11月18日 尿閉の猫ちゃんが来院しました

 寒さがだいぶ本格化してきましたが おしっこが詰まってしまい おしっこをしたくても出来なくなってしまう病気の誘発因子として寒さがありますからこれからこの病気で来院する動物が増えます。
 この病気は身体の構造からオスに多い病気です。何故かと言うとこの病気は本来尿と言う液体しか存在しないはずのものに 身体の異状によりザラザラした結石と言う固体が出現することにより病気が始まります。始めは小さな結石でそれほど悪さをしませんが そのごく小さな結石が寄り集まってそこそこ大きな結石になり 尿の通り道にひっかかり 傷をつけて血尿になります。更に結石が大きくなり尿の通り道 即ち尿道を塞いでしまうとおしっこが出ない状態になってしまいます。オスにこの病気が多いのは 膀胱から尿の出口 つまりおちんちんの先までの尿道が細くて長いから結石で詰まりやすいからなのです。雌の尿道はオスに比べてずっと短くて太いので 余程大きな結石が運悪く詰まってしまうのは極稀なケースです。
 この猫も勿論オスでした。昨日からトイレに座るのだけれど ぽたぽたとしか出ないそうです。腹部を触診すると 破裂しそうな位に膨らんだ膀胱が触知できました。緊急事態なのですぐに預かって尿道カテーテルを通す準備をしました。当院では尿道にカテーテルを通す時には全身麻酔をかけます。私が研修した病院では麻酔をかけずに 病院のスタッフが暴れないように押さえつけてカテーテルを通していました。
 おちんちんの先から固い管を通すのですから 男性なら想像がつくと思いますが相当に痛みを伴う作業です。結石が詰まっていなくてもかなりつらい事なのに増してや結石が詰まっている尿道にカテーテルを通す作業ですから 私はできたら麻酔をかけてから作業をした方が動物の苦痛が少なくて済むし暴れないので短時間でスムーズに終了できるので良いのではないかと思います。
 今日の猫ちゃんの場合は結石の詰まり方が強固だったのでなかなかカテーテルが通りませんでした。その様なときには 歯石を超音波で割って除去する装置を使います。超音波で振動させた水を尿道に流し込み詰まった結石を割ってカテーテルの通り道を作ります。何度が超音波水を通して やっとカテーテルが膀胱まで届きました。膀胱内に貯まっていたかなり赤いおしっこがカテーテルから流出してきました。
 慌ててチューブを繋いで大きな注射ポンプでまっかっかの尿を吸い出しました。約300mlの尿を吸い出してから 温めた生理食塩水を膀胱に流し込みすぐにその生食を吸い出します。何度かこの作業を繰り返すことで膀胱内のこっているザラザラした結石を洗い流します。
 膀胱の洗浄が終わったら カテーテルを抜いてもすぐに尿が尿道を通りそうであれば カテーテルを抜いて終了です。所がこの子の場合はかなり大きな結石が詰まっていたところがすぐにまた詰まりそうな状況だったので カテーテルをおちんちんに縫い付けて 留置することにしました。カテーテルを残しておけば確実の尿の排泄は確保できますし、留置している間に尿道の治療をしてカテーテルを抜いても詰まらないようにします。尿道の状況から判断して五日間カテーテルを留置することにしました。カテーテルを留置していると本人の意思とは無関係にぼたぼたとおしっこが漏れますので 飼い主さんは手間暇がかかりますが致し方のないことだと思います。
 この猫ちゃんの場合結石の種類は ストラバイトといって尿酸とアンモニアとマグネシウムが結合してできた石でした。猫の尿は本来酸性であるはずですが体調の異状により尿がアルカリ性になると このストラバイトが結晶として出現して悪さをするのです。治療法としては取りあえず尿を酸性にすれば結石は解けて焼失しますから 尿を酸性にしてマグネシウムを含まないフードによる食餌療法や尿酸化剤を使います。
 尿が出にくかったり 血尿であれば 飼い主さんも未だ治療が必要であると理解していただいて 頑張られますが 排尿が普通に戻り尿も見た目に正常に戻ると 治療を継続されない飼い主さんが多いので なかなか完治しにくい厄介な病気です。見た目が正常に戻ってもかなり長い期間治療の継続が必要であることは一生懸命に説明するのですが なかなか治療の継続が難しいのが現実です。
 まあ完治しないままにおいておくと直ぐにまた似たような状態に逆戻りしますが まあ自分の事に当てはめるなら 例えば歯と歯茎の病気は定期的に歯医者さんにチェックしてもらえば虫歯も歯肉炎もひどくならないうちに治療出来で自分の為であることは重々分かっているのに 定期的に歯医者さんを訪ねることが出来ない私にえらそうなことを申し上げる資格はないと思います。
 おしっこが出ない状態が三日続けば命に関わるのは人間もペットも同様です。また今年も似たような緊急事態の子が来院されると思いますが 頑張って治療をしようと思います。 

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