6月15日 怪我したカラスが入院しました

ここの所 怪我をしたカラスについての 問い合わせの電話が何件もかかって来ています。本日も夕方に電話がかかってきて 大阪市内でけがをしたカラスを保護したので 診察してくれないか と言う電話でした。近所の動物病院に電話をかけても 「カラスは害獣だから診察できない」とか[野生動物の事は 大阪府庁の管轄だから そちらに連絡するから 府庁からの連絡を待ってくれ」と言われたのだそうです。何時まで待っても府庁から連絡がないので ネットを検索していたら たまたま以前にカラスを診察したことをブログに書いていたので うちの病院の事を知って電話をかけてきたのだそうです。時刻は六時を回って薄暗くなっていました。
近所の病院に電話をかけたのが五時過ぎだそうですから もしその病院がちゃんと役所に連絡していたとしても 既に役所は閉まっている時間帯です。留守電に要件を吹き込んでくれたら いい方でしょう。誠意のある対応をするのなら そもそも自分の所で診察しないで 役所に責任を押し付けるような病院ですから 誠意なんて欠片もあるはずがありませんが、 担当する役所が 既に閉まっているのなら 役所からの連絡は 早くとも翌日の朝一番になることが分っているのですから その事実をカラスを保護した人に連絡するのが 当然だと思いますが 近所の病院からもその後は連絡がないとのことでしたから 何時まで待っても誰からも何の連絡もないでしょう。
最初に電話をかけた病院は 大阪市内の病院なのだそうで 大阪市には大阪市独自の獣医師会がありますから 私が所属していた大阪府獣医師会とは 野生動物に対する対応が異なるのかもしれませんが 怪我したカラスを善意で保護した人からの電話に対して 一軒目は 「カラスは害獣なので診察しない」二軒目は「役所に問い合わせないと どう対応するか決められないので 役所からの連絡を待ってくれ」と要するに診療を拒否されたのですから 大阪市獣医師会の方々の対応は一寸冷たいのではないかと 感じてしまいます。
大阪府の獣医師会は 野生動物の診療は原則として無料で対応するけれども その後の面倒は連れてきた人に責任を持ってもらう と言った形だったと思います。ですから 大阪府下のもう少し近所の病院に当たってみるようにアドバイスをしました。電話がかかってきたときには 来院されている患者さんがいらっしゃったので 簡単な指示しか出せませんでしたが 一段落してから心配になって もう一度そのカラスを保護した方に連絡してみました。自分が門真に住んでいるので 門真の病院に電話してみたが やはり診察できないと 断られたのだそうです。
その方が 声からして若い男性だと思いましたが あまりに困っていらっしゃるようなので うちは枚方でかなり現在地よりも遠いし 自宅からも近くないけれども連れてこられたら診察しますよ と言うと 直ぐに伺います とのことで はるばる当院にお越しになられました。来院されたのは 二十五歳の男性で 自分の車で来たのかと思っていたら なんとタクシーでやって来られたのだそうです。話を聞くと現在就職活動中で 就職のためのセミナーを受講するためにその会場に出かけたのだそうですが その会場の駐車場で 怪我しているカラスを見かけてしまい 放っては置けなくなってしまったのだそうです。自分が現在無職で 決して金銭的にも 精神的にも余裕がないはずなのに たまたま出かけた会場の駐車場で たまたま見かけただけのカラスを保護してしまうなんて 今どき珍しいぐらいに 優しい人だと 感心してしまいました。
早速カラスの診察を始めました。この前診察したカラスもそうでしたが 本日の子も恐らく巣立ったばかりの 辛うじて飛べるようになったばかりの ヒナの様です。特に外傷はなさそうです。只へたり込んでしまって 全くお尻が持ち上がらない状態でした。両足を念入りに触診してみましたが 骨折もしていないし 筋肉への損傷もなさそうです。無理に体を持ち上げて 立たそうとしてもふらついて 倒れてしまうのだそうです。そこで頭から顔を細かく診察しました。特に触診を嫌がるような部分はありませんが 目の動きに異常がありました。カラスの目は普通の状態では いわゆる黒目の部分しか見えないはずなのに 一定のリズムで白目が横に流れるように見えるのです。これは 頭をぶつけた時に起こる 眼振だと判断しました。つまり目が回っている状態なので 無理して立ち上がっても 直ぐにふらついて倒れてしまうのです。
体重を量って 脳のダメージを回復させる薬を注射で投与しました。時々羽ばたきますから 羽根自体には 特に問題がなさそうです。ペースト状のドッグフードを注射ポンプでくちばしの隙間から流し込みましたが 最初はかなり抵抗しながらも 何とか食べてくれました。これなら安静にしていて 飲み薬を定期的に与えれば 目の回っている状態が治まれば 割と短期間で自然に帰してやれるかもしれないと 話しました。所がその時にカラスを連れてきた男性が 明日から宮崎の実家にはずせない用事があり一週間以上戻って来れないので 十日間ほど入院させてほしい との申し出がありました。
いきなり明日から面倒が見れないのでは 致し方がないので 仕方なく十日間ほど預かる事にしました。勿論それまでに元気になってしまえば 空を飛べる状態になっていたら 放鳥することまで了解をもらって預かりました。
本来なら このカラスとは縁もゆかりもない善意の第三者が連れてこられたのですから 無料で対応すべきなのかもしれませんが かなり気の強い暴れん坊のカラスみたいなので 就活中の人から申し訳ないけれども ウン万円頂きました。後払いで良いと話したのですが 先に支払っておかないと 払いたくなくなってしまいそうなので受け取ってほしいと言われて 先払いで治療費と預かり料を頂きました。
一段落した時には 既に夜の九時近くになっていましたので 連れてきた男性を枚方市駅まで 車で送りました。これがもし若い女性なら 門真まで送ったかもしれませんが 私は男性に興味がありませんので しょうが無いでしょう。
カラスは非常に賢い鳥で 面倒をみていると 直ぐに自分を助けてくれる存在であることを理解して 懐いてくれます。そうなると結構可愛さを感じてしまい 愛情が湧いてきます。この子は 結構気が強そうなので 最初は一寸手こずるかもしれませんが 大切に扱って早く元気にしてあげるよう頑張りたいと思います。

ブログ一覧