6月8日 裏のアパートの排水溝に 子猫が二匹潜り込んで居座っています

昨日 手術をしていて 何とか無事に手術が終わりました。六歳の犬の避妊の手術でしたから 勿論細心の注意は払って行いますが やりなれた手術ですから すんなりと終わるはずでした。所のその子は 別に特異体質とまではいえませんが 麻酔が全然安定してかかってくれなくて困ってしまいました。当院では 手術中人工呼吸器を用いませんので 全身麻酔をかけますが 基本的に自発呼吸をさせながら 手術の作業を行います。
麻酔前投薬剤を静脈から注射して 半分眠らせておいてから マスクで更に深い麻酔状態に持っていきます。意識が完全になくなってから 気管チューブを挿管します。普通の犬は大体麻酔薬の混入率が1バーセント位で 安定した自発呼吸をするようになりますが その子は1パーセントで維持すると直ぐに自発呼吸が止まってしまうのです。刺激を与えて自発呼吸を呼び覚ましてから 今度は麻酔の濃度を0.5パーセントに弱めると しばらくしたら殆ど覚醒してしまって動き出すのです。
一瞬 麻酔が安定しないので 手術を諦めようかとも思いましたが 飼い主さんが その子の生理中に 出血が多くて部屋が血だらけになって困る と仰っていましたので 気を取り直して 気合を入れ直して かなり手こずる手術になることを覚悟して あえて手術を実施しました。一旦手術を始めてしまえば 私は手術の手順をこなすことに神経を集中しますので 麻酔の微妙な調節は 奥様にお任せしてしまいますが 頭の回転が速くて機敏な奥様は 上手に麻酔を調節してくださいましたので 相当に手こずりましたが 無事に手術を終了しました。
手術を終えて麻酔を切ってホッと一息ついた時に 猫の鳴き声が聞こえてきました。それまでも聞こえていたのかもしれませんが 手こずった手術に集中していて聞えなかったのかもしれません。しかし 昨日は猫をホテルで預かったり 入院している子もいませんでした。手術の後始末をしている最中も 時々猫 それも子猫らしい鳴き声がちょくちょく聞こえます。
どうやら裏口の方から聞こえてきているみたいなので 片付けが一段落したら 奥様が浦の通路の辺りの様子を見に行きました。裏口から勝手口まで金網で仕切られた通路になっていて その裏は一段低くなった土地で うらにあるアパートの駐輪場になっています。一段低くなっていますから コンクリートの壁になっていますが その壁沿いに排水溝があり アパートの住人用のゴミのコンテナが三つ並んでおいてあります。排水溝はオープンになっている部分と地下にもぐっている部分がありますが どうやらその地下にもぐっている部分に子猫が二匹潜んでいるみたいなのです。
現在は雨が降っていませんが 雨が降ると当然排水溝ですから水が流れ込み 子猫にとっては安全な隠れ家ではありません。奥様が確保できるのなら保護してあげようと 近づきましたが 人の気配を感じると排水溝の地下の部分に逃げ込んでしまいます。野良猫が人を見た時に すり寄ってくるような人懐こい子なら 保護して面倒をみてあげられますが 一目散に逃げこむような場合は マタタビなどを使うなど 特殊な方法でなければ確保は難しいので 私はすぐに諦めました。
所が夕方にまた出かけるときに様子を見ると 子猫の鳴き声が聞こえて気づくのは 私だけではない様で 段ボール箱と器に水と餌が置いてありました。どこかの馬鹿が野良猫に餌を与えたみたいです。可哀そうな子猫たちを救ってあげる救世主気取りなのかもしれませんが そんなことして その子猫が居ついてしまったら 迷惑をこうむるのは 私を含めてアパートの住人です。
直ぐに撤去しようかとも考えましたが 困ったことに 野良猫に餌を与えていい気になっている馬鹿はどこにでもいる訳だから まあ仕方がないか と放置しておきました。問題は本日の昼に 往診に出かけるために裏のドアから出て 往診する猫に状態について 奥様と話しながら うらの通路を通って勝手口から出ようとした時に起こりました。「静かにして、子猫がびっくりするから」と いきなり駐輪場に立っているオバサンから声をかけられました。
そのオバサンが言う事には 「今子猫を餌でおびき寄せて保護しようとしているから しずかにして」と言うのです。そのおばさんは初めてみましたから 恐らくアパートの住人ではありません。私は野良猫に餌を与えることはやめるように注意しましたが そのオバサンは 自分はあくまで可哀そうな子猫を保護してあげる正義の味方気取りで 偉そうに文句を言ってくるのです。
私はこの病院の経営者であることと名前を名乗りました。名前と住所を訊ねましたが 勿論答える訳がありません。エサや水を与えたら 当然排便 排尿をするわけで その悪臭と掃除の手間暇で あんたは他人に迷惑をかけているのだから そんな迷惑で馬鹿な事は直ぐにやめるように言いましたが そのオバハンの言う事には「人間はみんなお互いに迷惑をかけながら生きているのだから ある程度の迷惑はしょうがない。」等と滅茶苦茶な理屈を吐くのです。
確かに人間が生きていると言う事は 大なり小なり 他人に迷惑をかけながら そして気づかぬうちに助けられながら 成り立っているのかもしれませんが だからと言って そのオバハンが 偉そうに私が私の病院の敷地内の通路を歩き普通の声の大きさで喋っているのを 遮るのは どう考えてもおかしいでしょう。糞尿の悪臭や後始末で 確実に他人に迷惑をかける行為だから 直ぐに辞めるように注意してあげたこっちが なんで文句を言われなければならないのでしょうか。
確か京都市は 条例で「野良猫に餌を与えると罰金刑に処する」と言うのがあったはずですから 警察に連絡すれば そのオバハンを直ぐに捕まえに来てくれるのでしょうが 残念ながら枚方市には そのような条例はないはずです。しかしそのオバハンは 他人の私有地に侵入して 猫に餌を与えて長時間居座っているのですから 少なくとも警察に連絡すれば 排除には来てくれるはずです。
結局そのオバハンとは 口論しただけで それ以上の行動は 私も起こしませんでした。一時間後ぐらいに 往診から戻った時にもしそのオバハンがまだいるようなら警察に連絡しようかと思っていましたが さすがにいませんでした。けっきょく そのオバハンとは 売り言葉に買い言葉で お互いにかなり汚い言葉で罵り合いましたから うちの病院の評判はまたまた悪くなってしまったのかもしれません。
野良猫に餌を与えることは 明らかにその周辺の人たちに確実に迷惑をかける行為ですから 餌を与えてあげて 自分がいかにもいい事をしている と言った間違った自己満足は得られるかもしれませんが まともな倫理観を持っている人間なら 絶対にしないでほしいです。うちの近所に生息する野良猫は その子猫だけではありませんから 餌を置いておいたら 他の野良猫まで 呼び寄せてしまうかもしれないのです。
うちは動物病院ですから うちの近所に犬のふんが落ちていると うちに文句の電話がかかってくるのです。今どき野良犬は現実には存在しないはずですから 恐らくモラルのない飼い主が 散歩中に糞の後始末をおろそかにしたとばっちりで 苦情の電話の対処までしなければならないのです。もし野良猫が居ついてしまって その糞尿の悪臭が漂い出したら うちとは縁もゆかりもないのに また苦情を持ち込まれるかもしれないのです。
私は 病院を開業して二十年以上が経ちますが 無責任な飼い方をしている飼い主は 遠慮なく叱り飛ばすし 今回のような理不尽な言いがかりをつけられた時にも 徹底的に自分の信念を貫いた発言を 繰り返してきました。動物病院とはいえ サービス業であり客商売の端くれですから もう少し評判を気にした方が 患者も増えるし 儲かりもするのは分っていますが 自分の病院を経営するからには 自分の信念を曲げてまでもやっていきたくはありません。これからも評判の悪い病院であることを自覚しながらも それでも私を信頼して来院してくれる飼い主さんの 気持ちに精一杯答えて 仕事に励もうと思います。

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