8月13日 季節外れの尿詰まりの猫がやってきました

猫の尿結石による尿詰まりは 冬にはちょくちょく発生しますが こんな真夏には珍しいケースだと思います。昨日まではトイレに頻繁に しかも長時間座っているが あまりおしっこが出ていなかったのが 本日になって完全に出なくなってしまったので来院したのだそうです。

人間も含めてすべての動物がそうだと思いますが おしっこは三日でなかったら死にます。おしっこが出にくい状態になっている と言うのは非常に危険な状態なのです。便が毎日でない状態を便秘と言います。人間でも男性はあまり縁がないと思いますが 女性は結構な確率で便秘にお困りの方がいらっしゃるみたいですが 私は経験がないので想像もできませんが 便秘は便秘で辛いこともあるとは思いますが一週間もあるいはそれ以上も便がでない状態になっても それだけで命にかかわることは あまりないのじゃないかと思います。だからかもしれませんが 特に女性の飼い主さんは おしっこが出にくい状態になった時の危機感が全く足りないような気がします。

兎に角おしっこが出にくい状態になったら 非常に危険な状態ですから 可及的速やかに病院に連れて行って 適切な治療を受けるべきです。この子も昨日までは 辛うじてでもおしっこが出ていたわけですから 尿道に微かに隙間が空いていたはずなのに 本日は完全に詰まってしまっていますから そのわずかな隙間にまで結石が詰まってしまったのでしょう。

当院では尿道にカテーテルを入れる処置をするときには 全身麻酔をかけます。私が研修した病院では麻酔をかけずに それこそ力づくで押さえつけながら カテーテルを尿道に通していました。尿道カテーテルを挿管するのは 普通結石で尿道が詰まってしまっている場合が殆どです。

詰まっていない尿道にカテーテルを通すのでも猫にすればかなりの恐怖心と苦痛を伴うように想像しますが ましてや結石で詰まってしまっている尿道に カテーテルを通す作業は 単純に力をかけて通そうとしますが 簡単に通らない場合には普通の水で水圧をかけたり それでも通らない場合は 超音場の振動を加えた水で水圧をかけたりして 何とか挿管します。

当然相当な時間がかかりますし 勿論苦痛も恐怖心も伴うはずですから このような作業をもし自分がされるとしたら 絶対に麻酔をかけてやってもらいたいです。猫でも同様だと思いますから 当院では最初から全身麻酔をかけて処置を始めます。飼い主は以前にも一度尿が詰まった経験があるように話していましたが 今回は二回目なので 尿道に一回目に詰まった時の痕跡が残っているのでしょうから 猶更挿管するのに苦労しました。

辛うじて膀胱までカテーテルが通り 溜まり切っていたおしっこを吸い出してあげました。真っ赤で殆ど血液みたいなおしっこでした。暖めた生理食塩水を膀胱に流し込んでは 排出して 膀胱内を洗浄しました。一旦カテーテルを抜いてみましたが すぐに詰まってしまって とても自力でおしっこを出せる状態ではなさそうなので もう一度カテーテルを挿管して縫い付けました。数日留置しておけば その間に膀胱内や尿道の状態も改善されるでしょうから 何とか自力でおしっこが出せるようになるでしょう。

何時もは尿道カテーテルの作業は寒い時期にやりなれているので この暑い時期に久しぶりにやると 何となく違和感がありましたが 何とか無事に処置できましたのでホッとしました。無事に回復してくれて 自力でおしっこが出るようになってくれたらうれしいのですが 今後は予防的に食餌療法を続ける必要がありますが 前回も勧められてきちんと実行していない飼い主さんなので そこが心配です。 次に詰まってしまった場合には あるいは尿道をお腹に固定する手術が必要になるかもしれないので その点をきちんと説明して 食餌療法の重要性を理解してもらえるように頑張ろうと思います。

ブログ一覧