8月2日 前足をねん挫したウサギが来院しました

三歳の元気の良い男の子で 普段から部屋の中で放し飼いにされていて 留守になるときだけ ケージに入れられるのだそうです。夜中も部屋の中でフリーの状態にしてあるのだそうですが 今朝飼い主さんが起きて様子を見ると ウサギがケージの上面の部分に前足の手首の辺りが引っかかって 宙ぶらりんの状態で発見されたのだそうです。慌てて 病院に駆けつけられましたので 治療させていただきました。足首の状態を視診 触診してみました。皮膚に傷はありませんので 出血などは認められません。それ程腫れ上がっているわけでもありませんが その部分を触ると かなり痛がって暴れましたから 左前脚の手首の部分に捻挫が起こっていると診断しました。
何らかのアクシデントが起こってから 数時間は経過しているらしいのですが 特に腫れも熱発もありませんし 関節は正常に動きましたから 骨折や人体の損傷は 無さそうです。触ると痛がる反応はしましたが 経験上 骨折している場合の痛がり方とは違い 大分程度が軽い嫌がり方でしたので レントゲンは撮りませんでしたが 診断しました。全身他に異常がない釜で確認して 診断を終わりました。宙ぶらりんの状態になった時に 暴れて二次災害的に他の足などにダメージを受けている場合もありますが この子の場合は大丈夫でした。
治療としては 現在かなり辛そうな状態ですので 消炎剤と抗生剤を皮下に注射しました。消炎剤というのは名前が表す通り 炎症を消し去るための薬です。炎症とは 疼痛分かり易く言うとその部分に生じる痛み、発熱、腫脹分かり易く言うとその部分が腫れ上がる事、発赤分かり易く言うとその部分の血行が増すために赤くなってしまう事、そして機能障害分かり易く言うと 例えば手首が曲がらなかったり逆に伸びなかったりという症状の事です。この子の場合 腫脹や発熱はありませんが 疼痛と前足を浮かせてしまうなどの機能障害が認められましたので それらの症状を和らげるために 消炎剤を投与しました。
抗生剤とは 細菌をやっつけてくれるお薬ですが この子の場合特に外傷はありませんが 体内にも細菌は潜んでおりますので そいつらが体内のダメージを受けた部分で 増殖して被害を受けないようにと 感染予防のために投与しました。但し 皮下注射で投与した薬は 効果が出るのは割と短時間なのですが その効果の持続時間もどうしてもも短くなってしまいますので 治療を継続するために 甘くておいしい 飲みやすいシロップのお薬を内服薬として お渡しして 様子を見ていただくことにしました。
現在は 患部に少なからぬ痛みがあるので あまり動かないようですが ある意味痛みというのは 迷惑なものですけれども 痛いからあまり動かない 即ち 患部に負担をかけないで済んでいるともいえるのです。ですから安易に患部の痛みを取り除いてしまうと まだ十分に回復していない患部に負担をかけて 悪化したり 直るのに時間がかかってしまうことがあります。この子の場合 患部を触ると痛がる程度の疼痛ですので 痛みを少しずつ和らげることを目指して 治療を考えました。
家では 普段は部屋の中を自由に歩き回っているのだそうですが 夜中にケージの上の部分から宙ぶらりんになっていたという事は 飼い主の目が届かないときには ケージの上に飛び上がったり飛び降りたりしているのかもしれませんから 当分の間は ケージの中で半強制的に大人しくしていてもらうように 指示しました。大人しくして 患部にかかる負担を軽くしていただくことが きちんと直るための一番の近道だからです。今後の事としても夜中は飼い主の目が届かない事が分かっているので かなり激しい動きをしているのだとしたら 夜中もケージで過ごしてもらう事を考えた方が良いかもしれないと 申し添えました。
以前テレビの番組で 飼い犬に普段は食卓に上がることを禁じているので 飼い主の在宅中は食卓に上がっていないのだけれど どうも食卓の様子を帰宅後に観察すると 犬が食卓の上に上がっている痕跡があるので カメラを設置して 留守中の犬の動きを観察して欲しい という企画が放送されていましたが それによると 飼い主がいつものように外出すると 数時間は戻らないことを犬は経験上知っているのだそうですが 鍵をかけて家を出た一分後には 犬は食卓の上に上がっていました。
人間もそうですが 普段駄目だと言われたことは 猶更やりたくなってしまうことがありますが 犬も同様みたいで 普段食卓の上に上がることを禁じられているので飼い主の在宅中は上がらないようにしているけれど 外出した途端に 待っていましたとばかりに食卓に駆け上がっていました。ですからこのウサギも 夜中には飼い主の目が届かなくなることを経験上知っているので 飼い主が想像するよりも相当に好き勝手な行動をとっていて 今回のような事件が起こったのだと思います。
ですから 飼い主の目が届かないときには ケージに入れて 行動を制限してしまわないと 今回は軽いねん挫で済んだように思いますが 最悪の場合 命に関わるようなアクシデントが起こる可能性もありますので ある程度ケージ内で生活する時間を増やす事を考えて頂いた方が このウサギが元気で長生きしてくれると思います。飼い主さんは なるべく動物を自由にさせながら飼いたい気持ちが強いみたいなので 難しいのかもしれませんが まあ飼い主さんが飼いたい様にされるしかありませんので 出過ぎたことはそれ以上申し上げませんでした。

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