奥さんとお母さんに限らず 一族がこぞって協力したものとされています。この実験で奥さんが失明しましたし、お母さんは帰らぬ人となりました。

それだけ大きな犠牲を払って かなり安全な全身麻酔のかけ方を確立したのは 研究者の鑑と言えると思います。現在でも新しい薬が開発されると勿論まずはマウスやラットといった実験動物に投与されてその薬理効果や安全性がチェックされます。動物実験で安全性と有効性が確認できると 次に健康な人間に投与してその安全性を確認します。人間における安全性が確認されると 薬理作用のターゲットとなる病気の人間に投与して一定の値以上の有効性が確認されるとやっとその薬が人体薬として認められます。新薬を完成するのに 人体におけるテストは不可欠ですが 勇気ある協力者によってなんとか成立してきました。どうかその過程での重篤な事故が起こらないことを心から祈ります。

全身麻酔と言えば私はこのブログでもかきましたが 昨年の十二月に自分で初めて体験しました。局部麻酔は抜歯や犬に噛まれた傷を縫う時に経験していましたが全身麻酔は当然ですが意識が無くなってしまいますから 経験する前は凄く怖かったです。しかし、実際に経験してみると 意識がなくなるわけですから怖いと感じることも無ければ 痛いと感じることも全くないうちに手術が無事終了してくれました。案ずるよりも産むが易し という事でした。

私は職業柄 動物に全身麻酔をかけることは 日常茶飯事ですが 全身麻酔をかけている状態は 常に死と隣り合わせの状態である と教わりましたので 麻酔をかけている間は一瞬も気が抜けません。ですがこの全身麻酔のおかげで 動物の命を救うことが出来るわけですから 私のような獣医師の端くれであっても華岡さんの功績の恩恵にあずかっています。改めて華岡青洲さんに尊敬と感謝の気持ちを持ちました。

ブログ一覧