2月10日 タヌキが入院しました

昨日の夜 時間外に電話がかかってきて マンションの入り口付近に何か動物がうずくまって動けなくなっているので 診てもらえないか と言われてしまいました。深夜なので 暗くて動物の種類が分らないのだそうです。右肩の辺りの皮膚が破れて大けがをしているのは間違いのない事だと 電話の主は仰います。犬かも知れないし 野生動物かも知れない と言う事でしたので 取り敢えずは動物を確保して 動物の種類が分ってから もう一度電話をかけてくるように言いました。
五分後ぐらいに 同じ方からまた電話がかかってきて 段ボール箱に保護して 明るい所で確認したら どうもタヌキの様だ と言う事でした。肩の傷は予想よりも大きいけれど 現在出血とかはしていないのだそうです。何とか呼吸はしているが ぐったりして殆ど動けない状態の様で その為に簡単に保護できたのかもしれません。取り敢えずは 直ぐに連れてきてもらう事にして 私は慌てて病院に下りて 場合によっては傷口の縫合をその場でするかもしれないので 治療の準備を始めました。
予想よりも早く タヌキを保護した方が 来院されました。早速診察室で 保護されたタヌキと対面したのですが まず目を見て驚きました。真っ白で 白内障の病状が凄く進行しています。体の毛は普通に茶色いのですが 顔面がほぼ全面 真っ白で恐らく殆ど白髪になってしまっているのだと思われます。タヌキの寿命は7~8年と言われていますが 恐らくその年齢に達しているであろう 高齢タヌキのようです。肩の傷の様子を見ると 十センチ以上もあり 引き裂かれたように大きな穴が開いてしまっていました。
腐敗臭がひどくて 奥の方に膿が溜まり 筋肉がかなりの広範囲で 腐敗をしているような状態でした。傷を負ったのは一月以上前の事のようです。体の表面が既に冷たくなっているし 心音も辛うじて聞えるぐらいなので その場ですぐに麻酔をかけて 傷の処置をするのは難しいと判断しましたから 体を温めながら 皮下に点滴と抗生剤や消炎剤を加えて投与して ある程度の体力の回復を図ることにしました。野生の動物ですから 犬舎の中は 屋外よりもずっと暖かくて清潔で快適な環境のはずですが 人間に慣れていないので 人工的なものによるストレスは小さくないのかもしれませんが ひとまずはお預かりして 入院室に入ってもらい体力の回復を期待しました。
ひょっとしたら夜のうちに命に関わることがあるかもしれませんので 二三時間ごとに様子を見ましたが 何とか朝まで頑張って生きてくれていました。缶詰のドッグフードに鰹節をかけたものを与えてみましたが 朝までに完食していましたし コロンとしたウンチもしていましたから 人間の環境にも 割と順応してくれそうです。多少は体力が回復してくれたみたいだし 体温も上がってきましたので 何とか自力で立ち上がれるぐらいには 回復してくれたみたいなので 本日のお昼に傷口を手術しました。
まずは引き裂かれた皮膚が かなり肥厚してしまっていましたので 正常な皮膚の部分まで切開して 古い傷口を全て切除しました。中の筋肉の部分も腐敗が進んで大きな穴ぼこが開いていましたので ここも腐敗した部分を全て切除しました。体の中に死控が出来ないように 吸収糸で縫い合わせました。皮膚も内側同士を縫い合わせて 皮膚がピタッと沿う様に縫合するつもりでした。埋没する縫い方だと抜糸の必要がないからです。所が 皮膚が思ったよりも薄くて柔らかいので 吸収糸で 両サイドにしっかりと糸をかけて 縫合することにしました。普通は十日後位に抜糸しますが その前に自然に返してやりたいので 抜糸は省略することにしました。吸収糸を使っていますので 体内に潜っている部分が 数週間で焼失しますから 体表の糸も自然に体から離れることを期待しました。
麻酔が覚めても なかなか起き上がってくれませんが 術前の立ち上がるのがやっとの状態でしたし相当な高齢であるみたいなので 焦らないでじっくり様子を見ていこうと思います。これまでにも タヌキが入院したことは何度かありますが 皆元気に退院していってくれましたので この子も無事に自然に帰してやれると嬉しいです。

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