10月24日 深夜にフクロモモンガが来院しました

普通のモモンガはこれまでに数頭治療した経験がありましたが フクロモモンガという動物は図鑑で見ただけでした。勿論飼い主さんには初めて実物を目にしました 等と言えるわけもなくて 久し振りみたいなポーズを取ってしまいました。この類の小動物について書かれている書物をあわてて引っ張り出して フクロモモンガについて勉強しました。標準的な体重や体長 平均寿命 餌として与えて良いもの、悪いもの 生活環境についての基礎知識 例えばゲージの大きさや室温管理、飲み水の与え方などなど確認しました。更にこの時期にかかりやすい病気とその治療法まで知識を整理して頭に入れ直しました。幸いに高槻市の方だったので 来院されるまでにタップリと時間があったので フクロモモンガについてしっかりと下調べを終えることが出来ました。

今夜は冷え込んでいましたから 恐らく寒さによるダメージで食欲元気を消失したのだろうと予測していました。結構待たされてからやっと来院されたので早速診察を始めました。この動物は基本的に神経質であまり人に慣れません。赤ちゃんの頃にかなり濃厚に接触しておけば その匂いを覚えて馴染んでくれますが この子も人一倍神経質で 飼い主さんのご家族でも お母さんにはよく懐いていますがお父さんがうっかり手を出したら指を咬まれるのだそうです。

初対面の小動物なので直接手で触れずにタオルにしっかりとくるんでから 診察を始めました。まずは目や耳、口の中の状態をチェックしました。特に気になることはありませんが下の色が白かったので 貧血傾向があるのかもしれません。ここ一月ほど食欲が落ち気味との話でしたので 体格的にはやせ気味で栄養状態が良好とは言えません。

背中や腹部を触診した時に感じたのは やはり体温の低下でした。犬や猫のように検温できませんが 準備していたドライヤーで直ぐに体を温め始めました。ほんの一二分温めると かなり活発に動くようになりましたし 心音が温める前に比べて しっかりと落ち着いてきたように感じられました。とりあえず連れてきた巣箱に使い捨てのカイロをセットして帰り道で体温が下がらないように配慮しました。

車で来院する途中に一度嘔吐したという事でしたので 体重60gの子でしたので ほんの数ミリリットルですが点滴を入れて ショック状態から回復して 食欲が戻るような薬を流し込みました。後は体温が平熱を維持できるぐらいに回復してくれたらまた元気になってくれる事と思います、まだ三歳と若いので 回復はスムーズに行ってくれることを期待して治療を終えました。

最近 巣箱が古くなり汚れてきたので 新しいものと交換したそうで 巣箱にまだ馴染んでいないことも 今夜の不調と関係しているのかもしれません。何しろ小さい動物ですから 些細なことが身体には大きなダメージとして現れることは珍しくありません。人間でも大人であれば多少の事は影響を受けにくいのですが 生まれたばかりの赤ちゃんの場合は 小さなことが命に関わるような問題に発展する可能性があります。体重がほんの数十グラムの小動物の場合は 極小さな環境の変化が命取りになることはよくある事なので 細心の注意を払って面倒をみてあげて頂きたいと思いました。

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