2月13日 栗本薫さんのお誕生日です

多分去年も同じ日に同じ栗本さんについて語ったと思います。2009年に56歳と言う若さで すい臓癌で亡くなられました。作家と言うお仕事ですから 癌などと言う忌まわしい病気に侵されていなければ あと二十年は余裕でお仕事できたと思います。代表作である「グインサーガ」が126巻で未完結のまま終わってしまいましたが あと二十年以上の寿命があればおそらく200巻位で完結したはずですから この長大な物語も完結できたのではないでしょうか。

栗本さんの当初の予定としては 「グインサーガ」は100巻位で完結する見込みで 書き始めたのだそうです。けれども主要登場人物の紹介を五巻目まで位で終えるはずが 自然と話が膨らんでしまって 人物紹介が終えられたのが十五巻目ぐらいだったのだそうです。その時点で完結するまでに二百巻位はかかる覚悟をされたような話を 何かのインタビュー記事で読んだように思います。 栗本さんの執筆が凄く速いのは有名な話でしたが グイン以外にも幾つもの長編シリーズを抱えておられましたから 年間四巻位出版されるのが限界みたいでした。

私が「グイン」と出会ったのは 岐阜大学の一年生の夏休みです。このエピソードは勿論去年も書いた覚えがありますが 立命館時代の友人と岐阜大学時代にできた友人と 確かバイトで知り合った友人 関連性の全くない三人の友人から ほぼ同時に偶然勧められたので 読み始めました。当時は既に四十巻位まで出版されていたように思いますが 一巻が多分300ページ位の割と薄い文庫本だったので 一日に一冊を読破したと思います。

大学は夏休みでしたから 特に宿題もありませんでしたので 塾の講師のバイトに精を出す以外にはたっぷりと時間がありました。ですから とにかく面白くてたまらなかったので 日に一冊のペースで読み進められました。但し親から一銭の援助も受けていない貧乏学生でしたから 安い文庫本とはいえ経済的にはかなりの負担を感じましたが 食費を切り詰めてでも 本屋に並んでいる限りは 買い漁りました。

それ位にはまり込んでしまうほど面白くてたまりませんでした。所がすでに出版されている分をすべて読みつくしてからが この物語との本当の御付き合いの始まりでした。先ほども書きましたが 栗本さんの執筆の速さは特異なほどでしたが それでも年間約四から五冊 即ち二三か月に一回しか出版されません。

アメリカの人気ドラマ「トウェンティフォウ」と同じで レンタルビデオを借りてきたら 借りてきた分は全て見ないではいられない位にワクワクしてストーリーの続きが楽しみでたまらないのです。そしてこの辛い待たされる時間が これから先何十年も間違いなく続いていくのです。待ち続けてやっと出版された本は直ぐに読み終えてしまいますから 暇を持て余します。 でも栗本さんの世界から離れていたくないので 「魔界水滸伝」等の他の長編シリーズも読み始めます。しかしこれらも直ぐに出版されている分は読み終えてしまいますから 「グイン」で イライラしながら待たされているのと同じ状態になってしまうのです。

栗本さんも イライラしながら待ちくたびれているファンの気持ちを察してくれて 特に「グインサーガ」では あとがきにたっぷりと近況報告などのメッセージを込めてくれます。ですから 熱心な「グイン」のファンは新しく出版された本を手にすると 勿論本文を少しでも早く読みたい気持ちは山々ですが 先ずはあとがきから読み始めていたはずです。少なくとも私はそうしていました。

「グインサーガ」は話のまだまだ途中ではありますが 個人で書いた小説としては 世界で一番長いことが ギネスブックに認定されていたほどの長編小説です。ある程度年を取ってくると 記憶が薄れてきますから だいぶ前に敷いてあった伏線的な内容などは忘れてしまう事がよくあります。ですから時々途中からでも読み直さないと 話の展開をきちんと理解できにくいことがちょくちょくあります。やはり一編の小説としては あまりにも壮大であり 読む側から言わせていただくなら あまりに長大過ぎるのだと思います。

栗本さんほどの天才作家であっても さすがに自分の寿命についての正確な予測は出来ていなかったみたいで 癌と言う忌まわしい病気で ご本人の予定よりもかなり短い人生を閉じてしまわれました。その為に「グインサーガ」と言う小説で 何十年もファンの気持ちを鷲掴みにされたまま 永眠することは 凄く不本意だったと思います。

「グイン」の最初の頃のあとがきに 最終巻のタイトルはもう決まっている と言う表現があったと記憶していますから栗本さんの頭の中では グインが最終的にどのような人生をたどって どのような結末をむかえるのかまで 出来上がっていたのだと思います。そのファンがどうしても知りたい完結する形まで 墓場に持って行かれてしまったので 残念でたまりません。出来ましたら生まれ変わってまたグインのシリーズの続きを書き出してくださることを グインのファンはきっと強く望んでいると思います。

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