6月11日 インコのひなが 給餌中に気管に餌を詰まらせて 来院されました

本日の昼休み中に電話がかかってきて 飼い始めて二週間のインコのひなに餌を与えていたら 急に苦しみ出したので 直ぐに診て欲しい と電話が入りました。奥様が電話を受けて 緊急事態であることを察知して 直ぐに来院するように指示を出しました。私は インコの小さな口中から 餌を吸引する準備をしました。呼吸促進剤の注射を準備して 飼い主の到着を待ちました。かなり急いできたみたいで 予想よりは早く来院されましたが つい今しがたまで 苦しそうに動いていたのが ほんの今だと思うが動かなくなってしまった と言う事でしたので カルテを作る間もなく 取り敢えずは診察を始めました。聴診器をあてるとまだわずかに心臓の鼓動が感じられましたので 強心剤を直接心臓に注射して 心臓マッサージをすることで 心拍を呼び戻し 呼吸が再開することを期待して 処置を始めました。
心臓に薬剤を注射して 胸を一定のかなり早めのリズムで圧迫してみました。胸を圧迫していると 口からドロドロした餌があぶれて出てきましたので 吸引して口の中の餌を取り除きました。暫く心臓マッサージしてもう一度聴診しましたが 以前として心拍は微弱なままでしたので 更に強心剤を注射して 更にマッサージを続けてみましたが 残念ながら 再び心拍が復活して 呼吸を始めてはくれませんでした。病院に到着する寸前までは 苦しがりながらも動いていたわけですから もう少し早く治療を始められていれば ひょっとしたら生き返ってくれていたかもしれませんので 残念です。
一段落してから 飼い主さんに事の経緯を訊ねると 家に来てしばらくは ペットショップで教わったように 小さなスプーンでヒナに餌を与えていたのだそうです。所が数日前から スプーンでは餌をうまく食べてくれなくなったので インターネットで調べたら スポイドの様な給餌器を用いてヒナに餌を与えることが指示されていました。そこで その飼い主さんは慌ててその給餌器を取り寄せて購入し 今朝からその道具を使って餌を与えていたのだそうです。以前として 給餌される行為自体をヒナは拒否していたらしいのですが 昨日は一切餌を与えられていなかったので 飼い主さんが焦って強引に給餌器による給餌を繰り返していたら 急にむせたように咳き込んで苦しがり出したのだそうです。そして慌てて病院に来られましたが 治療の甲斐なく命を落としました。 
今回の出来事は 私は明らかに飼い主さんの対応が間違っていた事から起こってしまったのだと思います。飼い始めてしばらくは 教わったやり方で餌を食べていたヒナが 急に餌を受け付けなくなったのは 体調に異常が生じたからです。人間でも 急に環境が大きく変化したりすると 食欲がなくなったりすることは珍しい事ではありません。ましてや生まれてほんの数週間の小鳥のヒナにすれば 環境が大きく変化し 面倒をみてくれる人間も変わりましたから そのストレスのために体調を崩しても致し方がありません。ここまでは どんな飼い主さんでも起こりうる現象だと思います。
ただその時に体調に異常が発生して 食欲がなくなったのであれば 直ぐに動物病院に連れて行き診察を受けるべきだったのです。勿論小鳥のヒナが相手ですから 細かい検査など現実には難しいのですが その時の様子やこれまでの経緯から判断して 食欲がなくなった原因を推察して 回復に向かう治療法を考えて 対処してあげれば 何とか食欲が回復する方向に治療が出来たのかもしれません。勿論生き物相手の それもほんの数十グラムの小鳥の それも生まれて間もないヒナの事ですから 治療しても上手く回復に向かってくれないケースも考えられますが 今回の様に強制的に気管に餌を流し込まれて のた打ち回って苦しみながら最期を迎えるような 可哀想な結末には ならなかったはずです。
現在は 便利な世の中になったもので 意味の分からない言葉や 度忘れしてしまってどうしてもすぐに思い出せない出来事や 困った事態に出くわした時には その答えを簡単にインターネットで調べて 解決できることが多いのかもしれません。但し インターネットで紹介されている事に 本当に信憑性がある事なのか 嘘八百なのか 冷静に判断することが重要です。動物に異常が発生した時の対処法にしても 獣医学的な知識のある獣医師からのアドバイスの場合もありますが ド素人が 全く間違った対応を 実しやかに述べている場合も 凄く多いように思います。そもそも 病気の治療法については 獣医師同士が話していても 意見が食い違う事は珍しくありませんから かなりデリケートな問題を孕んでいるのかもしれません。
ですから インターネットに書いてあることだからと 鵜呑みにして 信用してしまう事は 絶対におすすめできません。動物を飼い始めたら 何時病気になったり ケガをするかわかりませんから 近所に信頼できる病院を探しておくことをおすすめします。飼い始めたばかりなら 毎日いろんな疑問が生じると思います。そのような疑問を 電話をかけて相談してみれば その対応の仕方で その病院が信頼できる親切な病院なのか 否かはある程度判断できるとおもいます。
信頼できそうな病院に見当がついたら 動物に異常が発生したら 自分で勝手に判断してしまう事はやめておいた方がいいでしょう。ペットショップなどで購入した場合は 異常があれば 取り敢えずペットショップに相談される方も多いのかもしれませんが これもやめておいた方が賢明だと思います。ペットショップの人間は 勿論普段から仕事で動物を扱っていますから 飼い主さんよりはその動物についての知識が多少はあるかもしれませんが 動物の病気については 素人なのです。もしも何かあった時には 販売したお店としての責任を追及されたら困りますから 自分の店に対して不利益にならないような 指示を飼い主さんにしてしまうかもしれません。
とにかくペットに異常を感じたら なるべく早く近所の信頼できる病院へ連れて行かれることをおすすめします。今回の亡くなってしまったヒナの飼い主さんも ヒナが餌を食べなくなったのを ヒナの体調に異常が発生したことに気付くべきなのに 自分のえさの与え方に問題があると勘違いして ヒナの口に突っこんで使用する強制給餌器をインターネットで調べて 慌てて購入して 嫌がるヒナに強引に使用したために こんな悲しい結末になってしまいました。
飼い主さんは 話をしてみれば 極普通の常識人に見えました。所が 飼い始めたばかりの小さなペットに一大事が起こってしまって 恐らくパニック状態になってしまい インターネットの間違った情報に従って行動したのだと思います。私も 偉そうなことを書いていますが 超ビビりの腰抜け野郎ですから 何か異常事態が発生すると 焦りまくって とんでもない大失敗を繰り返してきました。現在は どんな事態になっても絶対に冷静沈着な奥様がそばにいてくれますから 奥様に頼り切っていれば 何とか非常に困った事態も切り抜けられております。私の場合 すべて奥様便りなので 全然偉そうなことは申し上げられませんが 困ったことが起こった時を想定して どのような行動を取るのが一番賢明であるのか 普段から心の中で 準備しておく事が大切なのかもしれません。私の場合は 何時でも奥様がそばにいてくれるように 出来る限り大切に大切に扱うよう心がけております。

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