10月19日 歯石のひどい子の口内のお掃除をしました。

本日 十二歳のダックスの子の三回目の歯石取りをしました。この子の最初に歯石取りをしたのが 七歳の時でした。その時は 割と簡単に歯石が歯の表面から剥がれ落ちて くれましたから 短時間で歯石の除去が終わりました。歯の表面が全体的に歯石に覆われてしまっていて かなり口臭もひどかったですが すっかり見た目は 真っ白なきれいな歯に戻りました。歯の表面を表から裏まで そして歯周ポケットまで徹底的に歯石を除去しましたから ひどかった口臭は全くなくなりました。只歯の表面がかなりザラザラしていましたから 又歯石が付着するのは時間の問題かもしれないと飼い主さんに説明しました。
予想通りというか 三年後には 又歯石が初めて歯石取りをした時以上にひどく付着しましたので 十歳の時に二度目の歯石取りを行いました。その時も 丁寧に歯の表面から歯石をはがし取って 隅からすみまで徹底的に歯石を除去しました。ただ歯は一応白くはなりましたが くすんでいて輝くようには白くなりませんでした。歯肉炎の状況もかなりひどかったので 少し長めに抗生剤と消炎剤を飲ませてもらって 何とか歯茎の状態を何とか落ち着かせました。
そしてつい先日 以前から気が付いていた後肢の付け根にあるイボが かなり大きくなったのが気になる と言う事で来院されました。ここの所数年 殆ど大きさに変化はないし 本人も全然気にしていないので 様子を見ていたのですが 最近急に大きくなってきたようです。イボといえば そんなに怖いものというイメージはないのかもしれませんが 皮膚にできるある種の腫瘍と言ってもいい病気です。様子を見ているうちに 自然に消失する場合も多いし 数年経過しても大きさや数に変化がないのなら 良性の腫瘍でしょうから 本人が気にしていなければ そのまま放置しておいても問題ない場合が多いです。所が最近になって残念ながら急に大きくなってきたと言う事は どうやら悪性の腫瘍だったようですので 手術することにしました。ただその時飼い主さんから 同時にまたひどくなってきている歯石の除去を希望されました。
腫瘍の摘出は 当然ですが術野の清潔さを求められる手術でありますし 歯石の除去は ばい菌の塊を取り除くのですから 飛び散らないように配慮してもどうしても不潔になってしまう処置です。教科書的な判断としては 清潔さを求められる作業と どうしても不潔な状況になる処置とを 同時に行う事は お薦めできません。しかし飼い主さんの気持ちとしては 麻酔をかけることは それなりにリスクがありますし 勿論費用が掛かりますので 一度の麻酔で二つの作業を終わらせてほしいと望まれるのは当然だと思います。腫瘍はまだ小さなものですから その摘出は割と短時間で終われそうでしたから ついでに歯石取りを同時に行える患者さんだと判断しましたので 正直気は進みませんでしたが承諾しました。
本日さきに勿論腫瘍の摘出手術を行いました 見た目は直径一センチ具体の腫瘍の摘出でしたが 皮膚を切開してみると 根っこの部分がかなり蛸のように足を広げている状態でしたのでくれぐれも根っこの部分を取り残さないように 慎重に除去しましたので 傷口としては大きくなってしまい 皮膚をナイロンの糸で五針縫いましたが 想定していた位の時間で 無事に手術を終えました。その後直ぐに使役鳥の作業にかかりました。但しこちらは術前に口内を観察して予想していた以上に状態が悪化していました。
手術を始めるときに まず導入麻酔薬を静脈注射します。直ぐにグターッとしますので手術台に乗せて 先ずはマスクを顔に被せてガス麻酔を吸入させて 更に麻酔状態を安定させます。ある程度落ち着いた状態になったら 開口器を上下の犬歯にかけて大きく口を開かせた状態で気管チューブを挿管します。この子も常法通り開口器を犬歯にかけたら 犬歯に力が加わり簡単にボロッと抜け落ちてしまったのです。犬歯は犬の歯の中で 一番長大な歯ですから その根っこも一番深くまで歯茎に埋まっているはずです。その犬歯が開口器をかけただけで簡単に抜け落ちるぐらいですから 他の歯の状態もその時に確認したら 殆ど全ての歯がぐらついていました。取り敢えずは 気管チューブを挿管しなければ手術が始まりませんが 犬歯が抜け落ちてしまいましたから 開口器が使えませんので 足を固定するためのひもを上あごにかけて 奥様に上あごを持ち上げた状態にしてもらい 私が下あごと舌を捕まえて下に引っ張って 大きく口を開けさせた状態にして 何とか気管チューブを挿管して手術を始めたような次第でした。
歯がグラグラしていると 超音波スケーラーで 歯石をはがしていくのですが スケーラーの先が歯の表面にしっかりと接触しにくいので 歯石をはがし取るのにかなり苦労をしました。三回目の歯石取りですから 歯石のこびりつき方がひどくて 歯がしっかりと固定されていたとしても かなり手こずったのでしょうが かなりの数の歯がぐらついていましたので 口に指を突っ込んで裏から歯を固定しないとしっかりとスケーラーの先端が歯と密着してくれないのです。でも苦労して歯のお掃除をしましたので 飼い主さんがとても喜んでくださりましたので 頑張った甲斐がありました。
歯石の除去は 注意していても歯石が飛び散りますし 臭いもかなり強烈な場合が多いので 勿論楽しい作業ではありませんが 凄く汚い状態だったのが 奇麗に処置出来たら飼い主さんにとても喜んでもらえるので 結果的には 満足感のえられる有難い仕事のようです。最近私も虫歯の治療で歯医者さんに通っていますので 一番最後の日には ついでに歯石取りをしてもらうと思います。結構痛い思いもするし 口をゆすぐと思っていた以上に出血していて情けない気持ちになりますが その処置のおかげで歯肉炎が回復しますから 有難い処置です。自分では気づいていませんが 口臭も多少は抑えられているのかもしれません。一生懸命に歯磨きしているつもりでも どうしても歯石はついてしまいますから 歯を磨く習慣のない犬に歯石がついてしまうのは致し方の無い事かもしれません。歯石を放置しておくと口臭もひどくなりますが 歯肉炎が進行してしまい いつの間にかどんどん歯が抜け落ちてしまい 強いては寿命を縮めることにもなりますので 歯が茶色くなり 口臭が気になりだしたら 積極的に歯石取りをすることをおすすめします。

ブログ一覧