10月7日 1986年の本日 私の代好きな作家さんの石坂洋二郎さんが 86歳でお亡くなりになられました

私が 初めて石坂さんの作品と出会ったのは 当時テレビドラマで放送されていた「光る海」でした。当時人気のあった 沖雅也さんや島田陽子さん 中野良子さんが出演されていたので 初回からたまたま視聴してしまったので 夢中になって毎週楽しみに その映像を拝見しておりました。放送が終了してから たまたま本屋さんで その原作の文庫本を見かけて 手に取ってみました。最初のページから テレビドラマの始まりのシーンが思い出されて 夢中で読み進めてしまいました。文庫本としては かなり分厚くて そこそこの価格がしたと思いますが たまたま所持していた現金で購入できましたので 急いで持ち帰りベッドに寝っ転がりながら 没頭して読みふけってしまいました。確か肋百ページぐらいあったと思いますが その晩のうちに読み通してしまいました。
高校生の時でしたが それまでも私は結構読書好きでしたので いろんなジャンルの小説をかなりの量読んでおりましたが この「光る海」ほど 夢中になって読んで 感動したのは 初めてだったかもしれません。若者たちの大学の卒業式から始まって 数年の青春群像が描かれた小説でした。驚いたのは 私がそれまで触れてきた小説には 主人公がいて その人物を中心に話が進行していましたが 「光る海」という小説は 主人公が一人ではなかったことに まず新鮮な驚きと感銘を受けました。ストーリーの進行とともに 数名の若者が入れ代わり立ち代わり 主人公となって話が進んでいくのです。ラストシーンになって この物語のタイトルの意味がようやく分かりましたが そのことにも改めて感動しました。
とにかく「光る海」という作品と出会ってから 私はすっかり石坂洋二郎という作家さんのとりこになってしまいました。本屋さんに並んだ石坂さんの小説を手当たり次第に読破しました。当時は 石坂さんの小説を原作として テレビドラマ化されたり 映画化された作品がいくつもありました。テレビで放送されると 欠かさずに見ていたように覚えていますが 映像化された作品を見てから 小説を読むと 一つ困ったことが起こることに気づきました。小説の登場人物を頭に思い浮かべると どうしても映像化された時に演じていた俳優さん女優さんしか浮かんでこないのです。
小説を読んだときに 登場人物を自由に自分で想像していくのが 小説を読む楽しみの一つのように思いますから その楽しみが失われてしまうのです。石原裕次郎さんや 吉永小百合さんが 演じてしまうと そのほかの人物像を思い浮かべる事なんて 無理でした。このことに気づいてからは 原作の小説を読み切って 自分なりの人物像を完成してしまうまで 映像化された作品を見ないように心掛けるようになりました。所が 先に小説を読んでから 映像化された作品を見ると 出演されている役者さんが 自分の想像と似通っている場合はいいのですが かけ離れていたりすると 違和感が強くなって 映像を楽しめなくなってしまいました。原作を読んでから 映像化作品を見るべきか 逆のパターンにした方がいいのか 結構悩みましたが 結論は出ませんでした。
とにかく 石坂さんの小説は 非常に人気があったので 盛んに映像化されたのだと思います。但し一つ気になったのは テレビドラマの場合かなり放送時間が長いので 原作にはないエピソードが付け加えられていて 不満に思ったり 映画の場合は 逆に時間が限られているので 私にとっては非常に印象深い重要なシーンが 割愛されていたりして とても残念に感じる事がありますから 映像化された作品に 興味は凄くあるけれど なるべく見ないようにするのが賢明だという結論に達しました。
結局私は 石坂さんの小説を数十冊 短期間で読みましたが 一番好きな作品は 最初に読んだ「光る海」です。それこそ何十回も読み直しました。二番目に好きな作品を考えると どうしても一つの作品に絞り切れません。「暁の合唱」「丘は花盛り」「あじさいの歌」「川のほとりで」「陽のあたる坂道」「山のかなたに」のうちのどれか という事にしておきます。石坂さんの代表作と言われている「若い人」は なんとなく暗い雰囲気が強くて あまり好きではありません。そして映画で主人公を演じた 吉永さんの印象が強すぎるのも 勿論小百合さんは 非常に魅力的でしたが 私の想像していた人物像とはかけ離れていたからだと思いますが すきにはなれませんでした。
私が高校時代に読んだ小説家としては 石坂さんと五木寛之さんが 双璧だと思います。私の感受性が一番鋭い時代に 影響を大きく受けた作家さんたちです。久しぶりに思い出しました。「光る海」という小説を久しぶりに 読み返してみようかと思います。気持ちだけでも 高校時代に戻れたら 幸せです。

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