6月20日 飼い主さんのご家族の不協和音に驚きました

昨夜 時間外に電話がかかってきて 犬が玉ねぎを食べてしまったので 直ぐに診てほしいとの要件でしたので 直ちに来院してもらいました。飼い主さんの話だと たまたま実家に犬を連れて帰っていて 玉ねぎのたっぷりと入ったハンバーグを テーブルの上に置いていたところ まさか犬がそのテーブルの上に上がれるとは思っていなかったのだが 犬が何とかテーブルの上に飛び乗って ハンバーグを丸々二個も食べてしまったのだそうです。予想よりも早く来院されたので 話を聞きながら 取り敢えずは 催吐剤を口に流し込みました。暴れてかなり嫌がりましたが 飼い主さんが上手に 犬をコントロールしてくださったので それほど苦労せずに催吐剤を必要量飲ませる事が出来ました。
一二分もするとすぐに 胃の中に残っていた ハンバーグを吐き出してくれました。のうぼんに受け止めて 吐き出したハンバーグの量から見当をつけると吐き出したのが ほぼ一個分ぐらいなのだそうでした。三回ほどに分けて嘔吐しましたが その後はすぐに落ち着いてしまったので 胃の中に残っていたものは それ位しかなさそうです。体重が2.5キロぐらいの犬ですから 正味一個分のハンバーグに含まれた玉ねぎが 腸に流れ込んで 吸収されてしまうのでしょうが 普通の大人の体重に換算すると ハンバーグ二十個分位に相当しますから かなりのダメージを受ける事が 想像されます。
ネギ中毒 という病気の名前は 有名ですから ご存じの方も多いと思いますが ネギや玉ねぎ、ニラなどに含まれる成分(有機チオ硫酸化合物)によって赤血球が破壊され、貧血が起こってしまうことを言います。少量であれば問題ありませんが 大量に食べてしまうと 貧血により元気消失や 脈及び呼吸が促迫したり 可視粘膜の蒼白 詰まり舌の色や歯茎の色が白くなったりします。場合によっては 嘔吐や下痢などの症状がみられる場合もあり 重症化するとけいれんや呼吸困難の状態になり 命に関わる場合もあります。
この子の場合 かなりの量のハンバーグを吐き出してくれましたが 一個分ぐらいは消化吸収されてしまうことが 予想されましたので 取り敢えずは 有害成分の作用を弱める薬や造血機能のある 骨髄や脾臓を刺激して 貧血による症状を和らげる薬を 皮下点滴と共に投与しました。同様の効果が期待できる内服薬を飲みやすいシロップにして渡して 四五日は内服させてもらうようにしました。明日以降安静にしておいてもらえれば そんなに大ごとにならずに すみそうに思います。
治療とお会計が終わり お帰りになるときになって 来院するときは 実家のご両親が 車で送ってきてくれたのだそうですが 車での道中に ハンバーグを食べたのは この子の口が届くところに置いておいた人が悪いのか この子の普段からのしつけがなっていないからなのか と責任の所在を口論して 喧嘩になり ご両親が 怒ってしまって 息子さんである飼い主さんと玉ねぎを食べてしまったワンちゃんを降ろしてそのまま帰宅してしまったのだそうです。まあ私の所もそうですが 父親と息子の仲があまりよろしくない家庭は多いと思いますけれど 車には 良きクッション役であるはずのお母さんも 乗車されていたはずですから お母さんが治療が終わるまで 車を停めて待っていようと言い出されてもいいのではないかと思ってしまいます。
まあお母さんとしては ハンバーグをテーブルの上に置いたのはご自分でしょうから 責任を感じて 口出ししにくかったのかもしれませんし 今どき珍しいのかもしれませんが お父さんが絶対的権力者として君臨しておられるご家庭なのかもしれませんので これ以上の口出しは 控えますが 息子さん一人を置いて帰るのならまだしも 下手したら命に関わるかもしれないペットを連れているのですから 帰り道も同乗させてあげていただいてもいいのではないかと思ってしまいました。
結局 タクシーを呼んでお帰りになりましたが 実家に戻ってからの気まずい雰囲気を想像してしまうと 出来たらお父さんがならぬ堪忍するが堪忍で 息子さんとペットの治療が終わるのを待っていてあげてほしかったように思います。息子さんと話していて かなり頭の切れる方みたいで 理路整然と経過や症状を説明される様子から窺って かなり理詰めで 物事を考えて 的確に判断されるようでしたから ひょっとしたら 普段はいないワンちゃんが たまたま存在したのだからしょうがないようにも思えますが このワンちゃんの口が届くところに 美味しそうなハンバーグを置いてしまったお母さんに対して ある意味的確に ひょっとしたら残酷な表現で お母さんの責任を追及してしまったがために お父さんが余計に腹をたてられたのかもしれません。
よそのお宅について 余計な邪推は止めておきましょう。但し 今回の事件において ワンちゃんは あくまでも被害者の立場であると思いますから 今後息子さんのご実家でいづらい雰囲気にはなってほしくないのと 同様の失敗を繰り返さないようにだけは 気を付けてあげていただきたいと思ってしまいます。私も 最近また父親と頻繁に顔を合わせる機会が増えましたので 口喧嘩をする頻度も高くなっております。93歳にもなって 半分ボケた父と むきになって口論する私は 非常に大人げない人間だと思いますが やっぱり親子というのは 死んで縁が切れてしまうまで その相性というか 関係性は変わらないのかもしれないように思います。

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