7月22日 久し振りに猫の避妊の手術をダブルヘッダーでやりました

正直 年をとってきてからは全身麻酔の手術を一つやり遂げるとかなり疲労を感じるようになりましたから なるべく日程をずらして 一日一手術をもっとうに仕事をしておりますが どうしても本日はどちらの飼い主さんも ずらせない都合があったみたいなので 仕方なく準備万端整えておいて お昼の十二時ちょうどに一件目を開始しました。年齢はどちらも一歳前後の健康体でしたから その点は割と気楽に手術を始められました。
先ずは麻酔前投薬の薬を筋肉注射して マスクを被せて ある程度麻酔が効いてきたら 気管チューブを挿管します。麻酔が安定してかかったら あおむけにして四肢を紐で手術台の真ん中に括り付けて固定します。奥様が術野の毛をバリカンで 刈り取り 薬剤で清潔な環境を作っている間に 私は手を洗い 帽子をかぶりマスクをつけてから 手術着に手を通します。滅菌した手袋を装着してから 麻酔が安定してかかった動物と向かい合います。まずは覆い布をかけて タオル鉗子で固定します。普段は縦横四か所を固定しますが 当院にはタオル鉗子が六個しかないので 三個ずつに分けて滅菌していますから 手前の部分はタオル鉗子をかけませんが それほど問題はありません。
当院は獣医師が私一人の小さな病院ですから 当然手術台も麻酔器も一つずつしかありませんので 手術に用いる器具の数にもそれほど余裕がありません。二件分同時に滅菌すると いつもよりも数が少なくなってしまう器具もありますが その分慎重に手術しますので これまで問題が起こったことはありません。メス刃ホルダーにメス刃を装着したり 結紮する絹糸を鉗子に挟んだりして 術前の準備をします。有難い事に麻酔は安定してかかってくれていますし 呼吸も落ち着いているみたいなので 早速手術を始めました。おへその下の部分から正中線に沿って十センチほど皮膚を切開しました。
ガーゼで出血をふき取り 鉗子で皮下組織を開いて 白線上にメス刃を入れてハサミで切開します。直ぐに腸が飛び出してきましたから 結構腹圧が高いようなので 慎重に腸を腹腔内に押し戻してから 子宮を探りました。子宮が奥に引っ込んでいてなかなか見つからない子もいますが この子は直ぐに指先に引っ掛かってくれましたから 引っ張り出しました。卵巣の部分まで慎重に引っ張り出してから 子宮と卵巣のつなぎ目辺りに鉗子をかけて ガーゼで持ち手の部分を覆って 奥様に持ち上げて頂きます。
私は卵巣の下端の部分に絹糸をかけて 出来るだけ強く結紮します。動脈を切断しますので 二重に絹糸をかけて 丁寧にしっかりと結紮してから 丁度結紮した部分をピンセットで挟んで その少し上の部分にハサミを入れて 切断します。切断した動脈から出血していないことを確認してから 元の位置に戻します。直ぐに反対側の子宮を探して同じ作業を繰り返します。卵巣が無事に切り離せたら 卵巣と子宮のつなぎ目を挟んだ鉗子の握り手の部分を二つともガーゼでくるんで 奥様に持ち上げて頂いて 子宮体の部分にやはり二本絹糸をかけてしっかりと結紮してから 今度も結紮した部分をピンセットで挟んで その少し上の部分で切断して 子宮と卵巣を切除します。残った子宮の部分からの出血が無い事を確認してから 元の位置に戻します。腹腔内をもう一度よく確認して 予期せぬ出血などの異状が無い事をしっかりと確認してから 縫合して切開した部分を閉じ合せます。
一件目は 非常にすんなりと作業が進みましたので 手術を終えて 麻酔を切った時に時計を見ると 一時十五分でした。勿論手術は時間が短ければいいわけではありませんが 順調にスムーズに作業が進むに越したことはありません。麻酔から順調に醒めてくれて 呼吸が安定している事を確認してホッとしました。二軒目の準備をしながら 様子を見ていると無事に対上がってくれましたので 犬舎の入院室に戻しました。三十分ほど休憩しました。ゆっくりとアイスコーヒーを飲みながら のんびりパズル麻雀に興じました。ドクターエックスの様に シロップだけを飲むようなことはしませんが 結構甘い目にした方が美味しく感じます。
二時少し前に二件目の手術を始めました。二匹目の子は 麻酔が少し強いと直ぐに呼吸が停止してしまうデリケートな子でしたので 麻酔を出来るだけ浅くかけるように心掛けましたが 麻酔が浅い分 術中に動き出す心配がありましたので 麻酔の調節を細目に切り替えながら 慎重にするように奥様に指示を出してから始めました。麻酔が安定してかかってくれるか否かが 手術が順調に行くか行かないかの境目になることが多いのですが 割と安定してくれていましたので 二件目も殆ど問題なく すんなりと終了できました。
手術の器具を洗って乾燥機に入れて 手術室の片づけが終わったのは 三時半頃でしたが ホッとしたとたんに背中にかなり強い筋肉痛を感じました。手術中は 緊張しているので 殆ど自覚していませんでしたが 肩から背中の上半分ぐらいが ガッチガチに凝り固まってしまったようです。私は血圧が高めのせいか 普段は殆ど肩こりを自覚していませんが 手術を二件続けてやり遂げると さすがに筋肉痛に襲われてしまいます。一日に一件だけなら殆ど肩こりを自覚しませんがやはり年をとった証拠かもしれません。若い頃なら 夜に病院を閉めてからもう一件手術をこなすトリプルヘッダーも何度か経験しましたが 還暦を過ぎた現在では とても無理な話です。
やはり自分の年齢をよく自覚して 手術は一日に一件しか受けない方針を徹底した方が いいように思います。本日無理をしたことの影響が 明日以降に残らなければいいのですが 正直あまり自信がありません。自分が年寄りであることを認めるのは 結構悲しい事ですけれども 事実なのですから 素直に受け入れて生きていくしかありません。誰だって平等に若い時があれば 間違いなく確実に年寄りにもなりますから 自分の立場を素直に受け入れて生きていこうと 反省した一日でした。

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