7月6日 「終わった人」と言う映画を観てきました。

「終わった人」と言うのは サラリーマンを勤め上げて 無事に定年を迎えた人を主人公として その悲哀をコミカルに描かれている映画です。私も還暦を通り越しましたから サラリーマンを大人しく勤めあげていたなら 定年を迎えていたのではないのでしょうか。サラリーマンの場合 勿論業種や勤める会社によって そしてもちろん本人の働き具合によって お給料は千差万別でしょう。税金も天引きされてしまいますから 誤魔化しようがありません。その他に 保険料や年金代などどんどん天引きされていきますから 手取りで受け取れる金額はかなり目減りしていましたから 給料のいい製薬業界でしたが 結構がっくりきていました。
でも サラリーマンを勤め上げると かなり高額の厚生年金を死ぬまで受け取れますから 今になってみると羨ましい限りです。私の受け取れる年金は 殆ど国民年金だけで かけた年月も多くありませんから ほんのお小遣い程度しか受け取れません。塩野義製薬 と言う誰でも知っている大きくて立派な会社に勤めていましたから そりゃあ勤め上げる苦労は並大抵ではなかったでしょうが 安定しているし 問題でも起こさなければ かなりのお給料を確実にもらえるのですから 悪い身分ではないように思います。
先日の高校の同窓会で たまたま同じクラスに 塩野義製薬の同じ部署に入社した友人がいましたので 話を聞いて凄く感心したし 厳しい会社を勤め上げていた彼に 改めて尊敬の念を強く感じました。最初は製薬会社の営業ですから 当然外回り つまり病院を回って自分所の薬を使ってもらうための働きかけが 仕事です。私が配属された部署は 関西東海北陸地方の 大学病院及び大病院を専門に回るところでした。私は 最初の赴任地が金澤でしたから 当然金沢大学を担当しました。
塩野義と言う会社では ドクターとどの様な会話をしたのかを 一字一句もらさないで報告書にまとめて 提出しなければなりませんでした、私は最初の頃には 正直に正確にドクターとの会話を文章にして報告していましたが 上司との面接のときにその書類を提出すると 上司は不機嫌で 注意と言うかお小言ばかりを頂戴しておりました。私は 二三年先輩にあたる人に相談した所 その報告書は正直な会話を再現するのではなくて 理想的なドクターとの言葉のやり取りを書けばいいんだよと教わりました。
私は驚きましたが アドバイス通りに 模範解答的な報告書を書き上げて 提出した所 上司はご機嫌で 初めて褒めてもらえました。現実とは異なっていても 何時も理想的なドクターとのやり取りを頭に描いておけば 何時かそんな理想的な会話が出来るようになるんだよ と言われ その場では何となく納得できたような気がしました。しかしその後は 嘘に嘘を重ねたような北酷暑を毎回提出することに嫌気がさしてきました。報告書では凄く好意的な発言をしてくれるドクターに 冷たい言葉を浴びせられた時など もうそんな病院にでかけたくなくなってしまいました。
そんな事は 仕事をこなしていくうえでは どんな業種 職種であれ あるに決まっているのだと思いますが まだ二十代の若造だった私は とてもこんな仕事一生続けてはいけないと考えるようになり 子供のころからあこがれていて 一旦は諦めた仕事 動物病院の先生にもう一度チャレンジしてみようと考えるに至ったので 会社を辞めました。塩野義を勤め上げた友人も 勿論似たような悩みは抱えていたのでしょうが 私よりも大人だったみたいで 上手に仕事のストレスをコントロールして乗り切ってきたみたいです。
さて映画の主人公は 会社を辞めてから 特に再就職も目指していなくて のんびりと過ごそうとしたのですが 時間を持て余して スポーツジムに通うようになり そこで知り合った若者の会社を手伝うようになりました。その若社長が急死して 社長に就任するところ辺りがリアリティに欠けるのですが その会社が倒産してしまい その負債の一部を 背負わされることになり 円満だった夫婦の危機になったりしてしまいます。最後は地元に帰り 小さな組織の事務仕事を手伝う事で落ち着いて 何とか夫婦の危機も無事に乗り越えて めでたしめでたし と言うお話しでした。
結局は 定年を迎えても 何かしら仕事をしていないと 時間を持て余してしまうのが 長年サラリーマンを勤め上げた人に染みついてしまった習性なのかもしれないと思いました。私の一つ目の大学の同期の連中も 皆定年を迎える前から 再就職先を準備して 殆ど間を開けずに働き続けています。十分な退職金をもらい たっぷりとした厚生年金をもらえることが約束されているのですから 退職したらその日から 思い切りのんびりしたらいいのに と私は思ってしまいます。
但し 現在は年金を受け取れるのが65歳からなので 年金を受け取れるまで 退職金を食いつぶすのが嫌なのかもしれませんが 取り敢えずは年金が受け取れるようになるまでのつもりで 働き続けるのが当たり前なのだそうです。まあサラリーマンと言うのは 何とか毎日会社に出かけて 大きなミスでもしでかさなければ そんなに頑張らなくても お給料が保障されている羨ましいご身分ですから 定期的に年金を受け取れるようになるまで サラリーマンを続けたいという気持ちが分らないでもありません。
でも私は自営業ですから 患者さんが来てくれなければ 一円も収入がありません。どんなにこちらがやる気満々で 準備して待ち構えていても 患者さんが来院してもらえなければ 働けないのです。逆に 今日はもう十分に働いたので あとはゆっくりと休もうと思っている時間帯に 急患の電話が入ると 勿論結構な収入にもなりますので 喜んで対応することが多いです。兎に角私の仕事は 完全に他力本願で 仕事の量も 収入の金額も千差万別なのです。まあだから 朝病院のシャッターを開けるときに ワクワク感が味わえるのですが 待てど暮らせど患者さんが来てくれないと 待ちくたびれた上に 全くの無収入に終わってしまう事も 少なからずあるのです。
そんな不安定な仕事を 三十年近くもやってきていますから 定期的に決まった金額のお給料を受け取れるサライーマンさんたちとは 仕事やお金に対する感覚が大きく異なっても致し方がないのかもしれません。それに自営業ですから 自分の意思で仕事を辞める時を決められますから 心の準備や 経済的な面での準備が キチンと出来てから仕事を辞めますので その翌日から 目一杯残りの人生を楽しむ計画が目白押しで 退屈を持て余すような心配は全くありません。
どちらの生き方の方が 幸せなのか分りませんが 私は私の生き方を通すしかありませんので 恐らく私が終わった人になるのは 体が動かなくなって 楽しみたい事を楽しめなくなってしまった日の事だと思います。その日を少しでも先送りするために 健康には注意して元気で長生きできるように 努力しようと思います。

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