4月5日 本日は狂犬病の集合注射のため 出かけてきました

開業した翌年から集合注射に参加していますから もう何十回も経験していますが 一年ぶりですから やはりそれなりに緊張します。正直申し上げて 注射を射つ作業自体は 大して難しくありません。以前はかなり暴れる犬がいて 飼い主がきちんと保定できないような状況が必ず起こりましたが 最近はあまりそんな困った犬と飼い主は見かけなくなりました。ですから一日に例え三百頭以上に注射しても それほど疲れを感じません。

只何しろ一年ぶりに集合注射の準備をしますから 何か必要なものを忘れていないかというのが最大の心配です。勿論集合注射に持っていくもののリストを作ってありますから そのリストに従って持っていくものを準備しますので 忘れ物などあるはずがないのに 心配してしまうのです。今回も前の晩のうちに 勿論全部の品をそろえてしまってから 三回もリストをみなおして忘れ物が無いのか確認しました。それでも朝出かける前にもう一度リストをみながら確認し直しました。

私は非常にうっかりものでありますが 凄くしっかり者の奥様も確認してくださっていますから 間違いないのは分っていますがついつい心配してしまうのです。幸い今年も忘れ物が無くて無事注射と事務の仕事が出来たようなので取り敢えずはホッとしています。時々 あるべき金額と現金が一致しないことがありますが 本日はぴったしカンカンでした。但し昨年久し振りに発生した副作用の症例は注射してから十日後ぐらいに報告されましたから まだまだ安心できません。

昨日は雨があがったばっかりで 小学校が会場の場合 基本的に会場は土の上が予想されますから 泥まみれになる可能性があります。本日は 快晴とまではいきませんが 薄曇りくらいのお天気で 暑くもなければ取り立てて寒くもありませんでしたから 注射をうつ側にすれば有難いお天気だったようです。頭数的にも昨年の頭数をほんの少しずつでも上回っていましたから まあ上出来だったのかもしれません。

昨年起こった残念な副反応事件は 何とか無事に解決に向かってくれましたから 事なきを得ましたが 獣医師会に所属していない いわばもぐりのような病院の獣医師によって 「脊髄に注射されたのではないか」等ととんでもない考え方を飼い主さんが吹き込まれてしまったことから 始まりました。

同じ獣医師としてとても恥ずかしいことだと思います。集合注射に使う注射針は 暴れる犬を想定して 結構太くて短いものです。八分の五インチ(1.5センチ)の長さですから 体重が十キロ以上の副反応が発現した犬の体格でしたら 背骨に対して垂直に針を打ち込んでも 長さ的に脊髄には届かないのです。物理的に脊髄に注射することはありえないのです。

私たちは基本的に集合注射の場合 皮下注射します。皮膚をたるませて 皮膚と皮下織の隙間に薬剤を投与しようと心がけします。場合によっては犬が暴れた時に 筋肉注射になってしまう場合もあり得ます。筋肉注射になってしまった場合の方が 犬の感じる疼痛が大きくなりますから なるべく皮下に注射しようと心掛けます。その場合は注射針は皮膚と殆ど平行に近い角度で注射されます。

ですから私たちがどんなに犬が暴れて注射しにくい状況であったにしても 脊髄に注射してしまう事は絶対にありえませんが 飼い主はもぐりの獣医師の言葉にたきつけられてしまって 頭に血が上っていましたから 私たちの説明に全然聞く耳を持ってもらえませんでした。ただ残念なことに枚方獣医師会が行った狂犬病集合注射によって 異常をきたしている犬が存在することは間違いの無い事です。

私たちは獣医師として 苦しんでいる動物を助けたくて働いている身ですから 何とか精一杯の治療をしましたら 症状が何とか治まってくれたみたいで 本当に良かったです。当時は私が不運にも枚方市の獣医師会の代表を務めていましたから 率先して対応に当たり 精神的にも肉体的にもつかれたのを覚えています。勿論獣医師会の上層部には 私から報告しました。

実際の現場である 私たち枚方市の獣医師会のメンバーとしては 何とか飼い主さんにご理解いただいて 精一杯の治療をさせて頂いて 解決していこうと考えておりましたが 獣医師会上層部としては 具体的な話をもっと上の組織に持ち込めば 大阪府の獣医師会としては獣医療裁判のエキスパートのような弁護士を抱えていますから 裁判沙汰にしても間違いなく勝訴する自信があったのだと思います。一刻も早く話を上に持ち込むようにとせっつかれましたが 現場の枚方市獣医師会としては 事をなるべく荒立てないで 穏便に解決に向かいたかったので その方向で努力しました。

副反応が発現した犬に注射した獣医師は 不幸な交通事故に見舞われたような出来事だったかもしれませんが 結果的には何とかその犬が回復してくれましたから本当に良かったと思います。事を荒立ててしまって解決しても その事が悪いうわさになってしまい 集合注射の頭数の減少につながってしまう事を心配していましたが 何とか穏便に解決できてホッとしました。

予防注射には常に副反応が発現する危険性が隣り合わせになっている行為であることを もう一度認識し直して 今年の集合注射に真摯に取り組もうと考えています。

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