8月11日 犬が散歩中に 突然ひっくり返り呼吸が停止した子が来院しました

夕方の診察時間に すごく切迫した状態の飼い主さんから電話が入りました。まだ一歳と若い犬が ごく普通に元気よく散歩に出かけたのだそうです。公園でお散歩友達の子とであって 元気に走り回っていた所 急にひっくり返って起き上がれず 殆ど呼吸もできていないのだそうです。その場所が 割とうちの近所だったので 出来るだけ早く連れてきてもらえれば 救命処置によって 息を吹き返す可能性がありますと答えました。
結局病院に到着されたのは それから十分後ぐらいでした。聴診器を胸にあてると 心音が微かにその名残だけが聞えました。呼吸が停止してすでにかなり時間が過ぎていますし 年齢が若いとはいえ 正直蘇生する可能性はかなり低い事が直ぐに判断できましたが 僅かな可能性がある以上は 取り敢えず手術台に運んで 酸素マスクを被せて 心臓マッサージを行いました。直接心臓に動き出してくれることを期待しての薬剤を 注射してマッサージを繰りかえしました。二分ほど マッサージをしてから 聴診してみましたが 心臓が動き出す気配はありません。
再度心臓に直接薬剤を投与して マッサージを続けましたが やはり心臓が再び動き出すことはありませんでした。瞳孔反射も全くありませんし 呼吸が停止してしまってから 二十分以上が経過していましたので もう回復 蘇生の可能性はない事を飼い主さん 二十歳前後の若い男性に説明しましたが もう少し頑張って心臓マッサージを続けて欲しい と希望されましたので 再度心臓マッサージを継続しましたが 残念ながら 奇跡は起こらずその子の死亡が確定しました。
何時まで心臓マッサージを続ければ 飼い主さんが納得してくれるかと 途惑いながらマッサージを継続していましたら 急をききつけて飼い主さんのお母さんが駆けつけてこられました。お母さんに現状を説明した所 まだ若くて元気盛りの犬の突然の死を受けとめられず 一瞬意識をなくしかけられましたが 何とか踏みとどまって 事態を理解することに務められたみたいで しばらくして落ち着かれてから 継続していた心臓マッサージに ストップをかけてくださいました。
お母さんが駆けつけてこられるまで 連れてこられた若い男性は 泣きじゃくっておられました。正直な所 殆ど死んでいる状態で連れてこられましたから 原因が何であるのか 大雑把な推測しかたてられません。普段のこの子の様子を全く私は知りませんから 致し方のない事だとは思いますが この凄く蒸し暑い時期に 仲良しの友達と出会って 気持ちのテンションが上がり 全力疾走をしていたみたいですから 心臓に凄く大きな負荷がかかってしまっての 心臓発作であるだろう としか申し上げられませんでした。
今回のこのアクシデントは この子の非常に短い人生を突然終わらせてしまいましたから 凄く悲しい結末となりましたが 飼い主さんご一家が この子の死をこれだけ悲しまれるのだとしたら 僅か一年間でしたが 凄く愛されて面倒をみてもらえていたのでしょうから ほったらかしにされて生きているだけの犬を少なからず知っていますので この子の短い人生は それなりにすごく幸せなものだったと思いますと 飼い主さんにその気持ちをお伝えしました。
ただ散歩に出かけた時には 普段と変わった様子がなかったという事ですから ひょっとしたらこの子には 先天的な心臓に疾患を抱えていたのかもしれませんが 亡くなってしまってから 正確で細かい検査は出来ませんし 勿論現実的に無意味なので実施しておりませんから それ以上の事は申し上げられません。この時間帯に散歩に連れ出したことも 極日常的な事の様でしたから 付き添っていた若い男性に落ち度は何もなかったように思います。当たり前ですが 亡くなってしまったワンちゃんにも責任はないのでしょうから 不幸な悪条件 ストレスが 一時にかかってしまったために 心臓の発作が引き起こされただけの事の様に 推測されます。
私はこの仕事を長年やっておりますので このような不幸で悲しいアクシデントとは 何度も対面しておりますが 勿論この飼い主さんご一家にしてみれば 初めての事でしょうし ショックを受けられるのは 当然のことだと思います。お母さんが駆けつけるまでの間 若い男性は号泣しながら 受け入れがたい事態に 何度が嘔吐されていたみたいです。この不幸な事件が 全部自分の責任だ等と 勘違いされないように 何度もお話ししましたが どこまで理解されたのか 疑問ですし 今後上手く気持ちを切り替えていけるのか 凄く心配しております。
つい先日 安楽死と言う処置を実施して 私自身が結構落ち込みましたが 本日のこの悲しい事件のダメージもかなり大きそうです。やっぱり 一日でも早く引退して このような辛い場面との遭遇を避けて生きていきたくなりました。かといって明日仕事を辞めます とは言えませんので 私なりに気持ちをうまく切り替えて 頑張っていこうと思っております。

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