4月17日 狂犬病集合注射の予診について考えました

現在本年度の狂犬病集合注射を実施している最中です。今年は残念ながらお天気の悪い日が続いて 注射頭数も減少傾向なのが残念ですが 今の所注射による副作用や 飼い主さんから寄せられる苦情の報告も全然ありませんので その意味では非常に順調なようで 責任者としては凄く嬉しく思います。何度も書きますが私の枚方市獣医師会の会長としての仕事は実質この集合注射までなので無事に終わってくれることだけを望んでおります。

さて狂犬病の集合注射の形態もここ数年でいくらか様変わりしていることにお気づきの方も多いと思います。以前は 一つの注射会場に獣医師が一人しかいませんでした。注射する際に 昨日今日の体調を口頭で尋ねて 問題が無ければ直ぐに注射していました、ところがそのやり方では 結構注射による副作用が発生して トラブルになるケースが時々ありました。

狂犬病の予防注射は 犬の為に実施していると思い違いをされている方が結構多いとは思いますが、狂犬病とは人畜共通伝染病ですから 人間に狂犬病が広まらないために 一般市民を恐ろしい伝染病から守るために、狂犬病予防法という法律によって 飼い主さんに自分の飼い犬に狂犬病の予防注射を実施することが義務付けられています。

ですからせっかく注射会場にお越しになっている飼い主さんの自分の飼い犬に注射をしようという立派なお気持ちを尊重して なるべくなら注射させていただきたいのは注射を担当する獣医師としては本音です。勿論一頭でも多く注射した方が 自分たちの収入も増えるのです。しかし、もし副作用が起こって 最悪の場合死亡するケースまであります。

勿論死亡するケースは極稀な話ですが 注射の副作用によって犬が急に体調を崩した時に それが病院で起こったのであれば 大部分の獣医師が適切な対応策がとれるはずです。所が 集合注射会場では 最低限度の対応しかできません。出来るだけ早く治療が必要な場合は 近所の動物病院へ駈け込む手筈は整っていますが、注射した先生がその場を離れることになりますから 今度は集合注射会場自体が混乱してしまいます。

その様なケースを未然に防ぐために 数年前から予診票を飼い主さんに送付しておいて 犬の体調について予め確認できるように記入してもらい 念の為署名まで頂くようにしました。当初は記入してこなくて その場で記入していただく方も多かったのですが 徐々に定着してきましたので 現在ではほとんどの飼い主さんが犬の体調についての質問への回答とと署名を予め済ませて来場されるようになりました。きちんと記入してきた方が よりスムーズに注射が終わりますから当たり前なのかもしれません。

その予疹票を確認して その犬が注射をしても問題ないのか判断するために 当番獣医師が各会場に常駐するようになりました。当然獣医師としては 会場に出かける日数が倍になりますから 負担も倍になりますが きちんと予疹することによって集合注射会場でのトラブルが減少する事は間違いありませんから 反対意見は出ませんでした。

予疹を担当する当番獣医師のお陰で 注射業務自体も勿論スムーズにすすみますし 去年、今年と殆ど副作用によるトラブルが発生していないのは 明らかに予疹を徹底するようになった成果だと思います。ただ現在は予疹のやり方を個々の獣医師に任せていますが 先生によって予疹のやり方に結構違いがあることに気付きました。

今年私が注射する会場で当番を務めて頂いた先生が 殆ど全ての犬の予疹で聴診器を胸に当てて心音を確認し 歯茎の色により貧血の度合いをチェックしていました。私の担当した会場は天気も悪くて午前中が60頭 午後からが70頭と注射頭数が少なかったので たまたまそのような丁寧な予疹ができたのかもしれません。私が担当した市役所なんて午前中だけで200頭近くが押し寄せましたから 予疹票で問題ない場合は 昨日今日の体調を口頭で確認して問題無しなら 犬に触りもしないで そのまま注射OKにしました。

勿論余裕があるのなら丁寧に 予疹をさせてもらうのはわざわざ獣医師が出てきて担当していますから 飼い主さんにも喜ばしい事だと思います。書類を受け取る時に聴診をしてもらって 心臓に心配があることを指摘してもらった飼い主さんがとても喜んでいたことを奥様から報告されました。

しかし会場により注射頭数に大きく違いがあることは間違いありませんから 会場によって また担当する獣医師によって 予疹のやり方にあまり違いがあることは望ましい事ではないと思います。飼い主さんとしても 去年はもっと丁寧に診てくれたのに 今年は雑に扱われた 等とあらぬ不満をかきたてることにもなりかねません。

これまでは各獣医師の自主性に任せて予疹を行ってきましたが ここ等辺りで最低限どこまではチェックする、逆にどこまで以上はやらない といったガイドラインを設ける必要があるのかもしれません。先日書きました獣医師会関係者の葬儀に対する役員の関わり方の問題と この問題と私の任期のうちに出来たらある程度の形まで作っておいた方がよいように思いますので 正直面倒なのですが 皆さんに提案して 集合注射の反省会で話し合う段取りまでつけようと思います。最後のお勤めだと思って頑張ります。

 

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