10月17日 肺に水が溜まった犬が来院しました

 朝一番の患者さんは肺に水が溜まる病気、肺水腫の柴犬で当院には初めて来院されました。肺に水が溜まるのは心臓が悪い子に多い病気です。心臓は血液を全身に送り出すポンプとよく表現されますが、それは同時に血液を吸い上げるポンプでもあります。心臓が悪い動物は当然血液を全身に十分送り出せないために 体が血液のたりない状態になります、血液は全身に送り出されていろんな役割を果たしますが 一番重要な働きが酸素の運搬です。だから心臓の悪い子は酸素が十分にもらえないために すぐに息が切れてへたり込むことが多くなります。貰える血液が足りないために酸素を沢山取り込もうとして呼吸を頑張りすぎるために ゼイゼイ行ったり喉が詰まったような咳を頻繁にするような症状が現れます。
血液を全身に十分に送り出せない心臓は 血液を心臓に吸い上げる力も弱いので 広い空間、例えば肺や腹腔内、そして心臓から遠い部分例えば後ろ肢の先に水分が貯まってしまいます。結果として肺に水貯まれば肺水腫、腹腔内に水が溜まれば腹水貯留、足の先ではむくみといった状態になります。
 この柴犬はまだ4歳と年齢が若いので恐らく先天的に心臓に問題を抱えていたのかもしれませんが 初めて診察したので過去の事はよく分かりません。飼い主さんの話だと 1歳ぐらいから全力疾走をしたり 興奮した時に よく咳き込んでいたらしいので 生まれ持った心疾患だろうと思われます。
 昨日の晩からゼイゼイと呼吸をしてへたり込んで動けないとのことで来院されました。聴診器をあてるとかなり心音が聞き取りにくい状態で かなりの心雑音がしましたので 心臓弁膜症であり肺水腫を疑いました。念の為レントゲンを撮影すると 普通は肺の部分は空気が入っているので黒く見えるはずですが かなりの量の水が溜まっているので 肺の半分以上が白く映っていました。
 症状が軽い場合は 利尿剤や強心剤を使っては肺に貯まった水が自然にひいていくのを待つ治療法もありますが、この子の場合には症状がかなり重いし、飼い主さんが相当に心配されていたので 肺に針を刺して直接たまった水を抜く処置を実施しました。かなりの量の水が抜けて 呼吸がかなり楽そうになりましたので 処置を終わり 強心剤や利尿剤をタップリと点滴に加えて皮下に流し込みお返ししました。
 取り敢えず運動や興奮など心臓に負担のかかることをなるべく避けるように心掛けてもらい 食餌療法をすすめるとともに内服薬を投与しました。まだ年の若い子ですから、これから先 弁膜症を抱えた心臓を少しでも長持ちさせて 少しでも元気で長生きしてくれることを望みますが 飼い主さんがあまり食事療法などに興味を持ってもらえなかったので 予後の見通しはあまり明るくないのかもしれません。その犬には可哀そうだけれど飼われている犬の立場としては 飼い主さんを選べないので仕方がないのかもしれません。

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