5月17日 集合注射の副反用の疑われる犬の飼い主さんと面談してきました

本日の昼に副反応の疑われる犬が注射を担当した先生の病院で診察を受けました。症状としては首が傾いたままになり 片方の瞼が動かせず目が開いたままの状態になっているそうです。病院に付き添ってきた飼い主さんのお母さんとお兄さんなる人物が 「こんなことになったのは注射のせいだ」の一点張りだったそうです。

客観的に見た現状を正確に理解してもらうのには 相当に骨が折れそうな状況のようでした。泣き言を言っていても始まらないので 前日打ち合わせたとおりに 注射を担当した先生と かかりつけの先生と 第三者的な立場として私が 飼い主さん宅を訪問する事にしました。

訪問を約束した三十分前に その近所のローソンの駐車場に三人が集まって 意思統一を図り どのように話を進めていくかの作戦会議を開くことになりました。私は落ち着かないので 約束の時間よりもさらに二十分も前にその駐車場に到着しました。当然一番乗りだと思っていたら 御二人の先生たちは既に先着されていて 熱心に話し合われている様子でした。

落ち着いてなどいられないのは お二人も同様だったみたいでした。お二人は大きな病院を経営されている先生方ですが 一応獣医師会での活動歴は私がずっと長いし 一応名前だけでも会長という立場なので なるべく話の流れを 上手くコントロールするのが私の役割だと思いました。一応話の進め方を三人で再確認してから いよいよ飼い主さんのお宅へ乗り込みました。

本日お会いしたのは実際に犬を飼っていらっしゃる方のお父さんのお宅でした。お父さんが保健所さんに話を持ち込んだので 交渉の窓口としては お父さんになって頂いた方が 都合がよいと考えました。保健所さんの話では 訪問時にかなりのけんまくだったのだそうです。本日 病院に訪れた方は 飼い主さんと そのお母さんとお兄さんなのだそうですが ご本人以外がかなりの興奮状態で先生の説明を聞いてくれるような雰囲気ではなかったのだそうです。

その様な事前の情報から どれだけ険悪な雰囲気で話し合いが始まるのかかなり不安でしたが そのお父さんが意外にもにこやかに三人をお宅へ招き入れてくださいました。そのお父さんとは三人とも初対面でしたので 先ずは自己紹介をしてから割と和やかな雰囲気で話し合いが始まりました。

先ずは症状が出て苦しんでいる犬に対してお見舞い申し上げて 苦しんでいる動物を助けるのが私たち動物病院の使命でありますから 注射をした先生だけの問題ではなくて 獣医師会全体の問題としてとらえていて会全体で症状の改善に 勿論無償で取り組んでいく気持ちであることを伝えました。

現実問題として犬に発現している症状が注射を原因としている可能性は決して高いとは考えられませんが 可能性がゼロであると断言できない限りは 注射を担当した団体として 真正面から受け止めて 逃げも隠れもしないで対処するつもりです。只 腹立たしいのは飼い主さんが勘違いされている脊髄に注射された可能性を示唆した非常識で無知な獣医師がいることです。

我々が注射に使用する針の長さはわずか十四ミリメートルしかありません。二十キロ近くあるフレンチブルドックの脊髄に注射しようとしても物理的に不可能なのです。そんな極普通のレベルの知識を持つ獣医師にとって常識であることを ひょっとしたら本当に分かっていなくてそのような愚かな情報を飼い主さんに提供したのか もしくは自分が獣医師会に所属していないので 獣医師会に対する妬みややっかみの気持ちから 悪意を持って飼い主さんの誤解を招くような発言をしたのか理解できませんが 何にしても同じ動物病院を開業している獣医師として恥ずかしい限りです

脊髄に注射をしたという誤解を解くために それなりに分かり易い説明をしたつもりでしたが 「まあ、ぜったいということはありえないからなあ」という飼い主さんの言葉が最後に出ましたから 私たちの真意は残念ながらご理解いただけなかったようです。まあ飼い主さんとの交渉は本日でおしまいという訳にもいかないのでしょうから これからもじっくりと時間をかけて理解していただくように頑張ります。少なくとも私たちの説明をきいて頂けるような雰囲気で話し合いが進んでいる事だけでも 当初予想していたよりもずっと順調だと思いました。

当面はビタミン剤と必要に応じてステロイド剤などを投与して 現在みられている症状の改善を目指した治療を頑張ってみる。それで改善がみられれば それでよいけれど残念ながら 治療の効果が確認されなければ 脳腫瘍や水頭症等の脳内に問題が発生している可能性の確認が必要になってきます。その為には 専門の施設でMRI、必要に応じてCTスキャンの検査が必要になってきます。これらは専門の施設 例えば大阪府立大学の動物病院などに依頼しなければなりませんし 検査費用もそこそこの金額が発生します。

勿論これらの検査をしたら 原因が必ず見つかるとは断言できませんが もしこの検査で原因が確定しないとなれば ワクチン液そのものに起因するなど 原因がかなり限定されてきます。勿論その前に症状が改善してくれればとれで万々歳ですが いざとなれば原因究明に向かわざるを得ない覚悟で臨んでいます。

今後の事は治療経過を見ていかないと判断できませんが なんとか早く解決してほしいと切に祈っております。

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